借金令息は恋にも生きる
借金令嬢は返済に生きる、のアーサー視点です。エリンの弟です。
アーサー、実は口が悪いです。心の中のつぶやき形式で書いてます。
返済を頑張るけど姉の乳姉妹のケイトが好きなアーサーです。恋もがんばりました。
第一部 借金令嬢は返済に生きる
エリンの物語がムーンライトノベルズにあります。うっかりR18を押してしまいました。
第二部 借金令嬢は返済に生きる
普通のサイトにあります。
ややこしくして誠に申し訳ないです。
第一部と第二部もよろしくお願いします。
2歳上の姉の誕生日、俺の人生は変わった。俺は6歳。
姉の誕生パーティーが修羅場となった。
それまで俺はアリステア王国のローラン子爵家の嫡男として育てられていた。
2歳上の姉エリン。3歳下の妹アリシア。
両親の仲は良くて、のんびり毎日を過ごしていた。
それが突然の借金取りの乱入だ。
父親が騙されて莫大な借金を背負ったってさ。差し押さえの奴等だった。
俺は子供で、いきなり来た乱入者が怖くて泣いてしまった。6歳のガキだから、情けないが仕方ないと思ってくれ。
その日から、今まで「当たり前」だった世界がガラッガラに崩れ落ちた。
食い物も寝る場所も無い、がらんどうの屋敷に姉と妹と、それから、ケイト。ケイトは姉の乳母の娘だ。そう、ケイトとその両親と、協力して日々を過ごす様になった。ついでにアホ(父)もいたな。邪魔でしかなかったけどな!
俺は心の中ではこんなふうに口が悪い。
しかし、姉が心配するから表に出すのは品性高潔な人格を演じている。姉は母親の代わりに俺と妹を守ろうと頑張っている。自分だってまだ子供だってのに。
アホは役立たずだった。見た目は良いらしいが、頭はアホだ。
毎日姉とケイトと畑や森に出て、食べ物を調達する為働いた。指揮は姉だ。
ケイトはアリシアの子守で屋敷に残ることが多かったな。遠出は俺と姉のコンビで。
俺達は幼いながら、一生懸命だった。
なんとか食べて行けていたが借金返済には程遠かった。利子も払えない。
街を見て、金持ちと貧乏の人を見ていて思った。
金持ちは人を動かして儲けている。
貧乏な人は、自ら働いて金を得ている。
金を生むシステムを自分で作らなくては、この借金地獄から抜け出せない。
だけどなあ。資金がない。
働いても貯めても、アホのせいでどうにもならない。
借金を増やしやがる。こいつを何とかしなければ。
姉は、俺から見たら、甘い!優しいのだ。
父に非情になれない。
時々父に怪我させたり(わざとぶつかり骨折させるとか)、腹をくださせたり(腹を壊す下剤を食いもんに入れた)して、街に行かせないようにした。
しかし、俺らは働いてる。忙しい。見張ってられん。
アホは自由だ。フラフラ街に出ていきやがる。
姉が王都へ行ったあと、俺はアホを鎖で繋いだ。もう部屋から出さん!
姉は王都から仕送りをしてくれていた。
俺もこっちでやれることをやる!
孤児院で仲間を作った。孤児院も金に困ってる。
子爵がアホで、領地が貧乏だからな。
俺が爵位を継いだら、領民を幸せだと思える人達にしたいんだ。領地の人達、優しいんだ。アホの代わりに俺と姉に沢山の生きる知恵を授けてくれている。
俺は貰うばかりでなく、貰ったものを返したい。でっかく!
俺は領民の様子を観察する。街を見て廻った。
やっぱり、弱いもんにしわ寄せが来るんだな。
孤児院をどうにかしたい。
子供が腹をすかしてる。でも、お慈悲でお情け貰っても、卑屈になる。なんか嫌だ。
俺は親がイマイチとか、死んじまったとかで、他の人より下の人間みたいに自分を卑下して欲しくない。
たまたま、孤児院にいるけど。自尊心を持って欲しい。俺だって孤児みたいなもんだ。
何だったら、孤児のほうが自由だ。負債が無い。ケイトだって。
俺のほうが奴隷になっちまうかもしれない、ヤバい奴なんだ。クソッ。アホのせいでな!
