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新聞もなかった

「そういえば、ちょっと聞いていいか?」


 それは、アイバーンからの何気ない質問からだった。


「なんだ?」

「ケンタの前の召喚者って何年くらい前だったんだ? 俺は覚えが無いから少なくとも二十年以上前だろ?」


 そういえば、言い忘れていたけどアイバーンの年齢は俺より二つ上の二十三歳。


 あ、ワタクシこの度、一つ歳をとり二十一歳になりました。


 まあ、レオンが産まれるくらいだからな。


 ノンビリ暮らしてると、時が経つのが早いわ。


 おっと、それよりアイバーンの質問だったな。


「あー、何年前だったかな? 五十年よりも前だったはずだけど、正確に何年前とか覚えてないわ」

「ああ、別に正確に知りたかったわけじゃないんだよ。ただ、お前が召喚されてから今年で三年……いや、もう四年か。その短い間で召喚出来るなら、世の中にはもっと召喚者がいてもいいのに、そういやいないなって思ったから」


 それを聞いた瞬間、俺は心底驚いた。


「……アイバーンのくせに、なんて鋭い指摘……」

「それはさすがに酷くない?」


 それはともかく、アイバーンの指摘は俺自身ハッとさせられるものだった。


「俺はリンドアの城にある書庫で過去の召喚者の文献を読んだだけだったから、召喚にどれだけのインターバルが必要なのかとか考えたことなかった。言われてみればこの短期間で再召喚できるならもっと召喚者がいてもおかしくないよな」

「だろ? それなのに、今この世界には召喚者はお前とアドモスにいる二人しかいない」

「リンドアの王族はクソだったからな。これだけ短期間で召喚できるなら召喚者で部隊を作ってもおかしくないのに……なんでだ?」


 あの強欲な国の王族がそこだけ自重した?


 まさかな。


 ということは……。


「なにか、召喚できない理由があった?」

「期間じゃないよな。でないと、今回召喚できてるのがおかしいことになる」

「だよな。じゃあ、なんだ?」


 俺とアイバーンで顔を突き合わせて考えてみるけど、なんも思い浮かばず俺は白旗をあげた。


「さっぱり分からん」


 諦めた俺を見て、アイバーンは苦笑した。


「まあ、俺らでいくら考えてもしょうがないか。もしなにかしらの弊害があるなら、それはリンドアで起こるんだろうしな」


 おっと、アイバーンの奴、別の国だからって簡単にリンドアを見捨てたぞ?


 なんか、段々俺の考え方に染まってきてない?


「そういえば、お前が情報を持ち帰ってこないのって珍しいな。なんか面白い話ないの?」


 俺がそう言うと、アイバーンは嫌そうに顔を顰めた。


「だから、俺は情報屋じゃないっての」

「じゃあ、新聞屋」

「しんぶん?」

「あ、この世界には新聞ってないのか?」

「なんだその、しんぶんって」

「ああ。その日に起こった事件とか出来事を記事にして紙にまとめてそれを売るんだよ。そうしたら民衆が色んなことを知れるだろ?」


 俺が新聞について説明すると、アイバーンは「ああ」と言って首を横に振った。


「この世界の為政者がそんなことを許すとは思えないな。民衆には余計な知識は与えないってのが奴らの方針だから」

「マジで腐ってんなこの世界」


 この世界の情報は一部の為政者たちがコントロールしている。


 そうすると、為政者が発表したことは、嘘でも民衆にとっては真実になる。


「だからいつまで経っても俺の指名手配が解除されないんだな」

「……いや、それはお前の行いだと思うぞ?」

「なんでだよ」


 俺はこの世界でこんなにも静かに生きているのに?


 周りが勝手に騒いでるだけだろ。


「あ、そういえば、魔族はどうしてんだ? あれ以来大人しいけど」


 人族が召喚者を呼ぶ理由は魔族国に攻め入るため。


 前回召喚された俺は、奴らの嘘に騙されて魔族国の王を討ち取った。


 今回また召喚者が呼ばれたとなれば、また魔族国に攻め入ってくるのでは? と疑心暗鬼になっていてもおかしくないし、魔族国に討ち入られる前に召喚者を処しに行っても不思議じゃない。


「あー、どうなんだろうな。そこまでは把握してないな」

「じゃあ、今度町に行ったときに探ってきてくれよ。もしかしたら、召喚者を処すためにアドモスに攻め入るかもしれないだろ?」


 俺がそう言うと、アイバーンは「おっ」となにかに驚いていた。


「なんだよ?」

「いや、お前がアドモスや召喚者の心配をするとは思わなかったから」

「は?」


 いやいや、なに言ってんのアイバーン君。


「違えよ。魔族がアドモスに攻め入ったら召喚者たちが出てくるだろ? そうしたら実戦経験積んじゃうじゃん。そうなったら面倒臭いなって思っただけ」


 そう言ったら、アイバーンはガックリと肩を落とした。


「やっぱ、ケンタはケンタだったわ」


 ? なに言ってんだ?


「当たり前だろ?」


 俺が俺じゃなかったらなんだっていうんだ。


「はぁ、まあいいや。とにかく、今度魔族国の動きについても調べてくる」

「おう、よろしく」


 やっぱコイツ、情報屋の才能あるわ。


 新聞書かせて売ったら設けられそうじゃね?


 今度書かせようかな。


カクヨムにて先行投稿しています

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― 新着の感想 ―
いっそ悪の国から助けた方が めんどく下がるからダメかw
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