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悪役令嬢の双子の兄に転生したので、妹を全力で守って恋を応援します!《旧版》  作者: 桃木壱子


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2章・最終話 フェヴリエ・パーティー 2

 宴が終わり、外は橙色に染まりつつある。

 ミリアム、アル、レティ、ジョーの四人はすでに下校して王宮へ向かった。このまま内輪でお祝いするのだ。

 だけど委員であるあたしはお仕事。三日間のパーティーの主催者は学校で、設営撤収はすべて外部に委託してあるのだけど、あたしたちは撤収の監督を任されていた。その時間教師たちは、学内の見回りなんだそうだ。稀に素行がよろしくない生徒が空き教室なんかで隠れて遊んでいることがあるらしい。



 前世の記憶を取り戻してからというもの、最も恐れていた日を無事に乗りきって、あたしはすっかり安心していた。


 マリアンナも捨て台詞は吐いていたけれど、さすがに覚悟はしていただろう。この先暴挙に出るとは思えない。なにしろ彼女は王家(かその周辺)に雇われていて、何か過ちを犯せば死罪と通告されているのだ。


 それに例え何か予期せぬことが起こったとしても、ミリアムやレティが断罪されるような状況にはない。あたしたちには助けてくれる友達がたくさんいる。


 ようやく七年も抱えていた不安がなくなったのだ。


 肩の荷が降りたうえに、ミリアムとアルのダンスに気をよくしていたあたしは、作業中にケガをした業者を医務室に案内までしてあげた。

 途中でひとり行動をしていることに気づいたけれど、すべて終わったのだから問題なかろうとたかをくくっていた。


 医務室にキンバリー先生は不在だったけれど部屋の前に出された卓に、緊急用の薬や包帯、湿布などが数種類用意されていた。

 そういえばはりきりすぎて、ダンスで足をくじく生徒が毎回いると話していたっけ。


 あたしは傷薬とガーゼで、マリアンナがケガをしたときの見よう見まねで作業員に処置をした。

 頭を何度も下げて感謝する作業員と別れ、なんだかいっぱしの看護師みたいとひとり悦に入っていたら、物陰に人がいることに気がついた。


「誰?」

 問いかけに、影から出て来たのはバロック家の妹だった。黄昏時の廊下は、彼女の表情を隠している。

「えーと、ぺルラ?だっけ?」

「ぺルル」

 声音は不機嫌だ。

「どうしたの?もう一般生徒は下校していないと怒られるよ」

「ぺルラを待っているの。今、校長と話しているから。とても優秀なのに、政務庁のどこにも入れなかったのよ。なんとかしろって頼んでいるところ」


 確か兄の方は二歳年上だったはずだから、一昨日卒業したのだろう。就職を希望して叶わないのは辛いだろう。

 気の毒だけど、なんでかな、言い方に刺がある。


「あなたの差し金でしょ。本当、イヤなヤツ」

 吐き捨てるような言い種に首をかしげた。

 マリアンナの次は彼女か。まったく何を言っているのかわからないけれど、これはウォルフガングが攻略対象的扱いになっていての展開なのだろうか。

「何か言いなさいよ。卑怯もの」

「いや、言っている意味がわからないよ。なんで僕が君の兄上の就職を邪魔するんだ」

「わざとらしい。全部あなたがやらせたのでしょう?お父様の失脚も、おかしなスキャンダルを暴いたのも」


 どうやらバロック家の不幸をあたしのせいにしたいようだ。

「だから、なんで僕がそんなことをするんだ」

 そういえば。文化祭のあれを見られたのだろうか。だから逆恨みをしているとか。


「ごまかさないでよ!私がボールを投げたせいで強盗にあったって、逆恨みをしてるのはあなたでしょ!」

「ああ」

 そんなこともあったっけ。

「あれは僕が見知らぬ場所でひとりで行動したのが悪かったって思っているよ。だいたい君が僕のボールを投げたことなんて、誰にも話していない。そんなことがフェルディナンドの耳に入ったら君がただじゃ済まないからね」


 なにしろ超絶過保護の兄だから。あたしがそんな意地悪をされて、それがきっかけで強盗にあったなんて知ったらどんな報復をするかわかったものじゃない。


「白々しい!あなたなんて…。あなたなんて…。ウォルフガングだって、あなたが宰相の子供だから仕方なく付き合っているんだから!」

 これはまたマリアンナと同レベルで嫌な子だなあ。

「それはウォルフガングを侮辱しているのと同じだってわからないかな?ウォルフガングは自分の意思で僕と友達なんだよ」

「なによっ!偉そうに!あなたなんて…あなたなんて、呪われているくせにっ!!」


「ずいぶん新しい悪口だね」

「ばっかじゃないの!知らないのはあなただけよ!みんな知ってるわよ、あなたが呪いをかけられていることなんて!だからみんなあなたに優しいんじゃない!そんなことも知らないで大きな顔をして、恥ずかしいヤツ!さっさと呪いで死んじゃいなさいよ!気持ち悪いから!」


 …。

 投げつけられた言葉を砕き飲み込む。


 呪われている?

 あたしが?

 みんな知っている?

 だから優しい?

 死んでしまう?



