表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
忘れられた盾の勇者は護りたい  作者: たてみん
第2章:騙られた救いの聖者
47/131

47.病気の村

 翌朝早くに町を出た僕たちは、町は昨日の神の遣いの一件でまだ盛り上がっていたし、一部の人達は僕たちを見てあれが神が遣わした使徒なのではないか、なんて話してたけど、ともかくギュッテン村へと急いだ。


 そこは、一見静かな農村だった。

 日中なのに誰も外を出歩いていないという点を除けばどこにでもある風景だ。幸い特に畑が荒らされているなどと行った事も無い。まぁここ最近は碌に世話がされていないようで雑草だらけで荒れてはいるけど。

 一団を率いてやって来た僕たちを、流石に蹄の音などで気付いたのか家の中から飛び出してきた男性が呼び止めた。


「お~い、止まってくれ、そこの人達。ってお貴族様か!

 今この村は謎の病気に襲われてるんだ。悪い事は言わない。引き返した方が良い」


 そう言ってくれた男性は、少なくとも元気そうで病気には掛かってい無さそうだった。

 僕はデルタとティーラを連れて前に出た。


「僕はバックラー伯爵の遣いでアルと言います。こちらは伯爵家長男のデルタ。

 僕たちは病気の事を知って救援に来たんです。

 見たところあなたはまだ病気には罹っていないようですね。

 出来る限り村の状況と病気について教えてもらえませんか?」

「おぉ、伯爵様の!

 もちろんです。俺に出来ることなら何でもします。

 妻や娘を助けてください!」


 その人、テジュさんの話によると最初に病気が見つかったのは1月近く前だという。


「最初は、ガルバん所の倅が倒れたんです。

 げーげー吐くから何か腐ったものでも食べたんじゃないかって話してたんですが、翌日には他の家でも同じように吐いて倒れる子供が出てきて、これはおかしいって話になったんです。

 それから看病してる親も同じ症状で倒れたり、猟師のボゲンも倒れてこれはただ事じゃないって分かって急ぎ隣町から治癒士に来てもらって治療してもらっても回復しないし、そうこうしている間に次々倒れていったんです」

「今元気な人はどれくらいいますか?」

「大人は多分1/3ほどです。あと不思議と老人と乳幼児は病気になっていないようです」

「わかりました」


 そこまで聞いた僕は皆に向かって声を張り上げた。


「まず全員聞いて欲しい。

 病気というのは基本的に何かを使って伝染するものだ。

 そして話を聞く限りその何かは空気ではない。空気ならむしろ体力の低い老人などから罹るはずだ。

 つまり水や土、あるいは直接病気の人と触れることで伝染するんだ。

 よって今後一切この地にある水や土に直接触れる事を禁じる。

 水が必要な場合は魔法で生み出したもののみを使用すること。道具は定期的に熱湯消毒すること。

 これを徹底して欲しい。いいね?」

「「はい!」」

「騎士団員は村の外に野営陣地を2つ造って。1つは仮の救護施設として使います。

 手の空いた者は後で病人を運び込むためのタンカを用意して」

「「わかりました」」


 テキパキと動き出す騎士団を見ながら僕はバーラさんに声を掛けた。


「バーラさん。すみませんが、これから診察に行きますので一緒に来てもらえますか」

「あいよ。まぁその為に連れてこられたんだろうしね」

「アル様。私も同行します」

「じゃあ私も。エルフの知恵が役に立つかもだしね」


 サラ。フィディまで。まぁ止めても無駄か。症状の酷い病人とかあまり見せたくないものもあるんだけど。

 ともかく僕は3人を連れてテジュさんの案内で彼の家へと赴いた。

 家の中に入れば嘔吐による臭気が鼻を突く。それを無視して中を進めばベッドに横たわる2人の女性。テジュさんの妻と娘だろう。まだ意識はハッキリしているようで僕たちを見て何事か話そうとしたのを慌てて止めた。


「無理しないで。そのままでいてください。

 テジュさん。診察したいので彼女達の上着を脱がしてもらっても良いですか」

「ああ」


 女性の服を脱がせるのを他人の僕がやる訳にもいかないのでテジュさんにお願いした。

 そして僕たちの目に映ったのは全身の至る所に出来た痣のような黒い何か。それを見たフィディが顔を青褪めさせて言った。


「黒斑病だわ。話に聞いてもしかしてとは思っていたけど」

「そうさね。間違いない」


 フィディの言葉をバーラさんも頷いた。僕の診断も一緒だ。

 僕たちはテジュさんにお礼を言って一度外に出ることにした。そしてフィディは周囲に誰もいない事を確認しつつ僕に確認を取ってきた。


「どうするの? 黒斑病は不治の病よ。一度罹れば症状の重さに関係なく確実に死に至る病気」

「そうさね。あたしの見立ても同じだ。この病気は魔法も効かなければ治療薬もない。

 あんたは薬を用意してきたみたいだけど、あれはやっぱり村の人達を安楽死させるために使うのかね」


 道中で集めて来たテング草とクッコロ茸は単品ではそこまで強い毒ではない。だけど混ぜて使う事で解毒しなければ40度の高熱で長時間苦しめる猛毒になる。黒斑病で弱っている人が相手なら1日と持たずに死に至るだろう。


「……」

「ねぇ、何とかいって……」

「いやぁぁぁーー!!」


 僕がふたりの言葉を何も言わずに聞いていると、どこかの家から悲鳴が聞こえて来た。僕たちは急ぎ声のした家へと飛び込んだ。

 そこではつい今しがた息を引き取ったらしい母親と、その胸に抱き着いて半狂乱になっている少女が居た。

 僕は急ぎ少女の元に行き、その肩を掴んで落ち着かせようとした。


「まって、落ち着いて」

「なによあなた。邪魔よ退いて!

 お母さんが。おかあさ……う、ぐぼぁ」


 暴れていた少女は、その反動でか勢いよく嘔吐した。僕に向かって。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