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忘れられた盾の勇者は護りたい  作者: たてみん
第2章:騙られた救いの聖者
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36.解放していこう

 さてあまりここに長居はしたくないし、ボチボチ引き上げようかな。魔力反応からして上ももう片付いてるみたいだし。


「じゃあ後の詳しい話は帰ってからということで、すぐに出れる?

 えっと、あ、そういえば名前聞いてなかった。僕はアル。こっちはティーラ」

「え、まぁいっか。フィディよ。よろしくね、アル」


 立ち上がったエルフの幼女改めフィディと握手を交わす。

 さて、口約束とはいえ司祭の言質は取ったからな。他の部屋も開放していこう。ということでまずはゴブリンの娘がいた部屋から。


「と思ったけど当然鍵が掛かってるね」

「どうしましょう。あの司祭が鍵を持ち歩いてればよいのですが」

「いや。面倒だから壊してしまおう。ティーラ、盾貸して」

「はい」


 別に盾が無くても木製の扉くらいなら蹴り飛ばせば開く気がするけど他人の家だしスマートに行きたいからね。

 僕はティーラから受け取った盾を左手に持ってコツンと扉を叩く。


「『アンロック』」

「え?」


 パキリという何かが割れる音がしただけで扉は無事。それもそのはず、鍵の部分だけ破壊したから。何か後ろから驚く声が聞こえたけど気にせず扉を開けて中に入る。

 そして簡素なベッドの上はもぬけの殻。さっき見た時はそこで寝ていたと思ったけどさて。


「でりゃあ!」

ぱしっ。


 扉の影に隠れていたゴブリンの娘が椅子を僕に向けて振り下ろしてきた。だけどまぁ、ここにはティーラが居る訳で、突然のこととはいえ反応出来ない程の速さではない。ティーラは何事も無かったように振り下ろされた椅子を片手で掴んで止めていた。


「ティーラ。こういう時は余裕があるなら腕を取って止めるように。

 これがもし刃物だったら手が切れるかもしれないから」

「あ、はい」


 実際ティーラならそれくらい出来たはずだ。

 まぁそれより今はゴブリンの方か。


「えっと、こんにちは。意外と元気そうだね」

「くっ、お前達も人攫いの仲間か!」

「お、意外と流暢にしゃべれるんだ。凄いね。

 それと僕らは奴らの仲間じゃないよ。むしろ助けに来たんだけど」

「え、そうなのか。それはすまなかった。

 ごめん、あやまる。許して欲しい」

「う、うん。いいよ」

「ほんとかっ!」


 なんというか存外素直な子らしい。僕の言葉を鵜呑みにしてしょげたり元気になったりと忙しい。今は目をキラキラさせて僕を見ている。尻尾とかあったらぶんぶん振ってそうだな。


「じゃあここから出るからついて来て」

「うん。分かった。あたし付いてく」


 あーなんとなく彼女が捕まった原因が分かったかも。絶対この子騙されやすいタイプだ。悪い奴の言う事もほいほい信じて付いて行ったらここでしたとか、そんな感じかもしれない。

 ともかく次の部屋へ。こっちは白い狼が居る部屋か。さてどうしようかな。

 ひとまず鍵を壊して中に入ってと。狼は鎖に繋がれているので突然襲ってくるような事は無い。そもそも彼の場合、臭いで誰が入って来たのか分かってただろうしね。


『こんにちは』

『お前は先ほどの小僧か。どうした』

『うん、予定が変わってすぐに助けに来ちゃった』

『そ、そうか』


 まるで近所の子供が「遊びに来ちゃった」みたいなノリで言ったら呆れられてしまった。話した感じ親戚のおじさんみたいな雰囲気なんだよな。多少なら甘えても許して貰える感じ。


「あのアル様。この狼は襲ってきたりはしないのですか?」


 恐る恐ると言った感じで聞いてくるティーラ。ってそうか。狼の声は僕(と多分フィディ)しか聞こえてないもんな。ゴブリンの娘は今はティーラの背中に隠れるようにしてチラチラこっちを見てる。


「大丈夫だよ。この狼は賢いから僕らが敵じゃないって分かってるみたい。

 例えばほら、背中を撫でても噛み付いて来たりしないでしょ?」

「はぁ、なるほど。しかしもしもの時はすぐに私の背に隠れてくださいね」


 僕が大丈夫アピールをすれば、渋々頷いてくれた。

 よし、ティーラも納得したところで狼の後ろ脚に付いている足枷を外してしまおう。


「『アンロック』」

「『おい、ちょっと待て!』」


 僕が再び盾を使って足枷を叩けばパキリと割れて外れてしまう。もちろん狼の足には振動一つ与えていないはずだ。なのになにが不満なのかフィディと狼が口を揃えて僕にツッコミを入れてきた。


「えっと、どうかした?」

「どうかしたじゃないわ。さっきも見たがなんなのそれは。

 解錠の魔法かと思えば全然魔法じゃないじゃない」

「そりゃまぁ、ただ盾でこつんと叩いてるだけだし。

 まあちょっとコツが要るんだけどね」

「ねっ、じゃないわよ!

 ただ叩いただけで普通は鉄の足枷は壊れないのよ」

「え、そうなの!?」


 だってただの鉄だよ? 鎖の方は狼の力でも切れない様に丈夫な素材を使ってるみたいだけど足枷はただの鉄だった。それもそこまで質の良くないものだった。なら壊すのは難しくは無い。難しかったのは力を入れ過ぎて狼の足を傷付けることのないようにするところだけだ。


「ま、ともかくこれで動けるようになったでしょ?

 さっさと上に戻ろう」

「……はぁ。そうね」


 フィディはどこか疲れた感じでそう答えるだけだった。

 そうして行きは3人だったのに帰りは4人と1匹に増えた僕たちが1階に戻ってくると出迎えてくれるのはギントとグント。それとエンジュと呼ばれていた翼人の女の子。その首からは既に首輪が外されている。


「首尾は?」

「はっ。隠し金庫等にしまってあった裏取引の書類は全て偽物とすり替えておきました。

 またそれで稼いだと思われる金品も押収済みです」

「よし」


 この建物には司祭と翼人の子以外には居なかったから、僕が司祭を隔離している間にギント達に捜査してもらっていたんだ。こういう人ってなぜか隠し帳簿とかちゃんと残してるからね。

 あとはまだ状況を上手く把握できていない翼人の子か。


「確かエンジュって言ったね。

 色々分からない事だらけだと思うけど、君の身柄は僕が引き取ったんだ。

 だから悪いようにはしないから僕に付いて来て欲しい」

「えっと、つまり私はあなた様に買われた、ということでしょうか」

「あーうん。ひとまずそんな感じに思ってくれてればいいや」

「分かりましたご主人様」


 ぺこりと頭を下げるエンジュを見ながらどうしたものかと思うけど、今はどうしようもないか。これ以上長居して、司祭の仲間がやってこないとも限らないし。



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