「なんであなたの家族や王子たちが異常に過保護か考えたことないの?全部あなたが呪われているからじゃない!!何も知らないで愚かね!!




 さっさと消えてなくなれ!!」





 激しく早いバスドラムの音が聞こえる。

 あまりに近いから身体に響く。

 誰だ、軽音楽部か、うるさいよ、

 考えがまとまらない、

 呪いってなんだ、

 だって呪い(まじない)魔法なんてとっくに廃れて

 使える人間なんていないよね?

 この子は何を言っているの?




「ぺルル?」

 男がひとりやってきて、バロック妹に近寄りあたしを見る。

「疫病神か。妹に近寄らないでくれ。さあ行こう」



 二人が去る。



 そうか。

 これはバスドラムじゃない。

 あたしの心臓の音だ。


 手を胸におく。


 あたしの周りの人たちはみんな、過保護だ。

 子供の頃は外出を制限され、お茶会もできなかった。

 学校でひとりになったことはない。

 そうだ、マリアンナと対峙したとき。ミリアムやアルだけじゃなくて、クラス中の友達が血相をかえて探してくれていた。てっきりマリアンナとのことを心配してだと思っていたけれど、それにしても大袈裟だと感じていた。

 あれは?

 あれもみんな、あたしの呪いを心配していたから?






 時々ミリアムが悲しい目をしてあたしを見るのは、どうして?






 目を閉じて深呼吸をする。


 今日はフェヴリエ・パーティー。

 みんな楽しんで終わった。

 ミリアム、アル、ジョー、レティはきっとまだ弾んだ気持ちで、あたしを待っている。


 呪いの話が本当だとしても、きっと今すぐに何かが起こることではないだろう。

 それなら。

 あたしが今すぐ騒ぎ立てて、みんなのフェヴリエ・パーティーを台無しにしたくない。

 今日はせっかくミリアムとアルが楽しそうに踊ったのだから。




「ヴィー!そこにいるのか?」


 その声にはっとして振り替える。暗がりの中からこちらに歩いてくるのはウォルフだ。黒い衣装は影のようで、でも赤い髪とスカーフは灯された明かりみたいだ。

 バロック妹の話が本当ならば、ウォルフも知っているということだ。


「…ここにいるよ」

「どうした、大丈夫か?」


『大丈夫か?』

 あたしには当たり前になってしまっていたけれど、きっとこの一言だって過保護なのだ。


「うん。なんだか急に疲れちゃった」

 へへっと笑う。

 ちゃんとできているかな?

 怪しまれないかな?


「今日は長い1日だったからな」とウォルフ。「講堂に集合だって。伝達事項の連絡で、あとは解散」

「了解」

 二人で連れだって講堂に戻る。


 ウォルフとはこれでさよならだ。あたしはアルたちと王宮に集まるけれど、ウォルフは昔ながらの友達たちとブラン家に集まる。


 そのことに安堵する。

 ウォルフは察しがいい。

 今はごまかせているけれど、長く一緒にいたらあたしが不安でいっぱいだと気づかれてしまう。




 今日は楽しく終わりたい。

 そう。楽しく…


念のため…

ぺルル登場回→1章・8危機 1・2


すみません、明日は22時のみです。

代わりに、土曜日は23時にもアップします。


本編が辛気くさいので…

☆おまけ・その頃の友人☆


学園のパーティーが終わり、打ち上げのために王宮へやってきた。といってもいつものメンバーで、場所もアルの私室。いつもと違うのはみんな、気合いが入った格好をしていることぐらいだ。

普段可愛いレティは、胸元が開いたドレスと結い上げた髪型のおかげでよく見えるうなじが大人っぽい。

いや本当に、レティが俺と同じ学年で入学をしてくれてよかった。口に出しては言えないが、これはヴィーのおかげだ。感謝しきれないぜ。

到着したばかり、まだ椅子に座ってもいないのにレティの侍女がやって来て、ミリアムに挨拶もそこそこ褒めそびやかしている。アルまでちゃっかり加わっているし。

これはチャンスだ。

俺はレティを手招きして呼んだ。

「なにかしら?」

「見ろよ」と窓の外を示す。「夕陽がきれいだ」

嘘は言ってない。事実だ。レティも感嘆している。

「バルコニーから見よう」

俺は彼女をバルコニーに連れ出した。やった、大成功。二人きりだ。

「本当にきれいね」

と言うレティの横顔のほうがよっぽど綺麗だ。その腰にそっと手を回すと、レティは大きくはねあがったけれど逃げなかった。これはいかにも婚約者同士って感じじゃないか。

気をよくした俺は、次はキスだと意気込んだのだが。

「いってえ!!」

レティに回した手の甲が、つねりあげられた。

振り替えるとレティの侍女が鬼の形相で俺の手をつねっている。

目が合うとぱっと離して、彼女はレティを抱き寄せた。

「こんなところ!お体が冷えてしまいます!」

と室内へ向かう。くそっ、またあいつだ!クビにしてやりたい!

侍女が硝子戸をしめる寸前。振り返ったレティが真っ赤な顔でにこりと微笑んだ。

…まあいいか。一瞬だけでも幸せだった。

俺も室内に入ろうとして。扉に鍵がかけられていることに気づいた。

侍女のくせに!やっぱりクビにしてやりたい!



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