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傍観の人形使いと攻略対象の彼ら  作者: 朝霧波斗夜
第2章 黄昏の悪魔
32/33

2-(17) 襲撃~ウォリアー~

 市街地区、E-7。

 かつて大規模な工場区であった場所。外部から進出してきた一企業によって取り仕切られていた工場たちは、その企業の衰退とともに機能を停止した。


 ―――――――――筈だった。


 しかし今日、突如吹き上がった火柱とともに、廃れた工場区は息を吹き返す。




 ◆ ◇ ◆ ◇





 区内の中央で盛大に立ち上った火柱を見て、離れた所で息を潜めていた九谷は苦笑した。

 『フラム』の通り名を持つ後輩は、敵は徹底的に叩き潰すという性質を持つ。子供らしい無邪気さによってあの炎にくべられた人柱は何人に上るのだろう。


 「いささか猟奇的過ぎるのも問題だね」


 今頃、辺りを(あか)く染め微笑んでいそうな後輩は、本当に扱いに困る。普段は空気が読めて人を労われるいい子なのに。

 はぁっ、と一つ息をつき、九谷は身を潜めているコンテナの影から外をうかがう。暗く沈黙していた工場群は、火柱の上がった辺りから波紋のように電灯を灯し始めていた。とっくに電力供給が途絶えたはずの工場に灯る、(だいだい)色の灯り。

 それを確認して、九谷は腰に差した刀を軽く揺らした。(さや)(つか)に結んだ組み紐と、その先の鈴が揺れる。土で出来た、丸みを帯びた三角の鈴は、カランッ、カランッと音を鳴らした。


 その音に、侵入者を警戒していた否定派の人間が気付かないはずはない。すぐに足音が聞こえてきて、コンテナの近くに人が集まる。侵入者を探す男たちの声を聞きながら、九谷は先程鳴らした鈴を撫でた。

 この鈴は聖遺物(レリック)っと言って、半永久的に使い続けられる魔導具のようなものだ。九谷の鈴の場合、内側に刻まれた魔方陣が使用者の魔力に反応して魔法を発動する。メモ用紙のように使い捨てなくていい魔法師の携帯用魔方陣の一つだ。

 刻み込まれているのは、振動系の魔方陣。

 鞘と柄の組み紐の両端に各2個ずつ。合計8個もの魔法陣が、今九谷の手元にある。これが九谷の手札だ。

 戦闘時に発動しても、どの鈴が発動したか分からないように全て同じ彫刻が施されているので、手札としてはこれだけで十分なのだ。


 コンテナの壁に背を預け、感覚を研ぎ澄ましていた九谷は、自分の方に迫ってくる強い殺気を感じとった。その殺気から相手と自分の力量を比べる。


 「ちょっと、強そうなのが来ちゃったかな」


 呟いて、鞘に結んだ組み紐の先にある鈴の一つを軽く握りこんだ。


 「《我願う。我に敵意を持つ者。其の瞳を閉ざせ。決して明けることの無い夜を(もたら)せ》」


 呪文の詠唱は緩やかに、握られた鈴はひとりでに音をかき鳴らし。

 その音が収まった時。九谷の近くに、立っているものはいなかった。

 唯一人を除いて。


 コンテナから出た九谷は自分の魔法にかかっていないその一人を見て、薄く微笑む。


 「邪魔者はいなくなったよ」


 コンテナの隙間で向かい合って。


 「初めまして、僕は九谷瑞希」


 無表情にこちらを見ている黒装束へ。


 「『武者(ウォリアー)』とも呼ばれてる」


 ゆっくりと構えて。


 「さぁ、殺し合いを始めよう」


 その言葉で。

 2人は同時に地面を蹴った。

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