お嬢様喫茶の対価
「こちらをお下げ致します」
執事の格好をしたリデルが空になった皿を下げようと手を伸ばす。
「待ち給え!まだ残っているっ」
引きかけた腕を取られる。
繰り返すようだが、皿は綺麗にからだ。
「リデル(きみ)というメインディッシュg…痛っ。何をするっ!」
ガツン、という凶悪な音が台詞を遮る。
「何度も言っているだろうが…。お前のせいでリデルちゃんがうちを嫌いになったらどうするんだ!」
衣服メーカーの「セレヴィア」にリデルは来ていた。前回“お嬢様喫茶“をするに当たり、セレヴィアの社長カトレアに相談した。あまり待たせるわけにもいかず、一週間と言ったがそれはあまりにも短すぎたのだ。
「面白いわね。領主様のお嬢さんがやってないならうちで…」
「やめてください!それでなくとも彼女のおかげでうちは大忙しなんですよ!別の分野に手を出している余裕なんてありません」
ノリ気のカトレアさんを慌てて止めたのは副社長(見張り)のリーシアさん。実はセレヴィアの屋台骨だ。感覚で何かを得ているカトレアさんをうまく操縦する重要な役割を担っている。
「ちぇー。絶対うまくいくと思うんだけどな。まぁいいわ。リデルちゃん。得るものもありそうだし協力してあげる。でも服を仕立てている時間は取れそうにないからそこは古着の組み合わせとかでどうにかしましょう」
急に真剣な表情になってカトレアさんが言う。
「執事の服の古着なんてあるんですか?」
ふと疑問に思ってリデルが尋ねる。
「ああ、まぁね。潰れた貴族の執事が売っちゃったりとかそこはいろいろ。流石にサイズは合わないだろうからその作業も計算に入れとかないと、マリー?」
流石は著名な会社の社長は行動に無駄がないな、私もがんばろうと思ったところで一人の社員が姿を見せる。
「何ですか、社長?今次のデザインを考えて
い…あなた!うちのモデルになるといいわ」
カトレアさんに文句を言っていたマリー?さんは私を見るや、手を掴み熱い視線を私の肢体に巡らせそう言ったのだった。
商売上、男の人からのぶしつけな視線はよく感じるものの、同性から遠慮なくぶつけられたのは初めてだった。
「素晴らしいわ!柔らかいのに無駄がなく締まった二の腕や足。品を保ったサイズの胸。背中からお尻にかけての曲線も完璧だわ。唯一の例外はその手ね。元は綺麗なのに荒れてしまっているわ」
リーシアさんに口を封じられるマリー。
「ごめんなさいね、腕は確かなんだけどちょっとだけ変わっててハハハ…ごめんなさい」
乾いた笑いを浮かべながらカトレアさんが謝った。
「彼女はリデル。ちょっとした案件を手伝うことにしたから。古着を彼女に合うように調整してちょうだい」
「お断りします!」
間髪入れずに拒否される。
「リデル様に最も似合う服を仕立てます。古着などを着せるのは天への冒涜に他なりませんよ」
何かおかしなことを言いはじめた。
「あのねぇ、リデルちゃんには一週間以内に準備しなきゃいけない理由があるのよ。あなたも最近煮詰まってるって言ってたじゃない。そっちは大丈夫なのよね!?」
「…事情?社長、一旦情報を共有しましょう。」
「そうね…実はまるまる牛牛…」
「なんと!そんな美味しいアイディアを余所に…!?わかりました。リデル様にピッタリの執事服モドキを仕立てましょう。」
「もどき?」
「ええ、本格的にやるには些か時間が足りなさ過ぎですので!リデルさん!お金は結構ですので代わりに私たちにもお嬢様喫茶を体験させてください!」




