16.ゲーム戦士、戦争の危機に反旗を翻す。
――立海銃司の口から、生成AIによる核戦争の危機を聞かされた剣とキッド。
1st STAGEの制限時間が刻々と迫る中、立ち止まっている暇はない。二人は三つの電力源を断つべく、管理室を飛び出した。
「キッド先輩。アイツの話、マジだと思いますか? AIが核戦争なんて……」
移動中も、剣の頭からは銃司の言葉が離れない。どうしても探索に身が入らなかった。
「あの大魔王みたいな御曹司が、あんなに冷や汗をかいてたんだぜ? 悪魔より恐ろしい現実があるって証拠さ」
「じゃあ、WGCはその危機を知ってて……銃司はそこから情報を?」
「立海家はWGCと結託関係にある。それに、このゲームの開始時に社長が言ってた暗示とも合点がいく」
「……だとしても! なんでそんな大事なことを隠してたんですか!」
剣の動揺は収まらない。腕試しのつもりで挑んだイベントが、実は核戦争阻止のための極秘任務だったなど、夢にも思わなかったからだ。
対照的に、キッドは沈着冷静に周囲を警戒しながら言葉を紡ぐ。
「隠さなきゃ、事前に防げないと判断したんだろう。公表すればパニックが起きるし、政治や民衆が止められる段階も過ぎている。……今この瞬間にも起きようとしている脅威を、誰かが『力ずく』で止めるしかないと決断したのさ」
「それが……俺たち、ゲーム戦士の役割だってことですか?」
「恐らく。ゲームというフィールドなら、核を操るAIを直接叩き潰せる……そう踏んだんだろうな」
「……っ、くそっ!」
剣は頭を掻きむしった。託された責任の重さに、心臓が早鐘を打つ。だが、そのプレッシャーはやがて別の感情へと塗り替えられていった。
「……それって逆に言えば、俺たちにしか止められないってことですよね?」
「そうだな。確証はないが……やるしかない。剣、こんな理不尽なゲーム、まだ続けるか?」
キッドが覚悟を問いかけた瞬間、剣の瞳に鋭い光が宿った。迷っていた足が力強く地を蹴り、キッドを追い越すほどの勢いで加速する。
「俺、学校で戦争の勉強をした時にずっと思ってたんすよ。『お偉方が勝手に始めた戦争に、なんで関係ない人らが巻き込まれなあかんねん』って。――人の命をゴミみたいに扱いやがって……!」
(剣……!)
怒りに震えるその声を聞き、キッドは確信した。彼はもう迷っていない。
剣はスキャンブレスから一枚のカードを抜き取り、発動と共に音声が鳴り響く。
『ツールカード、【ボルテック・セイバー】!!』
◎――――――――――――――――――◎
<ツールカード>
【ボルテック・セイバー】EG:⑤
種別:ツール/武器
AP:300 PP:10
属性:黄 装備:プレイヤー
≪必殺技≫
『稲妻閃光斬』EG:④ AP:400
・切っ先に雷光を蓄積し、
円月の軌跡で周囲の敵を一掃する。
◎――――――――――――――――――◎
青龍刀のごとき湾曲した刃に、激しい電流が迸る。剣は《ファイティングブレード》との二刀流を構え、咆哮した。
「戦争仕掛けるドアホをこの手でしばき倒せんなら、本望や! このビッグゲーム、真っ向から受けて立ったるわぁぁああ!!」
爆発するアドレナリンに任せ、剣は施設内の壁に強烈なハイキックを叩き込んだ。轟音と共に壁が崩落する。
(いいぜ、その闘志! その反発心こそが、絶望を覆す鍵だ!)
キッドの口角が上がる。彼もまた、同じ怒りを抱えていた。
「よっしゃ、そうと決まればこの施設ごとブチ壊してやるか!」
――BANG!!
キッドが愛銃『ファイアーバード』で壁の亀裂を撃ち抜くと、崩れた瓦礫の向こう側に隠された空間が姿を現した。
「……待て、剣! あれは例の装置か?」
「えっ!?」
正規ルートを無視した破壊が功を奏したのか、そこには三つの電力源の一つ、発電装置が鎮座していた。
「すげえ! 剣といると『ラッキー』が舞い込むって噂、本当だったんだな」
「は? 何すかそれ、都市伝説っすか?」
「いや、ネット掲示板で有名だぞ。『桐山剣に出会ったプレイヤーは幸運度が上がる』ってな。関西じゃ有名なパワースポット扱いだ」
(だから大会の時、やたら握手を求められたんか……)
本人の知らないところで勝手に縁起物扱いされている事実に、剣は複雑な表情を浮かべる。
だが、感傷に浸る時間はなかった。目の前には、黒いモノリスのような形状をした発電装置が、不気味に電流の脈動を繰り返している。
「さっさと壊してまいましょう!」
剣が二刀流を構えて踏み込もうとした、その時――。
「――危ない、剣ッ!!」
キッドが剣の体を突き飛ばした。直後、暗闇から放たれた極太のレーザー光線が、剣がいた場所の空気を焼き切った。
部屋の照明が一段と明るくなり、襲撃者の姿が露わになる。
「キッド先輩、これは……!?」
「……タダで壊させてくれるほど、甘くはないか!」
そこに浮遊していたのは、巨大なクリスタルの中に複雑な電子回路を張り巡らせた、AI型防衛マシン『プロテクトQ』。発電装置を守るための非情なセキュリティシステムだ。
「……やってやるか、剣?」
「もちろんです! ゲーム戦士の底力、見せつけてやりましょう!」
剣とキッドのタッグバトルが再び幕を開ける。クリスタルAIを粉砕し、核戦争へのカウントダウンを止めろ!




