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傍観の人形使いと攻略対象の彼ら  作者: 朝霧波斗夜
第1章 物語の始まり
11/33

1-(10) 変態の名には個性が無かった

 入学から一週間がたった。

 ヒロインと攻略対象の出会いイベントはほぼ傍観できたと思う。っていうか、いろいろとヒロインの行動に疑問を持ってしまいました私。


 ……だって、ねぇ。九谷先輩とのイベントから4日間、一切起こらなかった、というか起きる気配が微塵も感じられなかった出会いイベントを、あのヒロイン、今日の一日で猛烈に起こしまくっている。

 明らかに、意図的に条件をそろえてまで。


 まず、今日の出来事を振り返ってみよう。



 ◆ ◇ ◆ ◇



 私は今日もあのカラス姿でヒロインを追っかけていた。

 ホームルームは終わり、本日初めの授業は家庭科のようだ。ヒロインは仲のいいお友達、春日井(かすがい)智乃(ともの)ちゃんとともに、特別教室棟2階の家庭科室に向かっている。


 そして、一つ目のイベント。


 「お、優良物件発見ー!かわいいねぇ、君達。俺たちと遊ばない?」


 いやな笑みを浮かべた、いかにも馬鹿そうな男が二人、現れる。彼らはヒロインと春日井ちゃんを囲むと、ニヤニヤ笑いながらいかにもチンピラですといった言葉を吐き続ける。

 曰く、「楽しいことしない」やら「今から用事ある」やら。

 ヒロインと春日井ちゃんは、そのたびに波風立てないようにそつなくその言葉を交わすのだが、だんだん詰められる距離に焦っているようだ。

 そしてさらに。


 「おい、いつまでかかってんだよ。早く遊ばせろ」


 サイテーな下種が現れる。

 おそらく男二人の親分的存在。私にとってはただの肥えた変態。制服パンパンのお腹に、首があるのかないのか分からない二重顎。イベントだとは分かっているし、ヒロインに危険が無いことは知っているが、この台詞と下卑た視線は吐き気がする。可愛い女の子大好きな私にとって、女の敵は虫よりも価値が無い。


 ふつふつとした怒りを耐えながらも傍観を続けるなか、変態がヒロインの腕を掴んで連れて行こうとした。


 「放してくださいっ!魔法を使いますよ!!」


 ヒロインが叫ぶ。それに下卑た笑みを浮かべた変態が答えようとした瞬間、


 「自己防衛時の魔法発動宣言は必要ないよ。容赦なく吹き飛ばしてくれてかまわない」


 その声とともに、ヒロインが後ろに引っ張られ、変態が飛ぶ。長い足でのしなやかな蹴りを受けた変態は、近くの壁まで床と平行に吹き飛んで激突した。

 あーあ、気絶しちゃったんじゃない?あの変態。

 ついそんな感想を呟くが、心の中は拍手喝采。雨あられ。良くやってくれたと思っていたりする。


 「君達、大丈夫?」


 ヒロイン達にそう声を掛けたのは、大和兄だった。

 たしか、大和兄は生徒会の仕事の都合で特別教室棟一階の事務室に行くときに、ヒロイン達がナンパされている現場に出くわすのだ。

 大和兄の性格上変態達には容赦しないとは思っていたが、いきなり蹴りとか。あの変態の飛び具合、かなり思いっきり蹴られたと見える。ほら、変態がさっきからピクリとも動かない。


 「な、何すんだお前!」


 親分が吹き飛んで呆然としていたチンピラ1がやっと正気に返った。いやぁ、ずいぶん長い現実逃避だったね?


 「何、とは?女の子に乱暴しているチンピラを倒しただけだが?」


 大和兄が威圧しながら答える。恐怖に震えたチンピラ1は、まだ現実に帰ってきてないチンピラ2を小突くと、親分を運んで去っていった。

 その背中が見えなくなってから、大和兄さんはヒロイン達に振り返り声を掛ける。


 「どこか怪我などあるかな?」


 「い、いえ。大丈夫です」


 答えたのは春日井ちゃんだ。彼女は、ビックリした表情で固まるヒロインの袖を引くと、大和兄に促されて教室へ向かって行った。


 二人を見送ると、大和兄は携帯を取り出す。操作の後に鳴り出す私の携帯。

 私はいったん魔法を中断し目を覚ますと、丸テーブルの上で鳴る携帯に出る。


 「はいはい、もしもし?」


 『瑠那、ちょっと頼んでいい?』


 「何をさ」


 『今から言う奴らの仲間を割り出してほしいんだ』


 「ふーん」


 気の無い返事をしつつ、大和兄が言う名前を覚える。山田太郎。なんとも個性の無い名前だった。特徴、肥満体型。うん分かった。さっきの変態か。

 大和兄が言うには、さっきの奴らは学園で有名な不良集団らしい。起こすのはちょっとしたナンパばかりで、説教はできるが退学には追い込めないため、今生徒会で情報を集めているのだとか。できれば手伝ってと言われた。

 もちろん手伝いますとも。さっきの奴らの態度にはすごくイラついた。別に、大和兄が情報料代わりにケーキを買ってきてくれると言った言葉に惑わされたわけではない。


 私はちょっとした魔方陣を発動すると、ロッカーの中に置いてきた他のぬいぐるみに、さっきの奴らの後をつけさせることにした。

 その旨を大和兄に話し、電話を切る。


 さてと、傍観に戻りますか。

 そうして、私は再び意識を飛ばした。

 お待たせしました。

 連日の暑さに機械に続いて作者が体調を崩したり、用事が重なったりして、更新に4日空きました。すみません。


 今回は大和兄の出会いイベント。兄さんは意外と正義感溢れてます。

 そして瑠那の黒いこと、黒いこと。おそらく、これからどんどん黒くなります主人公。お腹の中は真っ黒子です。


 次回!出てくる攻略対象は誰だ!!


 正解は活動報告に。

 では、また次回。


 誤字・脱字・感想お待ちしてます!ちゃんとオブラートに包んでね!

 

 

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