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忘れられた盾の勇者は護りたい  作者: たてみん
第1章:忘れられた盾の勇者
28/131

28.一夜明けて

 襲撃のあった翌日。

 僕は伯爵に朝食に呼ばれていた。


「皆さん、おはようございます」

「おはようございます、王子」

「「おはようございます」」


 食堂には初めてきた時と同様に伯爵家の全員が集まっていた。というより、基本的に何もなければ一緒に食事を摂るのがここの習慣なのだろう。僕とサラは騎士団の朝練に出ている関係で朝食をそっちで摂っていることが例外なんだ。

 運ばれて来た朝食を食べながらチラリと伯爵を見る。今日僕が呼ばれた理由は、まず間違いなく昨日の事だと見て間違いない。


「昨日は大変だったようですね」

「ええ。なにせ王子がいらっしゃらないものですから」

「ぐふっ」


 まあ当然僕が街の外に出ていた事は把握しているか。

 ただ続く言葉に僕は驚かされた。


「お陰で私自ら武器を持って陣頭指揮を執ってしまいましたよ」

「なんと」

「この人ったら『こんな犬畜生などさっさと叩き殺してあのお方を探しに行くんだー』って凄い奮闘してたのよ。

 魔物の討伐が終わってすぐに王子の護衛のひとりが王子の無事を報告してくれなかったらそのまま飛び出して行ってたでしょうね」

「そうだったんですね。ありがとうございます、伯爵」


 そういえばグント達の3人の内、グント以外は僕から何か指示している訳ではなく自由に動いてもらっている。ちらっとグントから聞いた話ではグントが直接僕のそばに居て護衛に徹する分、ガントとギントは伝令や偵察、諜報などを行ってくれているらしい。伯爵への連絡とかまで僕は気が回らなかったので凄く助かる。


「それと騎士団の中からも王子達を捜索に向かうべきだという声が上がっておりました。

 こちらはティース団長が魔物の第2波が来るかもしれないからと言って押し留めておりました」

「そうですね。騎士団としてはそれが正しい行動でしょう」

「もっともそう言ったティース団長自身が一番落ち着きが無かったのですがね」


 ティース団長は顔が怖いだけで人情味のある人だから。仲間が危険に飛び込んでるのに助けに行けないというのは歯がゆいだろうな。

 他の皆も、てっきり僕の事は嫌いになってるんじゃないかなって思ってたんだけどそんなことも無かったのか。ほら、僕が居なくなれば朝練が前の状態に戻る可能性だってある訳だし。


「騎士たちの話によると彼らは王子に物凄く感謝しているそうですよ」

「え、そうなの!?」

「はい。『彼が来てくれたお陰で飯が美味くなった』と言っていましたが心当たりはありますかな?」

「あぁ。ってそんなことで?」

「彼らにとっては死活問題だったのでしょうな」


 確かにここに初めて来たとき、騎士団の朝食は栄養重視で味は酷いものだった。知らない人に家畜の餌だと言ったら多分納得されただろうってくらい不味かった。

 なので僕はすぐさま厨房に顔を出して料理長と相談して味の改革を行ったんだ。料理長は決して頭の固い人ではなく僕が提案した内容を検証してくれて、結果として予算の都合もあって2種類の安価に手に入るハーブを取り入れてくれることになった。まぁ料理長は僕が王子だって知ってたから協力してくれたのかもだけど。その結果、不味くは無い、さりとて美味しいとも言い難い、上手い言い方をするなら毎日食べても飽きない味に仕上がったと思う。

 その後は特に騎士団のみんなから食事に関して直接何かを言われた事は無かった。強いて言えば料理長からみんなして今までの倍近くお代わりするようになって食費が上がったと嬉しそうに愚痴られたくらいかな。だから不評では無かったんだろうなとは思ってたんだけど。意外と喜んでくれてたんだね。


「そういえば先日騎士団を抜けた3人ですが、王子が彼らのドッグタグを回収してきてくれたお陰で所在も確認できたので、王子の希望通り騎士団の任務中に事件に巻き込まれたという形で処理しました」

「無理言ってごめんなさい」

「いえいえ。これに関しては王子の要請が無くてもそうしたでしょう」


 本来、脱走したというのは不名誉な話で、実家に亡くなったことと併せてその話が届くと余計に悲しまれた事だろう。対して任務中に亡くなったというなら立派に勤めを果たしたと誇れるし、なにより手当てが支給される。

 またこの話は恐らく他の騎士団員の耳にも入ることだろう。そうなればここの領主は自分たちの事を手厚く守ってくれる人だと株が上がり任務にも身が入る。

 

「そうなると後の問題は今回の件の黒幕が誰かか。

 僕が相手をした男の様子からして仲間が居るのは確実だとおもうんだけど」

「はい。調査員を派遣して彼らがアジトにしていたであろう小屋を調べさせる予定です。

 ですが何も出ては来ないでしょう」

「こういった犯罪組織に心当たりは?」

「昨日の王子の話から考えて、恐らく『新人類創生機構』でしょう」

「うわぁ」


 なんというか名前からしてうわぁな感じだし、その内容を聞いてもやっぱりうわぁな感じだった。

 その組織が掲げているお題目は2つ。1つは脆弱な人族という肉体を捨てより高度な存在に進化すること。そして、既存の旧人類を滅ぼし新たな楽園を自分達の手で築き上げることだそうだ。その為の手段の1つが鬼人化だったんだろう。


「そして彼等は人類を滅ぼす為に邪神龍を復活させようとしているという噂もあります」

「どこまで行ってもうわぁですね」


 まったくなんて無駄なことを。

 邪神龍を復活させられる訳ないし、仮に邪神龍が復活しても人類どころか自分達も滅ぼされるとは考えないのだろうか。

 それになによりその新人類なるものになっても平和も幸福も訪れたりしないのに。



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