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無敵探偵活劇 アケチ大戦争  作者: anurito
玉村一族編
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私有の要塞

 翌日の昼間、アケチ探偵は、善太郎に案内してもらって、広大な玉村邸の敷地内を見物していた。

 アケチは、助手のコバヤシ青年も連れている。善太郎の方も、息子の二郎を補佐にして、自分の横を歩かせているのだ。

 とにかく、玉村家の本宅の敷地は広かった。主要となる本邸だけでも、何十もの部屋を持つ、巨大な洋館だったと言うのに、その周囲を包むように、いくつもの別の建物も林立していたのだ。あの時計塔も、そうした建築物の一つに過ぎなかった。他にも、駐車場やら倉庫やら、様々な用途の建物が、所狭しと並んでいたのである。

 それらの建築物が建っていない土地は、通路や移動ルートとして活用されていて、敷地内には、いっさい、無駄や遊びはなかった。たまたま、大きく開けていた地面があったとしても、そこは広場のままで放置されており、木々や緑を植えるなどの工夫は何も加えられていなかったのである。

 このような多数の建築物ばかりが立ち並んだ景観は、ちょっとした町並みのようでもあった。

 そして、よけいな草むらや木々などがなかったからこそ、この敷地内の屋外では、一時的に隠れられる場所はどこにも無かったのであり、警備の人間も、この敷地内をラクに見張ったり、部外者の事も探しやすい野外の造りとなっていたのである。

 さらには、この広い敷地の四方が、全て、高いコンクリート塀によって守られていた。ここは一族だけの小規模な独立国家なのであり、外の俗世界からは完全に切り離されているのだ。この玉村家の王宮に入るには、この敷地の正面にある巨大な門をくぐる以外にないのであった。

「正面門は、厚さ30センチはある鋼鉄製だ。ちょっとやそっとの攻撃では叩き破る事はできんよ。しかも、門番も常駐している。いかに相手が神出鬼没の凶賊だろうと、この門を正面突破する事だけはできまい」家主の善太郎が、自慢げに説明した。

 アケチにせよ、コバヤシにせよ、感心させられてばかりなのである。

「でしたら、塀をよじ登って、侵入してくる可能性が高そうですね。だって、こんなに敷地が広いんですから、それを取り囲んでいる塀の全てを見張る事もできませんものね」コバヤシが、何気なく、口にした。

「いいや。そんな事をする賊も居るはずがないのだよ」と、善太郎。

「なぜです?」

「この塀は、どこも、高さ5メートルはある。普通にジャンプだけでは、飛び越す事は無理だろう。しかし、塀を這い上って通過するにしても、この塀の頂上の部分には、実は、電流を流しているのだ。それを知らない奴は、思いきり感電するまでだ。恐らくは、ただでは済むまい」

 アケチもコバヤシも、呆気にとられながら、善太郎の話を聞いていたのだった。

「なんて厳重な。まるで、要塞ですね」思わず、コバヤシが呟いた。

「以前は、塀の上には、ガラスの破片を散りばめていたんだ。でも、常時、うちの防犯設備は強化していて、こないだ、最先端の技術の、電流を流すシステムにと変更したのさ」二郎も、得意そうに、補足した。

 全く、金持ちならではの贅沢な防犯装置なのである。

「おかげで、この屋敷には、泥棒が入った試しがない。暗黒星とやらも、これらの鉄壁なガードぶりを知ったら、尻尾を巻いて逃げ出すんじゃないのかな」善太郎がふてぶてしく笑った。

「さあて、それは、どうでしょうね。相手は、名うての犯罪のエキスパートたちですよ。これだけの防犯システムを見たら、逆に、闘志を燃やしちゃうかもしれませんよ」アケチが、さりげなく、釘を刺したのだった。

 すると、善太郎も、少しムッとした表情になったのである。

 さて、アケチ探偵が一番気になっていた建物は、やはり、あの時計塔だった。彼は、昨夜、目にした鬼火の事が、まだ気に掛かっていたのである。

 だから、アケチとコバヤシの二人は、最後は、時計塔の前まで案内してもらった。彼らは、ちょっと、この時計塔を上ってみる事にしたのである。二郎が塔内のガイドをかって出てくれた。老齢である善太郎の方は、一緒に上るのは遠慮して、塔の下にと残った。

