14話 アレスの疑問
久しぶりの更新です。
俺は勇者の帰りを待つ。
勇者の名前はカイル。俺が最も嫌いな男の名だ。
そんな嫌いな男を何故待っているかと言うと……そいつは俺が用意した勇者だ。
俺は側近の男にカイルの事を聞く。
「おい、カイルはまだ帰ってこないのか?」
「はい。精霊の森の攻略に時間がかかっているのではないですか?」
俺がまだ王ではない時に、精霊の森には何度か行った事がある。
あの頃はまだ、勇者パーティの一人だった。
森には木の姿をしたトレントという醜いモノがあるだけだ。
あんなもの火を放てば簡単に殺せるだろう。何故時間がかかっている?
「カイルが戻ってきたら、報告しろ」
「はっ!」
俺は自室から出ていく。
ふん。
レックスの強さを考えれば、本物のカイルでもない限り負けはしないと思うが、ふっ、本物か……エタ―ナを愛し、そして惨めに死んでいった平民風情など……。
しかし、あのカイルもあの世で泣いているかもしれないな。
お前が愛した聖女は、お前の故郷の知り合い共の死体の前で、色々な男と性行為をする変態だ。
カイルを悔しがらせるためにあの女を手に入れたが、正直失敗だった。
あの女の労費癖、そして性癖、どれをとっても王妃の資格がない。
殺してしまってもよかったのだが、アイツは少しは役に立つ。
金の力で言う事を聞くのなら、利用できるときは利用し続けるのが一番だ。
しかし……もう一週間か……。
「おい、エタ―ナは自室にいるか?」
「はい。今日は殿方も来てはいないようです。エタ―ナ様には世継ぎを「止めろ」ひっ!」
俺はつい宰相を睨みつける。
あの女との子供だと?
ふん! あんなアバズレとの子供などいらんわ。そもそも、妊娠したとしても俺の子かどうかもわからんだろうが。
俺は嫌々だがエタ―ナの所へと向かう。
「おい、エタ―ナ入るぞ」
無駄に大きな扉を開ける。
部屋の中には大きなベッドが置いてあり、その上に半裸のエタ―ナが寝転がっていた。
「あら、陛下。私を抱きに来たのかしら?」
「ふざけろ。女としてのお前に何の価値もない」
「あら? 妻に向かって酷い言い方ね」
「黙れ。お前は俺の質問に答えればいい」
「ふふふ。何かしら?」
「レックスが帰ってこない。お前の誘惑魔法は効力が続いているのか?」
レックスには強力な誘惑魔法をかけてある。
レックスの顔にはアイツの魔法も掛けてあるが、心の方は強力な誘惑魔法で操っている。
しかし、それが解けたのならば帰ってこないのも頷ける。
「私の魔法がそんなに簡単に解けると思っているのかしら?」
「ふん。貞操概念の無い自信だな」
「そうかしら? その魔法に助けられている男が何を偉そうに」
「なんだと?」
「カイルにも勝てなかった貴方はカイルを罠に嵌めて殺すしかできなかったんでしょ? 魔法はあの二人に遠く及ばない。純粋な戦闘能力ではカイルの足元にも及ばない。貴方が勝てたのは王族という権力だけでしょ?」
「黙れ。権力は力だ。この国で俺に逆らえる奴はいない」
そう、この女も一緒だ。
俺が兵士に一言「殺せ」と命じれば、こいつの命など簡単に散らす事が出来る。
この国に俺に逆らえる奴はいない。
「エタ―ナ。あまり調子に乗るなよ」
「ふふ。私を殺すのかしら? カイトの様に」
「お前が望むのなら殺してやろうか?」
「あら怖い」
チッ!
これ以上、この女とこれ以上話をしていても時間の無駄だ。
「もう一度言う。調子に乗るなよ」
「はいはい。あ! そう言えば気になる事もあったわ」
「なんだ?」
「カイルの故郷の村にかけていた結界が破られたわ」
「なんだと?」
カイルの故郷にかけてあった結界は、死体が風化しないという魔法だ。
エタ―ナは死体の前で性行為を行う事で興奮を得ていた。
この女が異常者である事は間違いないが、こいつの魔法は一級品のはずだ。
それが破られた?
「どうして、今まで黙っていた?」
「私も楽しみの場が無くなって困っていたのよ。そもそもあの村に価値が無いと言っていたのは貴方でしょ?」
「チッ! まぁいい。あの村には俺が視察に行く」
「あら? 貴方自ら動くの?」
「何か問題でも?」
「ふふふふふ。貴方は弱いから心配だわ」
「お前、本当に調子に乗るなよ」
「あら怖い怖い。用が済んだのなら出て行ってくれないかしら? 貴方といると新しい殿方だが入ってこれないのよ」
「チッ!」
俺は、扉を強く閉めて部屋を出る。
今からカイルの村を視察だ。
俺は兵を集める。
レックスのいない今、俺が動くしかない。
ここがあの変態女の盛り場か……。
全く趣味の悪い。
しかし、あの女の話が本当であれば死体が残っていないのがおかしい。
「どういう事だ?」
俺は兵に死体を探させる。
しかし、一体の死体も見つからなかった。
もしかして、結界が解けたと同時に風化したのか?
まぁ、あり得ると言えばあり得るか……。
これ以上、ここにいても……。
いや……。
靴の跡……。
しかも新しい?
「おい、暫くこの村を監視する。兵士を用意しろ」
「しかし、ここには何も……」
俺は口答えをした兵士を斬り殺す。
「俺がやれと言ったら、お前等は死んでもやればいいんだよ」
「は、はい!!」
俺は兵士にこの村を監視させた。
国へ帰った俺はレックスの様子を探るために、偵察隊を精霊の森へと向かわせる。
もし、レックスが殺されていれば……。
それを理由に精霊の森を焼き尽くせばいい。