とりあえず孤児院に行って、にこやかに院長先生に挨拶して中に入り込めた。毎日通う。仲良くなったところで、開始だ。少しずつな。
孤児の仲間に読み書き計算を教えた。できるようになった奴に、また下の子に教えさせる。
掃除や洗濯、メシを作るのが上手いとか、子守が上手いとか、個人の得手不得手をまとめる。
いくつも商店を廻り、人を欲しがっている店、困っている事をピックアップする。
子供の、子供による、子供だけの人材派遣会社を設立した。
最初の一回は無料で、お試ししてもらう。
良ければ次回から金をもらう。
結構な需要があった。
子供だから多目に見てもらえた事もあるだろう。
簡単なお使い。店番。子守。
嫁さんが子供産んで、しばらく家事を手伝いに来てほしいとか。
家族が病気で困っている。しばらく店番しててくれ、とか。手を怪我したから、料理してくれとか。
引っ越しだとか。色んな事を頼まれた。
子供だから安いし、安心して頼めたらしい。
大繁盛した。
すると孤児院の子供だけじゃなく、近所の子供も参加して働き始めた。
そのうち、大人まで来て、大工仕事が得意だから!馬の世話なら任せてくれ!と仕事を求めて派遣会社に登録し始めた。
これは、人を見る目が必要な仕事だ。
嘘くさい奴は雇わない。身元がしっかりしている人。話していて、この人は誠実で真面目な人だと感じたら雇った。
人材派遣は人が商売品なのだ。
さんざん、ひどい目に合ってきた。騙されてきた。アホを見てきた。父を騙した奴に似た匂い、というものがある。相棒のケイトと共に、主に俺は男を担当。ケイトに女の子の担当をしてもらった。
女の子の派遣は、派遣元にも注意が必要だ。不埒なことをするやつの所には女の子は行かせない。
少々の失敗もあり。喜ばれて嬉しい事もあり。
お金稼げて、家族を学校に行かせることができたと喜ばれたり。
仕事をしてくれる雇い人も、派遣先にも喜んでもらえるような、人を幸せにする仕事にしたかった。
あと、思わぬ副産物。孤児が仕事で行った先で気に入られて、もらわれていく事が沢山あった。仲良くなったから、ちょっと寂しかったけど。いい親、家族を持ててさ。そのキッカケを俺がしたようなもんだろ?嬉しかったね!もらってくれた方も喜んでたし。
跡継ぎが居なくて困ってた店でも、派遣した職人さんが後継者になったり。
派遣したら、出会いがあって、結婚した人もいて。
人材派遣会社は大きくなり、借金の利子だけでなく元本も返していけるようになった。
学園の入学を1年遅らせた。
アリシアが幼いから、と理由をつけて。
ケイトと居たかった。アリシアが心配な事も本当。
ケイトから見たら、2歳下の男は子供かな?
ケイトとは小さい頃から一緒だった。
姉の乳姉妹だから。俺が母親の腹の中にいた頃から、近くに居ただろう。産まれてからも。オムツまで替えてもらっていたらしい。
やっぱり、男としては見てもらえないだろうか。
オムツやオネショの世話をした年下の男の子か。無理かも。
でも、俺にはケイトしか考えられない。
なんと言っても、ケイト家族は恩人だ。
実の母親さえ、借金の額を聞いて逃げたのだ。
無報酬で、長年働いてくれている。誠実。信頼。感謝。家族以上の家族。
というか、一生、側にいて欲しい。他の誰かに取られたくない。
ケイトを惚れさせてみせる!俺以上の男は居ない、と思ってもらいたい。
そう、俺はケイトに惚れてる。
こう言っては何だけと、ケイトが美人でなくて良かった。
俺はケイトを可愛らしいと思う。笑顔や柔らかい雰囲気、話し方。頭が良くてに優しい所も。貧乏だけど、人に媚びない自分に対しての誇りとか。とにかく好ましい。
結局、仕事の相棒のまま、進展せず。俺は王都へ出た。
学園で学ぶ事は、良かった。勉学できた。身についた。
アホがここで何を学んだか、なんとな~くわかったね!なんでアホが学園を卒業出来たか。
令嬢に混ざって、マナーとか美術鑑賞とか。刺繍とか詩歌とか、ダンスとか。どーでもいい教科ばっかり取ったんだな。たまにそんな貴族令息がいて、せっかく高い金を払ってんだから、もったいねーな、と思ったもんだ。他人だからどーでもいいけど。
美術鑑賞や詩歌が悪いってんじゃない。良いと思うよ。人生豊かになる。俺は、スゲエキレイな絵や彫刻とか詩歌や音楽を作れる人って、スゲエなって思う。で、鑑賞って、あーだこーだ外野で言っても、わかんね。好みじゃね?って終わりだ。学問にまでしてそれで食ってけるまでになるのも、スゴイと思う。
まあ、俺には金になるか、食べれる種になるか、が大切なだけだ。
学園とか社交界では、令嬢が鬱陶しかったな。香水くさい。頭は悪いし。
婿に来ないかーってさ。上から目線で。やなこった。
俺は、俺の事を必要としてくれる、自分の領民のために学んでるんだ。俺の器では、それでそれが丁度いい。ローラン子爵家にはケイトがいるし!
