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8話 人材、全然見つからな〜い!



「右腕が欲しい」と決意してから数日。

私は父様と母様に相談し、ついに「専属」をつけてもらえることになった。

公爵家の令嬢に相応しい、優秀なメイドか執事。

期待に胸を膨らませて面談に臨んだ私だったが……。


(あー、ダメー。全っ然ピンとこないわー。)


並んだ候補者たちは、確かに所作は美しい。

けれど、その瞳の奥にあるのは「公爵家というブランド」への執着か、あるいは幼い私を侮る慢心ばかり。

中には、どこかの勢力が送り込んできたのではないかと疑いたくなるほど、愛想笑いが張り付いた怪しい奴までいた。


(私が欲しいのは、マニュアル通りの仕事をする人形じゃない。

私の『意図』を汲み取り、泥を被ってでも目的を完遂する、本当の意味で有能な人材なのよ。)


結局、収穫なし。

ヴィンセント兄様は公務で不在のため、私はエルザ姉様に相談してみた。


「専属、決まらなかったの?

なら、少し領内の散策でも一緒に行きましょうか。

イザベル、リフレッシュしましょう!」


(姉様、見た目とおっとりした口調のわりに、意外とアグレッシブなんだよなぁ〜。

だが、このギャップが良い!)


なんてしょーもないことを考えながら、一緒に領内へ行くことにした。


正直、期待はしていなかった。

このベルドレッド公爵領は父様の統治が行き届いている。

スラムのような場所もない。

そんな場所に、裏社会でも通用するような「尖った人材」がいるとは思えなかった。


ところが。


「おい、いつまでしらばっくれてんだ! 」


路地裏に近い広場の一角で、荒っぽい声が響いた。

見れば、身なりの比較的綺麗な母子が、数人の男たちに囲まれている。

男たちは下品な笑いを浮かべ、母親の肩を掴んで揺さぶっていた。


(……この平和な領地で、珍しいこともあるものね)


エルザ姉様が毅然と前に出る。

私もその隣に並び、ドレスの隠しポケットから「公爵家の紋章が入った懐中時計」を取り出し、男たちの目の前に突きつけた。


「下がりなさい。

この紋章が見えないのかしら?」


エルザ姉様の冷徹な声と、私が掲げた「ベルドレッドの盾」の紋章。

男たちは一瞬で顔を強張らせ、蜘蛛の子を散らすように逃げ去っていった。


(おお〜!水戸◯門みたい!ひゃっふ〜!)

などと私は姉の傍でテンション爆上がり。


脳内で鳴り響くあのBGMをバックに、私は姉の傍でテンション爆上がりである。

そんな私をよそに、姉様が声をかける。


「大丈夫ですか?」


エルザ姉様が怯えていた母親に手を差し伸べた。

母親は「……あ、ありがとうございます。」と消え入るような声で答えたが、安心したのが仇となったのか、そのまま糸が切れたように崩れ落ちてしまった。


「お母様!? お母様!」


傍にいた女の子が、悲痛な叫び声を上げる。

私は倒れた母親の青白い顔を見た。


(身なりは整っているけれど、よく見ると服には隠しきれない汚れ。

それに靴のすり減り方が尋常じゃない。……この人たち、どこかから逃げてきたわね?)


どうやら、私の「右腕探し」は、予定外の方向から動き出しそうだった。



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