8 出立
ホウマの必死の説得により人間の町に降り、学校に入学することになったレンは、ホウマに誕生日を祝われるとすぐに旅立ちの準備を整え、近くで一番大きな町へと向かった。
町の名前は『王都シュヴァルツ』。シュヴァルツ王国の首都だ。人口は大体二十万二の大都市で、領地を持たないほう貴族が二十、その他の領地を持っているが王都で役職を与えられた貴族が四十ほどいる。
街の中央には真っ白の城が鎮座しており、大変美しい都市になっているという。
とりあえず行く場所に事前情報を持っているのといないのとではだいぶ違うので、ホウマはレンにある程度の事前知識を教え込む。
「行ってきます!」
最初は嫌がっていたレンだが、いざ旅をするとなると色々と楽しみなのか、わくわくしながら塒から出発する。
カナも同行しているが、街の中にはカナは入れないし、道中でも荷馬車や旅人がいた場合最悪魔物が変装していると言って討伐される可能性がある。
そのため、カナはレンを遠くから見守ることになっている。
とりあえず、レンはこの森から出て街道を探さなくてはならない。
今までさんざん森の中を駆け回ったレンだが、森の外には全く出ていなかった。
そのため、森の外の何処に街道があるかなんてわかるはずがなかった。
「ま、とりあえず歩くか。」
とりあえず考えるより先に動くことにしたらしく、森を抜けた先に広がる平原へと足を踏み出す。
歩き始めてすぐに森の中では感じる機会が少ないさわやかな風がレンを撫でる。
それに心地よさを感じながら歩くと、首や足だけでなく、胴体や口から除いている歯まですべてが長い魔物を視界に納める。
食料をあまり持ってきていないレンは、そろそろ昼時なのもあり小腹がすいているため、魔物を狩るべく武器である槍を構える。
この槍も、最近ホウマに銘を貰い、銘を『滅槍カナン』という。
「さて、やりますか。」
レンは笑みを浮かべると、一気に地面を蹴って長い魔物に接近する。
勿論雷魔法を使って自身の速さを底上げするのも忘れない。
一瞬で魔物に近づいたレンは、魔物の目から槍を突き入れ、脳を破壊する。
最近パターン化している狩りに、少し思う事路があるレンだが、空腹には抗えずに昼食の準備を始めるのだった。
ドラゴンの育児日記
今日、レンが町へ向けて旅立った。
レンがこの塒を出てまだ数時間しかたっていないというのに、もう寂しさを感じている。
早く帰ってこないかと思っている自分がいる。
だが、この旅はレンのためになるのだから我慢するしかない。
腹を痛めたこともないのに母親の気分を味わうことになるとは思わなかった。