表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
忘れられた盾の勇者は護りたい  作者: たてみん
第3章:錆びついた平和の騎士団
87/131

87.閑話~北部魔物討伐の行方・上~

いつもありがとうございます。

ここから3話ほどツバイクの話になります。


〜〜 ツバイク Side 〜〜


 王都を出て10日。俺達、北部魔物討伐軍はようやく最寄りの伯爵領へと辿り着いた。

 これだけ時間が掛かったのは途中の領地を通る際にそこの領主と会っていたからだ。勿論会って挨拶して終わり等ということはなく、晩餐に招かれたりして結局一泊する事になった。

 だけどそのお陰でそれぞれの領地からも兵を出してもらえる事になり、気が付けば1000人を超える大軍になった。

 そして伯爵家の兵士300人と、今回の大規模討伐の話を聞き付けた魔物ハンター300人の計1600人で作戦は決行されることになった。


「ツバイク王子、少々よろしいでしょうか」


 そう声を掛けられたのは作戦開始前の最後の小休憩の時だった。声を掛けてきたのは見知らぬ男だった。

 俺は思わず腰の剣に手を掛けながら問いかけた。


「何者だ」

「魔物ハンターギルド、支部団長代理のラバックと申します」

「そうか。しかしどうやってここまで入ってきた?」

「実はその事で幾つか忠言をさせて頂きたく」


 俺が居るのは本陣の中だ。当然周囲には多数の騎士がいるのでここに来るまでに止められるはずだ。しかし現に彼は誰にも止められることなく俺の目の前に居る。彼が暗殺者の類なら俺の命はもうないだろう。落ち着きを払ったその姿から間違いなく俺より強い事が分かる。

 俺は震えそうになる足を必死に留めて出来るだけ威厳を乗せて答えた。


「……よかろう。申してみよ」

「はっ、ありがとうございます。

 まずここに集まっている者達は武功を焦り過ぎているように見えます。

 誰も彼もが自領に錦を飾ることばかりを考えているようです」

「やる気があるのは良いことではないのか?」

「士気が高いのは良き事です。が、そうですね。分かりやすく言えば今は全員で防御を捨てて大上段に武器を構えて空を見上げているような状態だと言えば良いでしょうか」


 想像すればひどく滑稽な姿だ。

 大上段に構えると言うのは正面の敵に対して必殺の一撃を先の先を取って撃ち込むための姿勢。それなのに前を向かずに上ばかり見ていては、どうぞがら空きの胴体を突き刺してくださいと言っているようなものだ。


「私がここまで来れたのも騎士も含めて全員が守りに意識を置いていなかったからです。

 恐らくこのまま進軍すれば多大な犠牲を払う事になるでしょう」

「うむ、そうだな」


 アル兄も相手がゴブリンだからと決して油断はするなと言っていた。だけど従軍している者たちはたかがゴブリンと侮っている可能性も高い。


「それと」

「まだあるのか?」

「はい。見たところ従軍している兵士は近隣の領地から集めて来たようですね。

 言い方は悪いですが寄せ集め軍隊でしょう。

 ツバイク王子が筆頭とは言え、それぞれの領地の者毎に指揮系統はバラバラ。

 連携が取れるかも怪しく最悪足の引っ張り合いも起こりうると見るべきです」

「そこまで酷いか」


 1600の大軍が集まったと喜んだものの、蓋を開けてみれば100前後の小軍の集まりだったという訳だ。しかしそれを言われても今から連携訓練をする訳にもいかない。


「困ったな。出来る事なら犠牲は最小限に留めたいが。

 ラバック殿。何か良い案はないか」

「それであれば、まず王都から連れて来た軍については当面は本陣待機をお命じください」

「そんなことをして不満は出ないか?」

「大丈夫でしょう。もし不満をいうものが居たら

『此度の出陣の栄誉は最終的には我等第二騎士団のものである。

 それに、大物は後ろでどっと構えているものだ。そうであろう?』

 とでも言ってあげれば良いでしょう」


 うん、なぜだろう。彼らの満足げな表情が目に浮かぶようだ。

 それはともかく、それでも200名ほどだ。出来れば半数とまで行かなくても500名くらいは後詰に残したいところ。どこが良いかと考えれば集まった中で一番功を焦っていない領主といえば。


「……よし。伯爵家の兵士たちも1日目は後方待機をしてもらおう」

「はい、それがよろしいかと」


 各地から集まった者たちは要するに出稼ぎ組だ。何もせずに帰ってきましたなどと自領の領主に報告すれば怒られるに違いない。ならばまずは前線に出ようとするはずだ。

 対して地元の伯爵の兵は領地に被害を出さなければ良いと考えているはず。むしろ下手に前に出て怪我をしたらこの討伐隊が帰った後の守備に支障をきたす恐れがある。


「それとタワー公爵家の騎士300も下げて大丈夫です」

「タワー公爵か。温厚な方であったが大丈夫なのか?」

「公爵ともなれば今回程度の功績は気にも掛けないでしょう」

「そういうものか」


 残った者たちを思い浮かべれば魔物ハンターが300名の他は各地から集まった兵士がそれぞれ100前後ずつ。なら魔物ハンター達は西側から、兵士たちは領地ごとに固まって東から進軍してもらおう。

 そして討伐初日。

 日暮れ前には全員撤収し、戦果報告をまとめた結果。たった1日で死者を含め任務続行が不可能な者が100名近く出た。それもほぼ全て兵士の側からだ。魔物ハンターからは重傷者が3人だけ。なるほどこれがラバック殿が言っていた功を焦り過ぎた結果というものか。


「しかし王子。魔物ハンター達にくらべ我々の討伐した魔物の数は倍です!」


 そう胸を張って言うのは子爵領の騎士か。ここで被害が大きすぎて話にならんと突っぱねることも出来るけど、それをしたら今後の士気に関わるか。


「うむ、そうだな。

 負傷した者たちには手厚い看護を施してあげてください。

 幸いアルファ商会というところから傷薬は大量に仕入れてあります」

「はっ、ありがとうございます!」


 最初仕入れた時は多すぎたかなと思ったりもしたけど、命がお金で助かるなら出し惜しむなと大人買いしておいて良かった。そして、明日以降についても今日の結果を受けて慎重に行動するようになってくれると期待したいところだ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