表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
悪役令嬢の双子の兄に転生したので、妹を全力で守って恋を応援します!《旧版》  作者: 桃木壱子


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

79/186

2章・11配役決め 1

 そして迎えた体育祭という名のダンス大会。

 正直なところ、元運動部のあたしからしたら、けっ、どこが体育祭だよって言いたいところだったんだけど、これが予想外に大盛り上がりだった。


 当初は舞踏会の優雅なダンスをみんなで楽しむのかと思っていた。ところが、大会と銘打っているだけあって完全な競技会だった。

 基本的にはクラス対抗戦なんだけど、学年でトップスリーに入ると別枠の全学生対決にも出場できる。そこで優勝すると、ベストカップル賞を貰えるんだそうだ。一応優勝記念商品もあって、それは高級料亭ご招待券なんだそうだ。


 高級とはいえ貴族がもらって喜ぶのかなと不思議だったんだけど、なんとそれは完全個室のお店だそうで、そこにペアで行けば全学生公認カップル、と認識されるらしい。

 …これは乙女ゲームの影響なのかな?


 で。なんと、この個人戦で見事にミリアム・アルペアが優勝したのだよ。

 ベストカップル賞だ!やったね!


 これに一番喜んでいたのは、確実にあたしだ。ウォルフには、お前が優勝したんじゃないだろうがと突っ込まれた。でもそんなことはどうでもいい。

 アルにはわりとツンしかないミリアムが、表彰式で嬉しそうにはにかむ笑顔をしたんだ!それだけであたしは眼福。

 しかもこれで全学生公認!余程の常識知らずしかアルに近づく女の子はいないだろう。

 隅でマリアンナが悔しそうな顔をしていたのは見なかったことにして、と。


 しかし。

 喜びまわるあたしにミリアムは言った。アルと食事になんて行かないわ、と。


 なんで!?え、なんで!?


 アルが王子様だから、民間のお店に行くには準備が大変だと気にしてるのかと思ったけど、そういう理由でもなく。

 単なるツンなのかといえば、それも違う。

 ただただアルに、レティと二人で行ってきてとお願いするミリアムに、アルもあたしも困ってしまった。


 結局巡りめぐって、レティとジョーが行くことになった。

 ミリアムもあたしも、実はアルも、二人にはベストカップルになってもらいたいと思っているから、これで良かったのかな。

 でもどうしてミリアムがそんなに嫌がったのか。あたしには分からないままだった。




 ◇◇



 行事が目白押しの二学期。

 体育祭が終わって一段落ついたと思ったら、文化祭の準備が始まった。

 やはりゲーム通り、一組は劇。定番中の定番『ロミオとジュリエット』だ。


 ゲームの中ではもちろんジュリエットはマリアンナ。ミニゲームに勝てると劇は大成功、攻略対象の好感度があがり、しかも額にキスが貰えるご褒美付き。


 さてさて現実では。

 キャストは無記名投票で決めた。そして、ロミオはアル。ジュリエットはミリアムに決まった!

 そりゃなんていったって、ベストカップル賞の二人ですからね!みんな納得の人選だよね。

 …だけど。


 開票中からうつむいて震えていたミリアム。決まった途端に、辞退させてくださいと叫んで机に伏した。

 レティとあたしはミリアムに駆け寄った。


「どうしたの、ミリアム?何が嫌なの?」

 あたしの問いかけにミリアムは頭を左右に振るばかり。

 アルもやって来た。

「…僕とやるのが嫌なのかい?」

 またミリアムはイヤイヤするかのように頭を振る。


 あたしは体育祭でのミリアムを思い出した。

 どうして大好きなはずのアルと一緒にやることを嫌がるのだろう。恥ずかしい、って感じには見えない。


 他の女の子たちも集まってきた。みんな仲良くしている子たちだ。

 そうだ。最近毎日が楽しくて忘れていたけど、ミリアムはずっと他人が怖かったんだ。だから舞台に上がるのが怖いのかな。


「ねえ、ミリアム」とレティはミリアムの頭を優しく撫でた。「無理をすることはないわ。あなたは本当はとても人見知りの怖がりさんですものね。でもこれだけ沢山の人があなたに票を入れてくれたのよ。せめてちゃんとみなさんのお顔を見て、お断りしましょうよ」


 ミリアムは伏せたまま、こくりと頷いた。

 そうしてみんなが見守る中、ゆっくりと顔をあげた。真っ赤で泣き出しそうな表情だ。

「…ミリアム」

 あたしは彼女の手を握りしめた。

 ミリアムは立ち上がると、クラスのみんなの顔をぐるりと見回した。

「わたしに投票してくださって、ありがとう。お気持ちはとても嬉しいわ。でも、今のわたしには沢山の人に見られる舞台に立てる勇気がありません。どうか辞退させてください」


「では」と一人の女の子が優しい笑顔で声をあげた。「こういうのはどうかしら。舞台に上がるものの辞退はこれ一回だけ。今回は初めてのことだし、ミリアムは文化祭の見学に来たこともないものね。今回はお勉強期間にして、次に選ばれたときは、引き受けるの」

 それはいいわね、と女子たちが賛成してくれる。


 賛成の人、とウォルフが声をかけると拍手が沸き上がった。

 ミリアムは真っ赤な顔でありがとうと言って座り、あたしにはもう大丈夫と微笑んだ。

 そういえば最近ミリアムの手を握っていなかったな、と思いながら手を放し、黒板の前に戻った。あたしはクラス委員としてウォルフと配役決めの進行をしているのだ。

 席を離れていた女子たちも着席する。


「そうなるとジュリエットは…」

 とウォルフ。みんなの視線がレティへ向く。次点は彼女だ。

 さっきまで優雅だったレティが、急に慌てはじめた。

「わたくしは嫌ですわよ。兄と恋人を演じるなんておかしいですわ」


 そうだよね、とざわめきが広がる。

「じゃあ」とアル。「僕が辞退しよう」

 ロミオの次点はジョーだ。レティが頭が沸騰したのかと思うほど真っ赤になる。

「いや、危険か?」とアル。「ただのノロケ劇になってしまうな」

 だよね、とクラスメイト。


「仕方ない、立候補にするか」とウォルフ。

 途端にはいっと手があがる。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