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忘れられた盾の勇者は護りたい  作者: たてみん
第2章:騙られた救いの聖者
29/131

29.7歳になりました

いつもお読みいただきありがとうございます。

予告ですが、

この先は投稿ペースは落ちる予定です。

楽しみにしてくださっている方には申し訳ないです。

 バックラー伯爵領に来てから早くも2年が過ぎて季節は初夏になりました。

 あれ以来、新人類創生機構とかいう組織が何かしてくることもなく、周辺の瘴気も落ち着いてるけど強くなった魔物はそのままだから魔物ハンターギルドは忙しそうだ。

 僕は新年の挨拶なども実家には帰らず伯爵領で過ごしていた。あ、一応近況報告とかは父上に手紙で送ってるし、父上も王都の話が送られてきている。

 それによると世界各地で不審な事件がいくつか起きているそうだ。それが全て新人類創生機構の仕業とは思えないので、良くないことを企んでる人達は何処にでも居るということなんだろう。

 さて、2年が経っても僕の日常はそれほど変わらない。今も朝早く起きて騎士団の朝練に参加している。


「アル様、よろしくお願いします」

「うん、よろしく」

「行きます。はあっ!」

キキキンッ!


 僕の構えた盾にティーラの3連突きが飛んでくる。僕は盾で受け流しつつ前に出ようとしたけど、そこに更に休みなく突きが飛んできた。


「まだまだ行きますよ!」

「よし、そのまま100本行ってみようか」

「ひゃ、100本!? 分かりました。

 でりゃりゃりゃ〜」


 気合を入れて突きを出し続けるティーラもこの2年でかなり成長した。今も本命の突きの合間に鋭いフェイントが混ざっているので気が抜けない。


「威力が落ちてきてるよ。残り30!」

「はい!」


 必死に続けるティーラを鼓舞しつつカウントを続ける。


「98、99、100そこで気を緩めるな50追加!」

「はいっ!」


 勝った終わったやり遂げた。そう思って気を緩めた瞬間に外野から飛んてきた1撃であっさり命を落とすなんてことはよくある事だ。どんなに実力があっても死ぬときは死ぬ。

 僕はさっきまでと違い前後左右にステップを踏みながらティーラの攻撃を捌いていく。そうするとティーラも突きだけじゃ捉えきれなくなって払いなどを交えて僕の動きを追ってくる。


「ティーラ。敵を追い掛けるのではなく追い詰めるんだ。敵の逃げ道を予測して槍を先回りさせて」

「こ、こうですか?」

「そうそう。それを繰り返せれば相手は身動き取れなくなって詰むんだ」


 逃げようとした所に待ち構える死のアギト。それを見てなお動けるのは熟練の盾士だけだろう。それでもそっちに盾を向ければ正面に隙が出来る。

 今のティーラじゃ正解率2割だけど、むしろ偶然のように狙われる方が防ぎにくいものだ。


「よし。じゃあ今度こそ本当に終了ね」

「ありがとうございました!」


 最後の一撃を受けたあと、距離を取ってから終了を宣言した。そうしないとまた「隙あり!」って始まっちゃうからね。

 肩で息をするティーラと礼をしてから辺りを見渡せば、他の皆も気合の入った訓練をやっていた。彼らもこの2年間でだいぶ成長してると思う。


「アル様、タオルをどうぞ」

「ありがとうサラ」


 サラからタオルを受け取り軽く汗を拭う。最近は僕も成長してるけどみんなも強くなってるから前ほど余裕はないんだよね。良いことなんだけど。


「じゃあ次はサラと組もうかな」

「はい。よろしくお願いいたします」


 サラもグントの指導のお陰でかなり動けるようになっている。といっても本職は戦士じゃないから訓練の内容も攻撃よりも防御寄りだ。


「今日は影踏み鬼にしようか」

「はい」

「最初はサラが鬼ね」


 影踏み鬼。鬼ごっこの1種で、普通の鬼ごっこと違うのはお互いの距離だ。鬼はその名の通り相手の影を踏み続け、逃げる人は鬼に影を踏まれないように不規則に逃げて鬼を惑わせる。お互いに攻撃は禁止だ。


「っ」

「ふふっ」


 合図もなく動き出した僕の後ろをピタリと寄り添うように動いてみせるサラ。傍から見ればふたりでダンスを踊っているように見えなくもない。実際、この後の勉強の時間でダンスをやるときにはサラにパートナーをお願いしてるけど、今みたいに息ぴったりだ。

 ちなみにわざとサラにぶつかるように動いてもきっちりと反応してくれる。


「一瞬そのまま抱き締めてしまえば、なんて誘惑に駆られてしまう罠ですね」

「その場合は僕の方ですり抜けるんだけどね」

「そうなのですか?では試しに」

「ほいっと」


 包み込むように回されたサラの腕をスルリと抜け出す。しかしお互いの距離はほぼゼロのままなので再び捕まえにきた腕をひょいひょいっと躱していく。


「むむむ、流石アル様。こういう時くらい私に甘えても良いんですよ?」

「いや、それじゃあ訓練にならないから」

「むぅ、アル様真面目過ぎです」

「そういうのはもっと別のタイミングでね」

「ふむふむ。ということはお部屋で休んでいる時とかは良いのでしょうか」

「さあね」


 呑気な会話をしている間も僕らは目まぐるしく動き回っていた。それを見た周りはというと。


「ちょっ、なんかあの二人、残像が見えるんだけど」

「相変わらずなんちゅうステップしてるんだ」

「アル坊も凄いけどサラちゃんもメイドさせておくには惜しい逸材だよな」


 そんな話をしながらも訓練の手は抜いていないのだから偉い。もっとも、余所見をしすぎるとゲンコツとかが飛んでくるんだけどね。

 そうして朝練が終わればみんなで食堂へ。

 騎士団の食事は栄養価と量が大事って事で以前はクソ不味い料理が出てきた。今ではそれも大分改善され、更に毎日同じのだけでは飽きるだろうと、季節の野菜を使った小鉢なんかも出るようになった。


「いただきます」

「今日はナスとキュウリの浅漬けだ」

「んん〜、このキュッキュッとした歯ごたえとスッキリした味が良いな!」

「まったくだ。アル坊が来てくれてほんと良かった」

「新人には昔のあの味を体験させてやりたいよ」

「それなら今度、新歓の罰ゲームで出すか」

「お、それいいな」


 ワイワイガヤガヤと楽しそうに食事を摂っていく。これも僕が来る前には無かった光景らしい。やっぱり美味しいご飯は大事だな。



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