で、学ぶだけ学んで、2年で卒業した。15歳だ。
ケイトは17歳、いわゆるお年頃だ。早く婚約だけでもしとかないと。あと3年、俺が成人の18歳になるまで確保だ!
姉に来てもらいたかったのに、姉は王都から戻らなかった。
これは、俺と同じだな、って思ったよ。好きな男が出来たんだなって。恋路は邪魔しちゃならん。
自力で子爵家を立て直す!ケイトにいいトコ見せるぜ!
って、ガムシャラに仕事したんだ。
いい感じで領民に仕事を作って行けてた。
俺がもうすぐ18歳になれるって時。
また、アホが!邪魔しやがった!
酔っ払って、テキトーにサインしやがって。3億リブルも!
隣国まで来て、あの商人。詐欺師だな。ハメやがった。
計画はガタガタだ。
何より、俺を信じてくれた商会、商人、領民が。資金をつぎ込んでくれているのに。
あの野郎!
生かしとくんじゃ無かった。
アホは動けなくして。
3億リブルを用意だ。
で、情けない事に俺は7千万リブルしか借りることが出来なかった。
サンフォーク公爵家が半分以上用立ててくれた。
助かった。
しかし、姉のエリンも妹のアリシアも結婚する事になった。公爵家の令息と。
妹アリシアが嫡男と。姉エリンが次男と。反対なんじゃ?と思ったが、まあ、幸せそうに見えた。
アリシアは、上手く結婚生活を送れてたみたいだ。アリシアは一番下の妹だから、甘えたり、頼ったり、遠慮なく出来る。公爵家でも可愛がられた様だ。
年上の旦那と仲良く過ごして、わりとすぐに子供が出来た。安産で良かった。
しかし、姉がなあ。
姉はレイナルト殿に惚れてるくせに。
エリンは子供の頃から、人に頼る事が出来ない中で生きてきた。精一杯強がって、家族の盾になろうと頑張って。
人を好きになって、惚れられて、どうして良いかわからないんだろうな。真面目で息の抜き方を知らなくて。
普通の令嬢みたいに生きて欲しい。レイナルト殿がエリンにゾッコンなのは、傍から見て丸わかりだ。
エリンもレイナルト殿にゾッコン惚れてるけど、それがわかるのは、俺やケイトだけかもな。
もしかしたら、エリン自身も自分が恋してるってわかってないかも。
レイナルト殿の語るエリンは、俺の知る姉とは別人だ。ソレダレ!?ってくらい、大人しい性格になるみたいだ。
お姉様、猫被ってますか?
レイナルト殿の前で本性隠してるのは、好きだからだろ?好きな男の前では、ってやつだ。
なのに、言えてないみたいなんだよなー。好きだって。レイナルト殿に。素直に甘えりゃ良いのに。
エリンもアリシアも嫁に行った。
それぞれ自分で人生を歩んでく。俺達はもう子供じゃないからな。お互い困ったら助け合うけど、新しい家族と生きてく。
俺もケイトと結婚するため、頑張らねば。
まずは借金を返す!
騒動はあったが、俺は爵位を継いだ。アホの借金もな!ぜってーキレイに返してやる!見てろ!
18になったから、ケイトにプロポーズしたんだ。
バタバタしたから、18歳すぐにではなく、半ばあたりになったけど。
?て顔でスルーされた。なんでだ?
