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忘れられた盾の勇者は護りたい  作者: たてみん
第3章:錆びついた平和の騎士団
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59.王都に帰ろう

 結局、僕らがバックラー伯爵領を出たのは手紙を読んでから1月後の事だった。伯爵や騎士団のみんな、それと街のみんなに軽く挨拶を済ませてからフィディの操る馬車でのんびりと王都への道を進んでいた。


「5年ぶりか」

「懐かしいですか?」

「いや」


 サラには悪いけど感慨とかはない。なにせ生まれて5歳で王都を出るまで1度も王都から出たことが無かったんだから。それでも、遠くに見える山並みは200年前から変わっていないから現在の位置は分かる。

 それに懐かしいと言えばあれだ。


「それよりティーラも強くなったよね」

「そうですね。ウェアウルフが攻撃すらさせてもらえてません」


 ちょうど街道に出てきたウェアウルフの群れをティーラが先行して討伐しているところ。8体のウェアウルフは以前に比べたら格段に機敏な動きでティーラを包囲しようとするも、それより早くティーラの槍が的確にその首に突き刺さって行く。頭蓋骨で硬い頭や肋骨と筋肉で護られている心臓を狙わないのはそれだけ余裕のある証拠だ。


「あたしの出番がないな。残念だ。つまらん」

「キャロはほら。馬車の護衛も必要だからさ。

 ティーラが遊撃に出ている間に別の敵が来たら頼むよ」

「うん、わかった。任せて欲しい」


 元気に頷くキャロの頭を撫でながらのんびりしていたら早々にティーラが戦いを終えて帰って来た。


「魔物の掃討終わりました」

「ご苦労様。強くなったね」

「はっ、ありがとうございます」


 元気に頷くティーラの頭を撫でてあげればこちらは顔を赤くしてちょっと恥ずかしそうだ。


「アル様。私はもう頭を撫でられて褒められるような歳ではないと言いますか」

「えっと、嫌だった?」

「そんなことは決して! ただちょっと恥ずかしいと言いますか」

「ふむ。じゃあ他所の人が居るところでは控えようか」


 今は身内だけだから問題なしということで気にせず撫で続ける。

 そうしていたら、馬車の上からエンジュが降りて来た。


「ご主人様。周辺に魔物の影はありませんでした」

「うん、ありがとう」


 翼人族のエンジュには屋根の上から周辺を警戒してもらっていた。実はそんなことをしなくても僕もフィディもサラも魔物の気配を察知することには長けているので全く心配はないんだけど、何か僕のお役に立ちたいということで、それならばとお願いしていた。

 そのエンジュの手には1張の弓矢。エンジュが朝練のランニングに付いて来れるようになった時に「わたしもいざという時にご主人様を護れるようになりたいです!」と気合を入れてたので扱える武器は何だろうかと色々試した結果、飛びながら遠くの敵を狙える弓が良いだろうという事になった。


「それと近くをガードルの群れが飛んでいたので2羽ほど撃ち落としてきました」


 ジャーンと反対の手を差し出せば丸々と太った鳥が2羽。どちらも見事に頭を射抜かれているんだけど。それを見たティーラが唖然としている。


「普通、飛んでる鳥の頭を射抜けないと思うんですけど」

「ご主人様に教えて頂いた通りにやったら当たりましたよ?」

「そ、そう」


 普通はまぁ、飛んでいなくても正確に矢を頭に当てるのは難しい。胴体に比べて小さいのもあるし、小刻みに動かせるしね。飛んでいる時はその移動速度もさることながら風の影響が大きいのでそれを考慮して当てるとなると普通の人間では神業に近い。

 その点、翼人族は自分たちも空を飛べる関係で風を読むことに長けているっていう強みがある。


「かつての弓の勇者も翼人族だったし、空に関することなら彼らの右に出るものは居ないんだろうね」

「えへへ~」


 てててっと僕のそばに来たのでその頭をわしゃわしゃと撫でてあげる。ティーラと違ってエンジュはただただ嬉しそうだ。

 あとこうしてみんなの頭を撫でているとそれぞれ髪質というか撫で心地も違うのが分かる。髪の硬さで言うとキャロが一番硬めで次いでティーラ。逆にエンジュとフィディはふわふわ系だ。サラは丁度その中間くらい。どれも甲乙つけがたい。共通してるのは、撫でたら皆気持ちよさそうにしてくれるってことだね。


「アル様はたらしの才能があるのかもしれませんね」

「良いんじゃない? 英雄色を好むとも言うし。

 そりゃあ変な女に捕まったら困るけど。

 そこはほら、私達の魅力で縫い留めるということで」

「……そうですね。といっても私はアル様付きのメイドなのですけど」

「そっか。ティーラはどう?」

「私か?私はアル様の1の槍だ。それでいい」

「それにしてはさっき嬉しそうだったけど」

「それはそれだ」


 サラの一言から変な方向に話が行ってるけど、多分これは僕が口出しするのは良くない奴だ。触らぬ神に祟りなしとも言うけど。もしくは話題を変えてしまうか。


「ところで王都に入る前に決めておきたいんだけど」

「何を?」

「キャロとフィディが僕の何なのか」

「え、愛人?」

「なにそうだったのか」

「いや違うでしょ」


 当然のように差し込まれるフィディのボケにティーラがツッコ厶。キャロは分かっててノッてるのか怪しいところ。なので僕はスルーして続ける。


「これから僕の家、まぁ王城なんだけど、みんな間違いなく目立つからさ。絶対にアホなやつに目を付けられると思うんだ。

 僕が一緒なら良いけど常に一緒に居るのは無理だし」


 今の王城に誰が出入りしてるかは知らないけど、いつの時代も権力者にはアホが混ざる。彼らを黙らせるのも権力なんだけど、フィディ達に今のところ丁度いい肩書きがない。愛人はともかく婚約者にすると考えても「何処の馬の骨とも知れない亜人を!」と関係ない他人なのに喚き立てる奴はいるだろう。


「別に城下町で宿を取っても良いんじゃない?」

「普段はそれでも良いけど、やっぱり何時でも会いたくなったら会える方が良いでしょ」

「まあ、そうね」


 そうなるとやっはり適当な役職を見繕うべきか。みんなが自由に動けて国や他の貴族に干渉されないような役職。そんなのあったかな。



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