2-18 模擬戦2
「うっ……」
気を失ったトムは、宣言の後すぐに目を覚ます。
「大丈夫か?」
アユムはそっと右手を差し出す。
「ああ、負けちまったのか。なんか後ろから攻撃食らった気がしたけど、あれは?」
「この棒を引き寄せただけさ」
そう言って、手元の棒を見せる。
「ちっ。ちゃんともっと捨てておくべきだったか」
「そしたら、もっと加速がついて寝てる時間も増えてたかもな」
トムが握った手を、アユムは引き上げる。
「やっぱりお前強いな。昨日会った時から感じてた。魔力量は俺より低いのにな」
才能がすべてのこの世界で、魔力量は絶対基準であり、変えられないものだった。
それを覆している明らかな異分子。
だが、この場では意識されることはない。
絶対強者がいるからだ。
彼に比べればすべてが虚無。
側に立っているのでさえ烏滸がましいと感じられるほどの差だからだ。
「次は――」
そう言って、グルナとセリーが指名される。
「本気でやれよ」
その言葉には、やらなければ殺すといった圧があった。
その圧でセリーは震えながら歩くが、対するグルナは何も感じていない様子だった。
(魔力がないから危険を感じられないんだろうな)
本来であれば、生まれたばかりの赤子にも存在する魔力。
それが完全にないというのは、これも異分子。
セリーは先ほどのアユムの位置に、グルナは遅れてトムの位置につく。
「始め」
「ごめんね、グルナちゃん。本気で行くね」
そう言うと、セリーの周囲に十挺の銃が並ぶ。
「これが私の魔法。武器を作り出すことができるの」
(これが銃姫っていう名前の由来か)
銃口が一斉にグルナへ向けられた。
「着火」
セリーが右手をグルナに向けて言葉を発すると、十挺の銃口が同時に火を吹いた。
銃弾が、雨のように放たれる。
その量は、一目で完全に避けられないことを理解できるほどだった。
だが、グルナには一つも直撃しなかった。
グルナに当たるはずだった弾丸は、すべて触れる寸前に消え去った。
「な!?」
何が起きたか理解できないセリーは、もう一度銃から弾を放つ。
今度は先ほどの倍量。
十秒近く、弾丸は撃ち続けられた。
大量の弾丸に大理石がえぐれ、砂埃が舞う。
セリーは肩で息を整えており、相当量の魔力を使ったように見える。
砂埃が収まると、無傷のグルナが立っていた。
「セリーちゃんの術式、美味しいね! りんごみたいな味がするよ!」
無邪気そうな声でそう言う。
自分の必殺技がまったく効かないことに衝撃を受けたのか、セリーは動かない。
アユムは、グルナに反撃手段がないことを理解している。
接近戦に持ち込めば、実際には五分の勝負になるはずだった。
だが、そうはならなかった。
攻撃手段がないグルナと、魔力を回復したいセリーの思惑が重なり、二人は見つめ合う形になった。
十数秒動かない二人に、プレクシアが声を出す。
「早く戦え。見合うな」
セリーはこれまで、この術式で倒せなかった人も魔獣もいなかった。
どうすればよいのか、手段が思いつかない。
だが、新しい戦闘手段など、いきなりできるわけもない。
同じことを繰り返すしかなかった。
プレクシアに休憩を許されず、同じ行動を続けた結果は、火を見るより明らかであった。
セリーは人生で初めての魔力切れに遭い、吐き気を催しながら、その場に倒れた。
「セリーちゃん、大丈夫?」
すべての攻撃を無効化したグルナは心配そうに近寄ろうとするが、審判を務めていたプレクシアが間に入る。
「なぜお前は吸収した魔力を使わない?」
「魔力を使う? ってなんですか?」
「……まだ卵か」
そう言って興味が失せたように、プレクシアは宿舎の影でさぼっていたラルフの傍に移動した。
「今日の模擬戦はここまでだ。あとはマリアに従え。ラルフ、行くぞ」
「へいへい」
そう言い残して、二人は時空の歪みの中に消えていった。
すみません。ストック切れました。
また描き溜めしてから載せますので、宜しくお願いします。
あとここまで読んでくださってありがとうございます!




