自分じゃない自分
(焦れったいなぁ)
また声が頭の中で響いた…、そう思った瞬間体が勝手に動き始めた、私は…、動かされた私は持っていたナイフ5本と魔石式スタンガンを捨てていた、剣一本で戦えるというのか……。
あぁだめだゆっくりと近づく私にハイオーク達が気づいてしまった……。
2体のハイオークがこちらに走ってきた、流石に2体同時は相手にできる気がしない私はまた死ぬのか。
剣を握りしめる手に力を込めて死を覚悟すると、いきなり2体のハイオークが横に真っ二つになった、なんだ…あの一瞬で確かに私は腕を振ったようだ、だが私の剣にあんな切れ味は無かったはず、私の剣は切るよりも砕く方向にしているはずなのに、なのになんだこの綺麗な断面は。
事態を把握した残りの3体が大声を張り上げながら向かってくる、やはり一瞬でその3体も真ん中で真っ二つになった。
今持っているコレは本当に私の愛剣なのだろうかと眺めてしまうが見慣れた傷もあっていつもの剣で間違いなさそうだ。
それよりも姫様だ。
「姫様!、ご無事ですか!」
「あなた…ミネバなの?」
「はい王都第四騎士団二番隊隊長のミネルバ・カイラムです」
なぜ姫様は少し怯えているのだろう、ハイオークは確かに全て討伐してしまったはずだ…。
「あなた…髪と…目…」
自分の見た目なんて気にしている場合ではなかったが姫様を見る目が不安なので丁度近くにある湖で顔を確認する。
「私の髪が…」
灰色になってた、目は真っ赤だ…、私ですらこの顔が恐ろしく感じる、まるで私じゃないような…私じゃない……、そういえばさっきの少女の声はだれの声だ、少なくとも私は始めて聞いたし、さっき私の体を動かしていたのは誰だろう。
周囲を見回してもで姫様しかいない…、しかし今は自分の事より兎に角姫様を王都まで帰さねば。
「姫様、王都へ帰りましょう」
「え、ええ」
私達はひとまず馬車の所に戻る事にした、やはり馬車は壊れたままだし誰も来た形跡がない……、幸いにも車輪などは無事だったしすぐに逃がした馬も呼び戻すことができた。
「姫様、こちらへ」
「ありがとう」
ある程度馬車を破壊して軽くしてから姫様を馬車の端に座らせて仲間を空いたスペースに乗せる、少し不満な表情しているがそこは我慢してほしい。
私はすぐに馬を繋いで走らせる、さすがの王族用ということもありよほどの悪路じゃない限りは壊れそうにない。
それに王都まではあと一本道でもうすぐ整備された道が続く、それにあのハイオークの時からか、何だか周囲が静かだ。
そして何事もなく整備された道にたどり着くことができた、この辺までくると見慣れた民家や商店がちらほら見える、良かった姫様の国に帰ってこられた。
ミネルバの髪と目の色が抜けているのはその色素まで再現できていないだけです。