 時計塔の下の部分は、本当に、ただの塔であった。5階まで各階に広いスペースの部屋があるのだが、それらは空き部屋で、何も置かれていなかったのだ。最上階に上るまでの階段の途中にある、ちょっと広めの踊り場みたいな感じだったのである。

 そもそも、この塔は、屋上に設置した時計の文字盤を、少しでも高い場所に置いて、皆に見せびらかす為のものだったのだ。なので、その下の階は、ついでに新築した土台の部分に過ぎなかったので、それらの階を積極的に活用する気はなかったのである。そして、上階の文字盤の部屋に床面積を合わせたものだから、下の各階も、空き部屋ながらも、広いスペースになってしまったみたいなのであった。

「この時計塔は、我が家の自慢の別館なんだ。5階まで上がれば、周囲の塀よりも高いから、我が家の敷地外だって見渡せるんだ」階段を上りながら、得意げに、二郎が説明した。

 そして、確かに、次郎の言う通りだったのである。

 アケチたち三人は、時計塔の5階にまで到達した。その部屋にあった小窓から外を見下ろすと、玉村家の敷地内だけではなく、その外部に広がる景色もくまなく見物できたのだった。と言う事は、逆に、玉村家の敷地の外の、コンクリート塀の向こう側からでも、この時計塔の上階だけは、しっかり観察できたと言う事になる。

 この5階の上に、さらに巨大時計を動かしている機械室がある訳なのだが、ひとまず、アケチは、探検は、この階までで止めておく事にした。実は、この5階の窓からは、本邸の書斎の窓も見えたからである。つまり、昨日の鬼火は、恐らく、時計塔のこの辺で光っていたらしいのだ。

「さあ、コバヤシくん。君はどう思う?この場所で、何が光っていたと推理する?」アケチが、試すように、コバヤシに訊いてみた。

「考えられる自然現象としては、まず、リンですね。人魂の正体も、リンだと言われていますし」と、コバヤシ。

「でも、こうして現場に来てみたら、リンらしきものは見つからなかったね。じゃあ、リンの可能性はない。さて、では、次に考えられるのは何だと思う?」可笑しそうに、アケチがコバヤシに尋ねた。

 二人は、こうやって、推理力を鍛えるトレーニングも行なっていたのである。

「それなら、放電現象でしょうか。このへんの高度では、静電気が溜まりやすく、時々、不規則に発光するのかもしれません」

「残念。それも可能性は低いだろうな。君も、この時計塔の全景は、さっき、よく見ただろう?最上階の時計の部屋の上には、落雷よけの太い避雷針がついていた。この時計塔の周りに、自然に帯電する見込みは少ないだろうな」

「ああ、そうか」と、コバヤシも苦笑いした。

 名探偵のアケチの前では、優秀な助手のコバヤシ青年も、まるで子供扱いなのである。

 そんな二人のそばに、二郎が近づいて来た。

「何だい。もしかして、鬼火の話をしているのかな」二郎は言った。

「ええ。実は、僕も、昨日、見ちゃったんですよ。その鬼火とやらをね。二郎さんも、鬼火、見た事があるんですか?」アケチが微笑みながら、軽く尋ねてみた。

「まあ、何度かね。言っとくけど、この時計塔はね、幽霊塔と呼ばれていて、けっこう近所じゃ有名なんだよ。鬼火だって現われるさ。さすがのアケチ探偵も、お化けには敵わないのかな」

「いえ。実は、お化けじゃないかもしれませんしね。誰かのイタズラという線も、まだ捨てがたいし」

「とんでもない!こんな気味悪い場所に、真夜中、わざわざ上るような奴はいないでしょ」

 二郎は、明るく笑い飛ばしたのだった。

「なあ、アケチさん。オヤジたちと違ってさ、俺は、あんたの事、とても高く買ってるんだぜ。悪者を退治してくれるんだったら、俺も、何でも協力するからさ、いくらでも声を掛けてくれよな」二郎は、馴れ馴れしく、アケチの肩を叩いた。

 この二郎青年、なかなか、頼もしそうな若者なのである。

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