09話 訓練 始まり
6日、育成高校訓練グランド。生徒たちは指定されているジャージを着こみ、整列した状態で地面へじかに座っている。そんな生徒たちの前に花蓮が立ち説明をしていた。
「・・・と言う訳で、今回持ってきた者たちと私が用意した汎用性のアーム5つを使い説明していく」
花蓮は生徒たちを見渡しアームの有無を確認して、持って居る者たちを立たせ前へと呼ぶ。真人と馨も前へと出てくる。
「まず貴様らは自分のアームが汎用型か特化型か分かっているか?」
真人たちは頷く。それを確認した花蓮は汎用型と特化型を分ける。すると真人と馨以外の生徒たちは汎用型であった。
「ふむ、特化型の2人は使い始めてどれくらいだ?」
すると真人と馨は顔を見合わせ、視線を飛鳥へと向ける。飛鳥は真人たちが話しても良いのか聞いていると思い頷く。
「1時間」
真人が短く答えると花蓮が一瞬目を細めた。
「ほぉ~水樹、貴様もか?」
花蓮の問いかけに馨は頷き
「はい。1時間です」
すると花蓮は腕を組み考え込み目を瞑る。しばらくして目を開くと
「なら、お前たちは後回しだ。それでは汎用型の貴様ら放出系を扱えるものは居るか?」
4人の汎用型を持つ生徒全員が手を上げる。
「・・・全員か、まぁ良いだろう」
花蓮は指をパチンと弾き指さすと、その先に先ほどまで存在しなかった的が4つせり出す。
「アレに向けて放出スキルを使ってみろ」
「「「はい」」」
4人は各的に対する位置まで移動して、一番左端に居た男子生徒が
「猛る炎よ! 全てを焼き付ける炎よ! 燃え上がれ! 【ファイア】」
すると的を中心に赤く燃え上がる。男子生徒は振り返り長い髪をたくし上げにやけて歯を見せる。続いて隣にいた女生徒がそれを鼻で笑い。
「火よ! 炎よ! 燃え上がり! 槍となりて! 敵を貫け! 【ファイアランス】」
両手を掲げ女生徒が叫ぶと女生徒の頭上に炎で出来た赤い槍が生まれ、女生徒が両手を振り下ろすと的へ向け飛んでゆき、的の右端を貫き爆ぜた。女性とは的に当るまで先ほどの男子生徒に向け優越に浸っていたのだが、的の端に当たると今度は男子生徒ににやつかれ悔しさに顔を歪めた。言い争いに発展しようかと言うその時、それを見た花蓮がため息をつき男子生徒と女子生徒に向け注意の言葉を口にした。
「2人ともそれくらいにしろ、今日の授業は競う者ではない。アームとはどういった物かの説明と貴様らの実力を見る物だ」
2人の生徒はシュンとして謝罪を口にし、それが2人同時であったので顔を見合わせ互いに反対方向へ首を向ける。他の2人の生徒は2人とも【ファイアアロー】を使い的を撃つ。花蓮は終わったのを確認すると4人をその場で座らせ
「とまぁ放出系で有名な【火術】のスキルを使ったわけなんだが、他にも【水術】【風術】【土術】の基本4属性のスキルが有り、その他に2属性異常を合成したスキルや上位スキルの【光術】【闇術】が有名だな」
花蓮は確認するように生徒たちを見渡す。全員が理解していることを感じ、更に説明していく。
「それとは対照的に自分自身の肉体を強化する【強化術】と呼ばれるスキルが有る。これも理解しているな?」
生徒全員が頷く。
「そして、そのスキルの先に・・・」
花蓮の身体から【マインドエナジー】【ME】が立ちの上り、両足へと集まり形を成していく。光と共に形作られ、金属でできたブーツのような物が花蓮の足に生成された。生成されると同時に花蓮から感じるプレッシャーが膨れ上がる。皆この育成高校に入学できた聖都らしくその凄さを肌で感じ恐怖で顔を青くする。勿論ではあるが飛鳥だけは涼しい顔をしていた。
「これが【マインドアームズ】【MA】心の武器とも呼ばれる物だ。ここまでできて一人前となる訳だが、MAを使える者は実はそんなに多くない。MAの効果を機械的に作り出したものが【アーム】だ」