「冗談言ってないで、仕事しましょ。」
って仕事の話をされた。渡した花束は仕事場の花瓶に突っ込まれた。
「たまにはお花もいいですけど、借金返さなきゃならないんだから」
って、ぬぬう、プレゼントもこの言葉で駄目出しされそうだな。
借金め。アホが憎い。
食事やプレゼントやデートをしたいのに。
時々道端の花をつんで、ケイトに渡す。
「金かかってないからいいだろ?俺が花を渡すのは、ケイトだけだからな」
また?って顔。
さり気なくエスコートしたり、特別扱いをするんだが、「家族枠」と思われてる。
「たまには休もう。公園に行こう!」
誘ったら。
「わかりました。視察ですね。」って。
まあ、良い。二人で出かけられる。
しかし、同じ屋敷に住んでるから、身支度もお互い様子を見ながらで。
「用意できた?」「ちょっと待って。お皿洗ってから」「帰りに夜のオカズ買ってきた方が良いかなあ」「あ、バター無いな、帰りに買い物しよう」「菜園に水やっとくわ。」
デートじゃなくて、家族のお出掛け感が満載だ。
待ち合わせとか、ドキドキ感とかが、皆無だ。
一緒に歩いて公園へ行く。
ケイトが俺の後ろを歩こうとする。
ケイトの腕を取り、
「手をつなぎたい」と言った。
「良いですよ。子供の頃を思い出しますね!」
そーだな。子供の頃は手を引いてもらって歩いてた。
「やめた。俺の腕に手を回してくれ。」
「それは、やめときましょう。恋人や夫婦だと思われますから。」
「思われたいから良いんだよ。」
「わかりました。また、どっかの令嬢に言い寄られてるんですね。大変ですね。」
「いいから、腕に手を回せ。」
ガックリきた。どうしたら口説けるんだ。
公園に着いた。家族連れやデートっぽい人達が一杯いる。
「いい感じですね。皆さん楽しそうです。」
とケイト。
「俺もお前といい感じになりたい。」ボソッとつぶやいた。
初めてケイトが真面目な顔をした。
そんで、ケイトの顔が赤くなった。
通じた?!
よし行け!俺!
「ケイトが好きだ。何回もプロポーズをスルーされてるけど。本気で言ってる。ケイトと結婚して、そんでいつか、子供連れてこういうトコ一緒に来れたら良いな。」
ケイトが黙った。
しばらく一緒に歩く。反応が無い。俺は本気で振られるのか?不安になる。
「私は使用人です。平民です。アーサー様にはふさわしくありません。」
ケイトが言った。
断られた。でも、これって、
「俺が嫌い、って断ってるわけじゃないよね?俺が聞きたいのは、ケイトの気持ち。」
ケイトの顔を覗き込む。
ケイトが赤くなって目をそらした。
よし!いい感じだ!嫌われてない!
それから、チョイチョイ二人きりの時、俺は甘い言葉を吐いた。恥ずかしいけど。言わなきゃ伝わらないからな。
好きだとか。結婚したいとか。ずっと返事を待つから、とかさ。君しか考えられない、とか。マジで恥ずかしい。
将来こうしたいなあ、って。ケイトとの子供が出来たら嬉しいだろうなあ、とか。
そのうち、抱きしめたい、って言ったら黙ってるから、了承と見なして抱きしめた。ケイトの柔らかな身体を抱きしめて、マジコイツと結婚してえ!って思った。
で、そのうちキスもして。
行儀は良くないが、夫婦同然の仲になった。
結婚したいけど、金が無い。指輪とかもあげれない。
マジアホが憎い!
金が無いって、辛え。
あ、無理やりとかではない。
良いかな?って聞いて、頷いてたし。
ウットリした顔してたし。
子供が先にならないように、色々我慢もした。早く結婚したい!
自分の事に集中してたら、エリンのトコがエライことになってた。
助けたいけど、金が無い。
で、エリンが出奔した。
レイナルト殿がえらいこと落ち込んで。見てられねえ。元が、アホのした借金のせいだし。俺も申し訳ない気持ちだよ。
エリン、どこ行った!?
