第173話 人口知能リューグー
まず俺は目の前の設備に驚いていた。
「改めてみると。す、すげぇ……宇宙戦艦のコックピットみたいだ」
そのまんま宇宙戦艦の艦橋のような部屋に俺達はいた。いくつかの運転席が円を描いて配置され。巨大スクリーンが天井すべてを覆っている。スクリーン自体は、まだ何も映っていないのか何か古代文字のようなものが点滅している。
「こ、これがリューグーなのか?」
リリスは満足そうに頷いた。
「うむ。永久動力は生きているようじゃな」
「永久動力!?」 なんで異世界で、未来宇宙的な話になるのか。俺は目を回した。
「うむ。永久動力とはな……」
リリスが、永久動力について説明をするに。
永久動力とは名ばかりで、人工生命体が動力部で、自転車のようなものを漕ぎまくっているらしい。
俺は泣きながら、自転車をこぎまくっているホムンクルスを想像した。
「それ永久動力じゃねーし!!労働基準守ってる!?」
「うむ。詳しいことは発進準備しながらにしよう」
「さらっと流したな……」
「ここは第二艦橋じゃ。司令塔である第一艦橋に移動するぞ。あそこはすべての機能を持っておる」
「ここは第二艦橋なのか……」
俺たちはリリスの後ろに従い艦橋の中央後方に移動すると、床に円盤型のプレートがあった。リリスはそこに立っている。人が5人くらいは乗れそうなプレートだ。
「リリス?これは?」
「まぁ、乗ってみろ」
「う、うん……」
俺とリーランは、リリスのとなりに立つ。すると……。
フオン……
その円盤は宙に浮かび、エレベーターのように上昇しはじめた。
「うわ……浮かぶのかよ。これ!」
俺達は、そのまま上昇すると司令塔エリアである第一艦橋ルームの床に到着。リリスはためらうことなく、第一艦橋に足を踏み出す。俺は恐る恐る部屋に入る……。
「おぉ……すげぇ」
先ほどと同じようなデザインの部屋だが、部屋の中央に円形設置されたコックピットと思わしき席がズラり……。数がものすごく多い。そして中央には指揮官?もしくは艦長が座ると思われる艦長席が、少し高めの位置に設置されていた。
「では……ここにいろ。ワシは艦長席にいく」
「艦長席……あれか」
「うむ、あの一番高い位置にある席じゃ」
「あれ?でもあの席に階段とか梯子がないぞ?」
「ふふ……まぁ見ているのじゃ」
リリスは、その艦長席席に上るためのどうするのかな……と思ったのだが、なんと指揮官席の傍らに立つと一瞬で指揮官席に座っていた。
「て、転移……」
こんな小さいところに転移陣を設置してるとは……、さっき起動するときに「入/切」のボタンを押していたとは思えない最新テクノロジーだ……。だって、俺が前世で住んでいたアパートについていたスイッチみたいだったぜ?あれが主電源だったらしい……。
ここからは見えないが、カチャカチャと何かをリリスは操作している音が聞こえる。
俺達は、それを見守る形だ。
「では、起動準備に入る。リューグーよ……起動せよ」
『かしこまりました。マスターリリス』
「うわ!なに?!女の人の声が聞こえた」
少し電子音のような機械的な声だったけど、たしかに女性の声だった。
すると、声がまた聞こえる。
『はじめまして、龍人の子よ。私はリューグー。この空中戦艦の人工知能です』
スピーカーなどどこにもないが、不思議と聞こえてくる……。どこから声が出てるんだ?
「じ、人工知能……」
あれか……乗り物が喋る系のあれか……。なるほど。
俺は持前のラノベ知識をフル動員して、無理やり自分を納得させた。
「すごい、ヤマト。いきなりリューグーを理解したの?」
「う、うん。まぁ予備知識があるから」
俺は前世で、乗り物が喋る系の映画やアニメを見たことがあるからな。日本人なめんなよ!
「予備知識って、あなた前世のカリアースの記憶ないんでしょう?5歳くらいでしょ、ヤマトって」
リーランが首をかしげる。
「あ、その辺り色々あって、あとでまとめて説明するよ」
「そ、そう……わかったわ」
『ちなみに、立体映像として私「リューグー」を表示可能ですが……出しますか?』
「え?そうなの?見たいな……」
「では表示します」
俺はリューグーが、美少女なのを想像した。
ブン……
俺の目の前に現れたのは、美少女だった……。顔だけが……。
「おい……なんで体だけマッチョ男なんだよ!」
『え?』
戸惑うリューグー。
「何戸惑ってるんだよ! 人工知能なんだろ!!」
俺がツッコミを入れると、リーランが庇った。
「リューグーを虐めないでよ、かわいそうでしょ。ね?リューグー」
『龍人リーランのおっしゃるとおりで、私は深く傷つきました』
「なんでぇ!?なんで俺が悪者なの!?」
俺が叫んでいると、リリスがリューグーに話しかける。
「リューグーよ。立体映像は不要だ。声のみでいい」
『はい、マスターリリス』
ブン……
顔が美少女、体がマッチョ男の不快な映像が消えた。
「まずリューグーを緊急発進させるのじゃ。平行してリューグーの現状報告をするのじゃ」
『了解、マスター(主人)リリス。緊急発進プログラムを起動させます。目的地を教えてください』
「西方向への周回モードを命じる。目的地はない、期間は5年じゃ」
『2000年以上停止状態だったため、各機関のチェックに時間を要します』
「すぐやれ。どれくらいかかる」
『チェック自体は55秒で完了予定、問題なければ起動と浮上準備に入ります』
「うむ、承認する。やれ」
『了解、マスターリリス。内部チェックプログラムを起動します』
フィィ――ン……
耳に心地良い電子音が、艦橋を満たした。
艦橋全体に配置されているモニターが慌ただしく光り何かを映している。グラフだの数値っぽいものだの色々だ。どうも浮上しようとしているようだ。
『チェックが完了しました。報告します、マスターリリス』
「うむ」
『主エンジンが修復不可。主兵装が使用できません。補助兵装は使用可能です』
「そうじゃの……魔王の奴にやられたからのぅ……」
『補助エンジンで起動と移動航行は可能です』
「他の機関は問題ないか。栽培エリアなど自給エリアは?」
『各機関2000年の間に修復済。問題なし。起動準備に入りますが如何でしょうか」
「やれ」
『長期間停止していたため、浮上まで3分ほど要します。また補助エンジンをフル稼働させたとしても、航行スピードは10%ほどまで減少いたします』
「かまわん、移動できればいい。続けろ」
『了解、起動プログラムに入ります』
2000年以上経過して3分で起動と浮上までするところに驚きだ……。すごい技術が集まった戦艦だということは判るが、オーバーテクノロジーじゃね?
とても、人工生命体が下で自転車をブン回しているものとは思えない……。
「リューグーよ」
『はい、マスターリリス』
「その間、リューグーの歴史などを説明してやれ」
『はい、マスターリリス』
リューグーが、自身の開発経緯を説明しはじめた。
『開発の発端は、マスターリリスの弟、ランクー・フォン・ドラガラム氏の話から入ります』
「リリスの弟!?」
リューグーが語り出した……。




