3話 そして俺は死者の王となった。
俺が魔物に?
魔物というのは知能というモノを持っていないはずだ。俺はちゃんと考えることも出来るし、こうやって話すことも出来ている。
もしかして姿が骸骨であったりゾンビだったりするのか? 俺は顔を触ってみたのだが、以前と変わらない気がする。
「おい。魔王、どういうことか説明してくれ」
「ん~? 人にものを頼むときは土下座をす……」パンっ!!
「ぎょひゃわああああ!!」
俺はこの虫を叩き潰そうとしたのだが、避けられた。
「チッ……。逃がしたか」
「き、きちゃまああああ!! わしを殺す気かぁああああああ!!」
「あぁ、殺す気だった。素直に話をしないお前が悪い」
人と話をするのにいちいち上から目線で話をするからこう言うことになる。
俺は、叩き潰そうと手を前にやる。
「ま、待て!! 説明するから、潰そうとするでない!!」
「さっさと説明しろ」
「お、お前、魔物になってから性格変わっとらんか? まぁ、良い。お前にかけた呪いは……」
魔王のかけた呪いは、俺の勇者の力を反転させ、死者の王『リッチキング』に転生させるというモノだった。
本来であれば、意思を持たない魔物に転生し、魔王が指示を出しアロンガンシア王国を襲わせる予定だったのだが、なぜか俺が意思を持ったままリッチキングになってしまった為に、こうやって交渉? に来たそうだ。
いや、交渉などしていないだろうが……。
今はリッチキングになってしまったとはいえ、元は魔王を殺した勇者だ……。何を交渉するつもりだったのか……。
ん?
「その交渉とやらはどうでも良いとして、お前に聞きたいことがある」
「なんじゃ?」
「あの戦闘の最中にお前は俺に言ったな、『騙されているとも知らずに』と。あれはどういう意味だったんだ?」
「あぁ、アレはお前を動揺させようとしたというのもあるが、お前の仲間に戦士と聖女がいたじゃろう? アイツ等から邪まな波動を感じていただけじゃ。恐らく、国に戻ってもお前は処刑されると思っておったが、まさかあんなに早く処刑されると思わなんだぞ?」
だからこの呪いをかけたわけか……。
で? こいつが俺にアロガンシアを襲わせようとしていたことから、俺に復讐しろとでもいうつもりなのだろうな。
「生憎だが、俺は復讐などどうでも良い」
「な、何故じゃ!? 悔しくないのか!! 憎くないのか!?」
悔しい……憎い……そんな感情に何の意味があるのだろうか……。
復讐は復讐を呼ぶ。
それに復讐したところでメリアや村の人は帰ってこない。それなのに復讐して何の意味がある。
「憎くも、悔しくもないな……と言えば嘘になるが、死なないというのなら俺はどこかでひっそりと暮らす。もう裏切られるのはごめんだ」
「ま、待て!! 分かった、お前が復讐しやすくしてやろう。しかし、この姿ではいつお前に潰されるかわからぬな……ちょっと待っておれ」
「何?」
テントウムシが怪しく光る。そして光が止むと、そこには一人の幼女がいた。
「さぁ、お前の力を使うが良い!!」
どこからツッコめばいいのか……。
「まず、お前のその姿は何だ。お前の第一形態は女だったが、そこまで幼くなかったはずだ。それに俺の力とは何だ? お前が勇者の力を反転させたと言っていただろう? もう勇者の力じゃなくなっているだろうし、いや、あったとしてもお前を倒す以外の使い道はないから意味は無いと思うのだが……」
流石の俺でも幼女の姿をした魔王を、一方的に殺すことは出来ない。
「なんじゃ? お前は思ったよりも好戦的じゃのぅ。力とはリッチキングの力じゃ!!」
リッチキングの力? 確かに俺はリッチキングだが、その魔法をどう使えばいいんだ?
「全く世話が焼けるのぅ。自分に都合のいい死者を想像するのじゃ、屈強な戦士の死体を想像したり、絶世の美女、わしのような美女を想像したりじゃ」
絶世の美女か。無い胸を張り、踏ん反りがえっているところを悪いが……褐色の幼女が何をほざく……。
しかし、自分にとって都合のいい死者か……。
そうだな……。
「おい、魔王。それは一人じゃなくてもいいのか?」
「ん? 軍勢を作るのか? 別に構わんよ。但し、どれだけの者を作るかはお前の魔力次第じゃ。後、わしのことはベルと呼べ」
俺の魔力次第か……。
俺が望むもの……。作られた存在じゃなく、生前の姿のままで、あの日の続きを……。
「あ、魔法は『カダ―ベール・レスレクシオン』じゃ」
「あぁ、カダ―ベール・レスレクシオン!!」
俺が両手を広げそう唱えると、村全体が光り始める。
そして……光が止むと、そこには複数の人間が立っていた。
「あ、あれ? 俺達殺されたんじゃ?」「どういうこと?」「な、なに?」
人間達は、自分達に起こったことを理解できていないようだ。
俺が生き返らせたのは……。
「おぉ!! こんなに沢山作り出したのか!! 流石は勇者じゃ!!」
「ベル。作り出したんじゃない、復活させたんだ。皆はこの村の住民だ」
「な、なにぃ!! 何故屈強な戦士を作らんのじゃ!?」
「俺に復讐はない」
「何故じゃ!!」
俺とベルが言いあっていると、一人の老人が俺達に近付いてくる。
村長だ……。
俺は村長と目が合うと、頭を下げる。
「カイルか? お、お前生きておったのか?」
「村長、済まない!! 俺のせいで、村が滅ぼされてしまった!! 俺の認識が甘かった!!」
俺は必死に謝る。いや、謝ったところで許されるものではないと分かっている。
せめて元の姿のまま、暮らしなおして欲しい。俺はどんな罰でも受け「何を言っておる?」……え?
「カイルこそ、辛かったじゃろうて……私達は後悔しておらんよ。お前は、勇者として立派に戦った」
村長の言葉に住民全てが笑顔で頷いている。
「さぁ、私達に頭を下げている暇があったら、さっさと迎えに行ってやらんか。殺された位置に生き返っておるのだろう?」
「え?」
「メリアの所に行ってやれ」
「あ、あぁ!!」
メリアは洞窟内にいるそうだ。殺されているのなら、そこしかないと。
俺は走る。
この洞窟は、よく子供のお仕置きなどに使われていた洞窟だ。子供達と女性はここに隠れていたそうだ。
洞窟からは女、子供が出てきていた。
その中の一人に、見間違うはずのない彼女がいた。
綺麗な青色の長い髪、間違いない。
「メリア!!」
「え? か、カイル!!」
俺はメリアを強く抱きしめた。
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