プロローグ:宰相の初仕事
前書き
皆様、こんにちは。
やあっとこさ、長い前置きが終わりましたね! 二章に入って漸くのタイトルとプロローグ回収ですよ! だから、この章の中盤まで読んで欲しかったんです。
世界は広がり、登場人物も増える。一章で語られなかった設定も盛りだくさん!
これからどんな問題が待ち受けるのか。そして、彼の宰相としての手腕は⁉︎
乞うご期待!
エイジが初陣より帰還し、宰相として認められる儀式が終わってから数時間後、昼過ぎ頃。彼は魔王に連れられて、改めて城内を探索していた。正式に認められたことで、入ってよい場所が増えたこと。そして、本人がまだ把握できていない場所が多いからと、案内を希望したためだ。
彼がこの城で暮らし始めて、早三週間強。しかし未だ、城の全容を把握しているとは言い難い。何故ならば、鍛錬や勉強を繰り返してばかりで、探索するための自由時間を設けなかったからだ。詳しく知っているのは精々、寝室フロアや修練場と玉座の間、円卓のある会議部屋と食堂くらいのものである。
因みに、その知っている僅かな中でも、エイジにとっては不満点だらけである。
例えば食堂。部屋はかなり広く高級ホテル並みであったが、ホテルらしいのは広さだけ。椅子もテーブルも造りが粗悪で、カトラリーも皿も品が良いとは到底言えない。加えて、料理も本当にマズい。彼が来てから味は幾分向上したものの、それでも到底美味しいとは言えない。そうなってしまった要因は幾つもあって、仕方ないと言えばそこまでなのだが。
しかし、彼が最も不満なのは、トイレだ。これがもう酷いものなのである。城内にトイレは殆ど無く、あったとしても場所が限られ、水洗など以ての外。更には、極めて不潔である。潔癖予備軍な彼は、小は妥協したものの、大は態々外の川まで行って済ませたものだ。魔力のコントロール技術を異常に早く発達させたエイジは、早くも地脈からエネルギーを得ており、食事量が減ったため困らなくなってきたが、それでも気にはなる。
さて、先ず彼が案内されたのは四階。幹部会議でよく使用される円卓部屋のあるフロアだ。幹部達の寝室と仕事部屋が存在している。部屋に入りはしなかったが、場所を覚えた。幹部の部屋は、フォラスなどの一部の例外はあるが、四階に集中している。
しかし、そこでエイジは疑問を覚えた。四階は最も部屋の内装が充実しているにも拘らず、空き部屋が幾つかあるのだ。彼が疑問をぶつけると、ベリアルは歯切れ悪くも管理不足であることを打ち明けるのだった。
次に向かうは三階、そして二階。下るにつれて、各階の面積は大きくなっていく。1スパンずつとそれほど極端ではないが、実は魔王城は金字塔のように上に行く程フロア面積が狭くなるのだ。石やレンガでできているので、構造上の制約があったのだろう。さて三階には、上級魔族と使用人の寝室、図書室本部と魔導研究所、医務室等がある。二階は、兵士達や役人の宿舎として利用されている。合わせれば、一万人弱は収容できる広さだ。そして矢張り、理由のない空室がある。
一階はエントランスや食堂、多目的広間として使用される階。地下一階は修練所や牢獄、加工やらの作業等さまざまな用途で使われる小部屋がある。
そして地下二階、倉庫階である。武器庫と宝物庫、物資保管庫に食糧庫。倉庫のためか最も広いフロアだが、広さを持て余すようにスカスカで、整理も行き届いていない。エイジの亜空間収納庫の方が、入っている物は少ないとはいえ、よっぽど整頓されている。
因みにそこで。自身の戦闘力拡充のため、とエイジはベリアルに提案をする。許可を取り、納められていた武器を拝借したのだが。百を超える本数を一気に持って行きやがった。これにはベリアルも、とても渋い顔をしていた。
そして、最後に向かった先は__
「お前の書斎となる部屋だ」
「書斎ですか⁉︎ って事はオレの、宰相の仕事部屋ってことか……よっし、俄然やる気上がってきましたよ!」
「そうか、それはなにより。ではエイジよ、ここがお前の仕事部屋だ!」
五階の、或る大きめの扉の前でベリアルは立ち止まる。そして__
「いざオープン!」
促されたエイジは勢いよく扉を開く。だが__
「……ってあれ? 何も無いような……」
開けて中を見るなり呆然とする。書斎と言われたが、本棚も机も何もない。カーペットさえ無ければ、照明さえなく、あろうことか床には埃が薄ら積もっていた。何の変哲もない、ちょっと大きめの空き部屋に過ぎなかった。
「うむ、見ての通りなんも無い‼︎」
「ええ〜……」
明らかに落胆してしまった様子のエイジ。みるみるうちに、やる気が消沈していく。
「ええ〜、じゃない! 自分の思い通りに改造できるという意味ではいいだろう!」
「そりゃそうですけど……仕方ない、まずは食堂から机と椅子を借りよう。どうせ誰も使わないでしょ……」
「うむ。少しずつ整えていけばいいだろう」
エイジは改めて見渡して、レイアウトを想像。顎を指で摩り、数度頷く。
「案内は、もう終わりだ。この城は、あまり施設が豊富というわけでもないからな。ではエイジよ、この執務室を整えるか?」
「……ですが、その前に。魔王様、オレはもう、宰相ってことでいいんですよね?」
「ああ、無論だ。先程剣を渡しただろう?」
それならば、もう安心だ。今まで考えてきた改革案、それを遂に、大手を振って実行できる。
「じゃ、早速仕事したいんですけど」
「おお、やる気だな。やりたいことがあるならば申してみよ!」
__よし、漸くできるぞ。ではまず、ずっと気になっていたことから__
「じゃあ…………トイレ!!!」
「………?」




