プロローグ 『教え』
「……終わってくれ」
火を纏う拳が目に映った。
3日前、火眼は父の火煙と拳のトレーニングをしていた。
「そうだ、その調子だ。やっぱりお前は俺の血が流れているから才能があるな」
火煙は火眼の頭を撫でながら、自慢げに言った。
「本当に! 僕もお父さんみたいに強くなれる?」
「勿論。しっかり鍛えて、守るべきものを間違えなければな」
「守るべきもの?」
「たった一つ守るべきもののために戦う、それが全員に共通した最も強くいれる原動力なんだ」
「原動力?」
火眼は先ほどと同様、首を傾げた。
「まだ早かったか、色々と」
火煙は肩をすくめ、苦笑いを浮かべていた。
火煙とのトレーニングが終わると、今度は母の姫火に大事な話があると呼び出された。
「火眼、お父さんの話はいずれ分かればいいからね」
姫火は火眼の頭を撫でながら、寂しげに言った。
「うん、でも早く分かるようになりたいな。お父さんに追いつきたいから」
火眼は強く握った拳を見た。すると、姫火は火眼の拳を握りしめた。
「そのためにも、渡したいものがあるの」
「何?」
「それはね……」
「――っ!」
姫火は泣きながら、火眼にキスをした。
「えっと、どうして?」
「いきなり、ごめんね。本当に、ごめんね。……ごめんなさい」
戸惑う火眼を今度は抱きしめ、何度も何度も謝っていた。
その3日後、姫火は終わった。
その時、火眼の目には火と拳が見えた。
その後のことはあまり覚えていなかったが、泣いていたこととこの言葉だけが脳裏に焼き付いていた。
「強くなれ、頂点で待ってる。きっと必ず会えるから」




