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7-6 最高の1日へ

※今週は土曜日と日曜日、2日連続の投稿となります。

 帰り道、駿は美生と歩いていた。


 夕方だというのに、空はまだ明るい。

 雲ひとつない青が広がり、昼の続きを引き延ばしたような時間だった。


「今日の勉強会、為になった?」


 隣を歩く美生が、穏やかな声で尋ねる。


「うん。明日以降のテストも、自信持てそう。ありがとう」


「どういたしまして」


 少し嬉しそうに笑ってから、美生が思い出したように続けた。


「あ、そういえば。もうすぐ果奈ちゃんの誕生日だよね。プレゼント、決めた?」


「あー……それがまだでさ」


 頭の後ろをかく。


「甘いもの好きだからって、スイーツ渡すのも違う気がして。なんか、ちゃんとしたのにしたいんだけど」


 気づけば、ため息が混じっていた。


 果奈の誕生日は七月四日で、後四日と迫っている。


 一人で考えても答えが出ない。

 少し迷った末、口を開く。


「美生なら、どういうのがいいと思う?」


 言った瞬間。

 胸の奥に、わずかな引っかかりが残った。


 幼馴染で果奈の親友でもある美生に相談したせいなのか、理由は分からない。

 ただ、視線が自然と前へ逸れる。


 美生は少し考え、それから柔らかく微笑んだ。


「駿君の想いがこもってるなら、きっと何でも嬉しいと思うよ」


 その言葉は優しいのに、なぜか胸の奥が静かに揺れた。


「……分かった」


 短く頷く。


「自分なりに考えてみる」


「うん。果奈ちゃんが、うんと喜ぶもの選んであげてね」


 その笑顔に背中を押されるように、歩幅を少しだけ速めた。


 ふと空を見上げる。




 テスト最終日の放課後。


 さっきまで澄み切っていた青空に、薄い雲が流れ込み始めていた。


 果奈と並んで歩きながら、自然と話題はあの勝負のことになった。


「今回のテスト、かなり自信あるんだよね」


 弾んだ声。

 本気で勝つつもりらしい。


「俺も負けないけど。三人の勉強会で苦手潰せたし」


「……前回の勉強会ね」


 その言葉だけ、少し温度が違った。


 果奈は視線を逸らす。


「別に……嫉妬してるわけじゃないんだけど」


 そう前置きしてから、小さく続ける。


「美生が駿に教えてるとき、距離近いなって思って」


 歩く速度がわずかに落ちる。


「勉強だから仕方ないの分かってる。でも……ちょっとモヤモヤした」


 こんなふうに感情を口にする果奈は、初めてだった。


「果奈……」


「ほんと、気にしなくていいからね」


 慌てて笑う。


 けれど、その笑顔が少しだけ無理をしているのが分かった。


「いや、気にするよ」


 自然に言葉が出た。


「変な心配させないようにする」


「どうやって?」


「……なんとか」


「なにそれ」


 果奈が吹き出す。


 いつもの笑顔が戻る。


 それを見て、胸の奥の緊張がようやくほどけた。



 別れたあと、商店街へ向かった。


 並ぶ店を何度も行き来する。


 これでいいのか。

 本当に喜ぶのか。


 迷いながら、それでも最後には1つを選んだ。


 袋を受け取る。


 手の中の重みが、少しだけ現実感を与えた。


 正解かどうかは分からない。


 それでも――


 果奈が生まれた日を、

 誰よりも祝いたい。


 その気持ちだけは、迷わなかった。


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