クラリーチェという女
「これは私が以前食べたポタトサラダとは別物だわっ!うちのシェフが使うものより劣る食材でこんなものが作れるなんて!」
なんとなくわかってきたけど、このお嬢様、素だ。
嫌味をいってるとかそんなつもりはさらさらないんだと思う。
だったら許されるってものじゃないだろうけど。
「シェフを呼びなさい」
扮装お嬢さまがそう言ったときには既にオプシさんが出てきていた。
事態がどうなるか気になっていたんだろう。
「何か不備でもありましたかい?」
うん、この人も全く貴族とか気にしてないな。
何か言いたげなお付の人を手で制しながらお嬢様が言った。
「これは一体どうなているのかしら?茹でたポタトを使っているにも関わらず、パサパサしていなかったわ」
「うちの隠し味を簡単に教えるわけにはいきませんが、うちの看板娘が作った”まよねぇず”が関係しているとだけいっておきましょうか」
オプシさんって喋れるんだね…って私に責任なすりつけた!?
確かにマヨネーズを作って味見してもらい、ひだまり食堂で使ってもらうことになったのは事実だけど、毎回売り切れ必死の名物料理の味を出せるのはオプシさんだけだ。毒見と称して一口食べたのは夜の営業を待たずに売切れてしまい、滅多に食べられないからだ。
お嬢様は私のほうへとビシっと指を差して、
「あなた、うちで働きなさい。お給料ならここの2倍、3倍は出しますわよ」
とそう言った。
「お断りします」
「では詳細を詰めま…え?今なんて言ったのかしら?もう一度言って下さる?」
「ですからお断りします、と。」
「さっきから無礼なことを!この方はこの領地を治めるノーゼンガルド伯爵が長女クラリーチェ様であらせられるぞ!」
お付の人が血管もあらわにしてそう怒鳴るが、実は私はこの街しか知らなかった。
クラリーチェというらしい、が顔を手で覆ってあちゃーって感じだ。
バレバレだったとは言え、身分を嵩にかけてなんてつもりはなかったのだろう。
「騒がしいし、粗雑でときどき備品を壊しちゃうし、隙をみておしりを触ろうとしてくるし、ってあれ?いいところなくない?なんて冗談はさておき、私は、私を受け入れてくれたこの町が、この町の人が好き。私はここでみんなと生きたいの。それはいくらお金をもらっても得られないものだから。いくらお金をもらえても無責任に辞めたりできません」
一部のお客さんはバレてる…だと?と青い顔で俯き、また一部のお客さんは拍手喝采でいいそーとかいってる。レイダさんは、じゃあお給料はいらないね?とか言ってる…待って!それは困るから!!オプシさんは顔を逸らしてる…?ちょっと頬が赤い?




