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忘れられた盾の勇者は護りたい  作者: たてみん
最終章:世界は勇者を求めている
130/131

130.平和の為に世界に混沌をもたらそう

 邪神龍モドキにより連合国軍が崩壊したことは瞬く間に全国に伝わった。まあ保護した連合国軍の兵隊に治療した見返りに全国に散ってもらったんだけど。でもこれでこの前線都市を奪おうと考える国は無くなるだろう。

 同時に中途半端な気持ちでこの街に居つく人もほとんど居なくなってだいぶ健全な街づくりが出来たと自負している。食糧の自給率も肉はこの前ので数年は持つし街の南側を随時開墾して耕地面積を広げている。来年には畑を挟むように南側に小さめの砦を造ろうかって話も上がっている。

 こうして無事に足場が安定したところでそろそろ次に進もうと思う。


「さてみんな。今日集まってもらったのは他でもない。

 フィディも帰ってきてくれたし、僕らとしては平穏な日々が帰って来たとは言え、他所を見れば魔物による被害は増加の一途を辿ったままだ」


 会議室に集まってもらったいつものメンバーの顔を見ながら僕は話を始めた。


「僕としてはここに居るみんなが幸せでいてくれることが第一なのは変わらない。

 そのうえで世界をもうちょっと平和な世の中にしていきたいなって考えてる」

「しかしアル様。私達だけではこの広い大陸全体に手を伸ばすのは無理があるのではないでしょうか」

「まあね」


 例えば全ての国に誰かしら向かわせようとしたら1国に1人とかになるだろう。それなりに僕らを評価してくれている盾の王国と癒しの王国はともかくとして、他の国は僕らの誰かが突然やってきてあれこれ言っても従ってくれるとは思えない。むしろ丁度良いカモだと襲ってくるかも。


「だから僕らは基本ここから動かないで済むようにしよう。

 僕自身みんなと離れ離れになるのはいやだしね」

「はぁ。では騎士団に動いてもらうのですか?もしくはアルファ商会か」


 その質問にも僕は首を振った。なにせ騎士団はこの地を護って貰わないといけないし、アルファ商会だって本来の薬の行商を中心に各地の健康支援を優先してもらう必要がある。

 だからどちらも極力使う気はない。


「さてここで問題です。この大陸に王と呼ばれる人は何人居るだろうか」

「えっと、それは……」

「盾の王国の王様に槍の王国、魔法の王国、癒しの王国、連合国にもそれぞれ王が居ますし……」

「う~ん、沢山だな!」


 数えるのをすっぱり止めたキャロがザックリ答える。でもそれで正解だ。


「そう、沢山だね。

 ならさ、魔王だって沢山居ても良いと思わない?」

「え、いや。えぇっと?」

「まさか魔王を量産するの?」

「量産っていうと変だけど、各地に居ても良いと思ってる。

 具体的にどうするかというと……」


 僕の考えて来た案をみんなに伝えると、若干頭を悩ませながらも理解はしてもらえた。


「問題はそんなにうまく行くかどうかですね」

「失敗したって今より悪くなることは無いんだから良いんじゃない?

 やり直しだって出来るんだし」

「それもそうですね」

「じゃあ早速取り掛かろうか」

「「はいっ」」


 まず最も大事な魔王を創るところは僕とサラとフィディの3人で行う。

 やることはそれほど難しくはない。まず瘴気の濃い地域に向かって例の結社の技術を参考に周辺の瘴気を1か所に集めてしまう。そうすることで周辺の魔物はより濃い瘴気に惹かれて集まってくる。

 この時、その地に居る特に強い個体を魔王に指名してその地を管理させるんだ。


「そんなに都合よく魔王になれる個体が居るの?」

「大丈夫大丈夫。当てはちゃんとあるから。この辺りだと、ほらあそこ」

「あれは、特殊変異個体ですか?」

「そう」


 以前報告を受けていたジャモが通った先に発生した特殊個体。

 知性という意味ではちょっと厳しいけれど、強さこそが偉さの魔物社会では十分に魔王として君臨できる。

 他にも直接魔王にならなくてもアドバイザーという形でお願いできるヒトにも心当たりがあるし。


『その匂い、あの時の子供か』

「お久しぶりです。白狼さん」


 昔フィディが捕まっていた地下牢に一緒に居た白狼さん。いつか恩は返すって言ってくれてたので今回のことでお願いしてみた。


「無理なお願いですみません」

『まあ良い暇つぶしになろう』


 他にも以前僕の眷属になってくれたクママにもお願いする。


『クマ~♪』


 二つ返事で了承してくれたクママ。実力的には十分に魔王を名乗れるんだけど、敢えてアドバイザーに留めたのは、やっぱり直接人間と敵対する関係にはなって欲しくなかったから。自分の眷属の討伐依頼とか見るのも嫌だしね。

 そうして各地に魔王と瘴気の濃い地域、通称ダンジョンを創り上げていく。その結果、今までは無作為に発生して暴れていた魔物たちをある程度コントロールすることに成功。小さな村や町が魔物の襲撃に遭うことを大幅に減らす事が出来た。

 ただ、問題があるとすれば、これは別に世界中の魔物の数が減った訳ではないってところだ。むしろ質という意味では以前よりも良くなってしまっている。なので各国には平和が訪れたんだ、なんて誤解されては困る。

 そこで。


『はーはっはっはっは。

 元気にしているか愚かな人間共よ!』


 魔王様の全世界放送再びである。


『先日挨拶してからすぐに討伐隊の1つでも来るかと期待していたのだがな。

 余りにも暇だったので各地に魔物の巣窟、ダンジョンを創ってやったぞ。

 我の元に来ようと言うのであればこのダンジョンの1つや2つ余裕で攻略出来ねば話にならん。

 ダンジョン内は魔力の宝庫。普段は滅多に見かけない薬草や鉱石などもあるだろうし、精々攻略に励むことだ。

 それと、ダンジョン内の魔物もあまりに暇だったら近隣の王都を攻めても良いと伝えてある。

 その時には大量の魔物が一斉に王都に雪崩れ込む事になるだろう。

 それが嫌なら精々ダンジョンを退屈させないことだな』


 ちなみに今回の放送はフィディから変声の魔法を掛けてもらって僕が放送してみた。魔王のノリで話すのって結構楽しいな。また今度やってみてもいいかもしれない。

 それはともかく、これでどの国も本当の平和はまだまだ先だって理解してくれただろう。もしこれでダンジョンや魔物を無視して他国を攻めようなんて国があったら、本気でダンジョンの魔物総動員させて王都を襲撃させるのも良いかもしれない。



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