金を作りに行ったんだろうけど。
待つしか出来ない。
待つだけってのは、情けない。やる事はやらねば。
エリンからの金がレイナルト殿のとこに来た。やっぱりな。まず、レイナルト殿に、だ。
エリンはレイナルト殿の為に居なくなったんだ。
馬鹿だなあ。エリン。
男はこんな事されたら、情けないんだよ。守るべき妻から、守られて。立場無いだろ。しょげるよ。
こんだけの金額。エリンが身体を張ったって、わかるよ。
他の男が、妻といるって、想像しただけで狂いそうになる気持ち、どんなか知ってるか?
レイナルト殿はユーレイみたいになってたぞ。早く帰って来い、エリン。
レイナルト殿の領地の事を成り立つようにして。環境を変えるように勧めた。レイナルト殿はヌケガラだよ。でも、自分で立ち直らなきゃならない。
長い間、待ったなあ。エリンが心配だった。俺だってへこんだ。俺にもっと、甲斐性があれば。金があれば。
ケイトもへこんでた。乳姉妹なのに。ここ10年位、離れてたから。
ケイトも俺も、優先順位がエリンより、恋する人になってた。
でもさ、エリンは俺達が幸せな事を望んでる。わかる。
それでやっと、ケイトを口説き落として。金も目処がついたし。結婚式もできる。
俺は25歳。ケイトは27だ。
ずいぶん待たせた。ケイトが借金ゼロになったら、って言うし。
何度言っても、ケイトは事実婚でいいって言う。それで、いつか正式な奥様を、って言う。なんだよ、それ。
俺の借金(爵位と共に継いだ)は俺が返す、つって時間がかかった。利子含めて倍近くの金額になった。
借金て怖えな。
もうケイトの返事はいいや。
ケイトを男爵家の養女にして。
結婚式の日にちも決めた。
その頃、エリンが見つかった。
これは、俺達の結婚式にエリンも出れるように、って神様の思し召しだ。
エリンを連れてローラン子爵家に帰ってきた。
孤児院にの院長先生が「エリンは子供を産んだ事がある。」と言った。
エリンが姿を消してから、レイナルト殿に大金が届いて。さらに1年後、大金がローラン子爵家に届いた。
これは、約束の前金と結果を出した礼金だと思ったね。起こった出来事を考えたら、エリンがやった事の想像がついた。
しかし、これは言ってはいけないやつだ。最悪消される。
エリンの様子を見ていて、記憶喪失は本当らしいとわかった。
催眠術か、薬か。どちらかか、どちらも、か。
それは俺達が知らなくて良いことだ。
俺達にとって、重要なのはエリンがいる事。無事な事。元気そうだし!
忘れられてるのは寂しいけど。
エリンには幸せになってもらいたい。幸せにならなきゃ、おかしい!だろ?
そうそう、エリンが寄越した金は、借りたトコにアチコチ返した。公爵家を主に。
俺のした借金は、俺が返す。残りはエリンの金だ。取っておいた。
久しぶりに実母に会った。
金を返しに行ったら、受け取ろうとしなくて困った。
泣くし。
悪いのはアホ、もとい、父ですから、って言ったけど。この人が俺らを捨てた事は事実だから。
陰ながらの援助に感謝の気持ちを伝えたら、また泣くし。リッチモンド家からの援助に、この人からの援助が混ざってる事は、何となくわかってた。
会いに行ったら宝石とか一個もつけてない。あの金は、この人の持ち物を売って作ったんだと思った。
ずっと手紙とかくれてた。この人には、悪い感情は持てなかった。幸せを願っている。お互いに。
再婚相手も良さ気な人だった。お祖母様が吟味して選んだ人だ。安心だろ。
さて、俺らは未来に向けて生きる。
借金は今、キレイに無くなった。
エリンの身を犠牲にして。
いや、ホント、エリンはこの国を救ったね。沢山の人が感謝してると思うよ。
レイナルト殿だけが憐れだ。
協力するしかないだろ?
大切な姉と、姉の惚れた人だ。
エリンとレイナルト殿の新しい未来を光あるものに。そう願ってやまない。
俺の結婚式は、彼らの再出発の日だ。
読んでくれてありがとうございます。ひたすら感謝です。自分が書いたものを人が読んでくれるって、嬉しいです。下手な文章で申し訳ない。
自分の中に産まれた人物がクルクル動いて飛び出して来ました。一気に書きました。