↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
追放された無能令嬢、魔界で最強の王となる  作者: 川合 佑樹


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
56/56

第56話

 黒岩の前哨から、騎士国方面へ続く補給路。


 ライアンは馬車の御者台に立ち、褐色の肌に砂埃を浴びながら、遠くの地平線を見据えていた。


 復興はほぼ完了。

 魔族の商人たちと、ルクスヴァルトから来た人間の交易隊が混じり、馬車が連なる平和な光景が広がっていた。


 仲間たちの魔族が、荷台で武器の手入れをしながら笑い声を上げている。


 最近、交易路で「行商人が忽然と消える」という噂を耳にしていたが――今はただ、穏やかな風が心地よかった。


「ライアン様、もうすぐゾルディアの領内ですぜ。ここを抜ければ騎士国まで一本道だ」


 ライアンは馬の手綱を軽く引いた。

「そうだな。順調すぎるくらいだ」


 ――少し、順調すぎる。


 その言葉が終わらないうちに――突然、地面が揺れた。


 森の奥から、獣の咆哮が重なり合って響き渡る。


 黒岩の戦いで追いやられた魔獣たちが、追われ追われてこの地に流れ着き、巨大なコロニーを形成していたのだ。


 無数の魔獣が雪崩れ込むように襲いかかってきた。


 鋭い牙、鋼のような爪、毒の霧を吐く巨体――数十体を超える群れ。


 仲間たちが慌てて武器を構える。

「ライアン様!」


 ライアンは馬車から降り、砂漠の風に金髪をなびかせた。

「下がっていろ」


 一歩踏み出す。

 その瞬間――ライアンの周囲に、黄金色の砂嵐が巻き起こった。


 砂が刃となり、風が槍となって魔獣たちを切り裂く。


 咆哮が悲鳴に変わり、巨体が細切れにされ、血と肉片が砂に吸い込まれていく。


 戦いは、数秒で終わった。


 ライアンは仲間たちに振り返った。

「もう大丈夫だ。迂回して進もう」


 仲間たちが安堵の息を漏らす。


 しかし――その時。


 馬車の後ろ、砂煙の向こうから、人影が現れた。


 白い薄汚れたマントに身を包み、顔をフードで隠した姿。

 腰に下げた剣は、騎士国のものではない。


 ヴェルディアの紋章も、ルクスヴァルトの獅子も――どこにもない。


 その人物の足元に、魔力の波動が立ち上る。


 ライアンだけが、それを感じ取った。

 冷たく、底知れぬ――魔界の深淵から這い上がってきたような気配。


 ライアンは目を凝らし、一言放った。

「これは……まずい」


 仲間の一人が、ようやく異変に気づき、声を上げた。

「ライアン様、あそこに――」


 その瞬間、マントの人物が、音もなく動いた。


 砂煙が渦を巻き、視界が歪む。


 ライアンの金髪が、風もないのに激しくはためいた。


 仲間たちの悲鳴が、遠くで響く。

 ――そして、ライアンの姿は、砂煙と共に消えた。


 馬車の上に、ただ彼の外套だけが、ぽつんと残されていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。