花蓮はそう言って汎用型を持つ生徒たちへと視線を送る。視線を見蹴られた生徒は小さく震え声にならない悲鳴を上げる。すると生徒の中から飛鳥が声を上げる。
「轟先生! そろそろMAを解除してはどうでしょうか?」
飛鳥に言われしまったと言った表情を見せブーツを霧散させ、生徒たちへと向き直り
「悪かったな。んでここまでは良いか?」
すると生徒たちは物凄い勢いで首を上下させる。花蓮は苦笑いを浮かべ
「まぁ、この2系統に属さない特殊系統が有るんだが、それは進級してからになるな」
それから花蓮は持ってきた5つのアームを生徒たちに順番に使わせアームを肌で感じさせる。
「全員アームに触ったな? どうだ使ってみて?」
花蓮に聞かれた生徒たちは自分のアームを持っていた者や飛鳥達を除き、生徒たちは全力で100mを走ったように肩で息をして疲れ切っていた。それを見て花蓮はその状態について説明する。
「貴様ら疲れたんじゃないか?」
花蓮は生徒たちが頷くのを確認すると
「MEってのは精神エネルギー、精神力とも言うし、それは自身の体力にも直結する」
花蓮の言葉に気が付いた生徒は顔を引きつらせ、気が付かないものは何のことか分からず、花蓮の次の言葉を待った。
「故に今週いっぱいは基礎体力作り、来週になっても実技の半分は体力づくりだと思え」
力なく生徒たちの返事を聞き花蓮は額を手で押さえた。
・・・・・・・・・・・・・・・
放課後となり、飛鳥達は飛鳥の家の地下室で自分のアームを使い感触を確かめていた。
「なぁ飛鳥、ただ使い慣れるだけでランク入りできんのか?」
真人の言葉に馨も手を止め飛鳥を見つめる。
「まずは、真人たちはアームに慣れることが必要」
飛鳥は言葉をそこで区切り、真人と馨の様子を見る。若干不安そうである。飛鳥はわずかに口端を釣り上げ
「まぁ、もちろんこれだけって訳じゃない。週末には【KAL】にある実験施設を使わせてもらう許可は得てるから。それに真人たちを指導してくれる教官もね」
飛鳥の言葉に希望を見出したのか真人は両手の拳を胸の前で合わせ
「っしゃっ!」
馨もまんざらでもない様子で顔をほころばせる。
「うぉぉぉぉ!!!」
嬉しさのあまり突然気勢を上げ地下室の壁際を走り出す。そんな真人目掛け馨は口端をニヤリと釣り上げ【ウォーターアロー】を放つ
「うぉっ! あぶね~っとほんとに危ね~ぞ!」
更に【ウォーターアロー】が撃ち込まれる
「ほらほら! アンタは避ける良い訓練になるでしょ!」
真人は【ウォーターアロー】を躱しながら
「お前は当てるっ練習ってか?」
「そうよ!」
今度は2つの【ウォーターアロー】が放たれ真人を襲う。
「舐めるな! はっ! せあっ!」
真人は両手にMEを集め【ウォーターアロー】を打ち抜き馨目掛け走り出す。
「ちょっ近づくな!」
今度は水の壁【ウォーターウォール】を生み出し真人へと押し寄せる。
「わっバカっ! きったね~ぞっ!」
真人は慌てて横へ飛びのく。寸でののとこで躱し真人は床を転がる。更にそこへ【ウォーターアロー】が襲う。真人は転がるように躱し立ち上がり
「てめ~! 俺を殺す気か!」
そんな中、紫苑が顔を出しクスクスと笑い出す。そんな笑い声が聞こえたのか恥ずかしさのあまり真人と馨は頬を赤く染めてれだす。
「それじゃあ、私も訓練しないとね。飛鳥君お願いできるかしら?」
飛鳥は頷き紫苑を見つめ
「準備は良い?」
紫苑は左手の薬指に収まったリング型のアームにそっと口づけをする。すると紫苑の身体から周囲にMEがあふれ出すと、紫苑は飛鳥へと顔を向け頷いた。
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