遊び人とスライムとマイケルと
買い物をすますと丁度マイケルとの約束の時間となり、マイケルとともに昨日と同じ森へ。
さっそくスライム1匹と遭遇、幸先がよい。お前の持っている経験値は俺のもの。レアドロップも2500Sも置いていきなさい。
さっそく試しに魔法のスクロールを…スライムに使うわけにはいくまい。
俺は猛然とダッシュし、スライムと距離を詰める。
もう何度も戦ったスライムだ。敵と書いて餌と読む。
スライムが急激に赤くなる、謎の液体っとやらを吐く予兆だ。
俺のダッシュのほうが一足早くスライムにたどり着く。
「どりゃあああああああ」
俺は愛剣ゴブリーヌをたたきつける……ことなく。
愚足をもってスライムを蹴り飛ばす。サッカーなら全国大会までいった経験があるが、今は関係ない。
ゴールポストは守護天使マイケル。
お前今日は仕事してもらうぞ。
スライムはきれいな弾道で、思った以上のスピードをもってマイケルに飛んでいく。
ゴムのようなスライムの特徴か、反発力で恐ろしいスピードで飛ぶ……
これ俺じゃあ絶対さけられないスピードでちゃってる。
こうなってはしかたない、スライム君やってやりなさい。
お前の実力試させてもらう。
マイケルは少し驚いた顔をする。
俺が死にそうなとき以外は、手出しをしないというマイケル。
ケチなこと言った天罰だ。
だまってパワーレベリングしてくれていれば……
これならば、手出しせざる終えまい。守護天使よ俺に加護あれ。
「てめぇ…」
ドスの効いた低い声でマイケルが叫ぶ。
さらに運が悪いことに、マイケル着弾前にスライムの謎の液体の準備が整い、マイケル目掛けて液体が飛び散る。ちょっとスピンがかかりすぎて全方位攻撃になってしまってる。
おお。スライムの自爆攻撃だ。スライムの秘奥義だな。
これを避け切るのは、至難の業だぞ!俺には無理
さあ、どうするマイケル。わが守護天使よお前の実力見させてもらうぞ。
なんて考えてる間に、本当に一瞬の間にマイケルはサイドステップ一回で、謎の液体を回避。
さらに、再度サイドステップ。
だじゃれか。
元の位置に戻り、きれいなボレーシュートを決めんとする。
シュートポストはもちろん俺だ。
ですよね……やられたらやりかえしますよね……俺だってそうしますもん。
一瞬走馬灯がよぎる。短い人生だった……短すぎた。
遊び人なのに遊ぶことなく死んでしまうのか。
いや、いま命がけで遊んでたわ。
マイケルのボレーシュートが華麗に決まる。
経験的に弾道は俺目掛けて一直線。
さらに加速されたスライムを俺は回避するだけの力はない……
と思う前にスライムは爆散した。マイケルのボレーシュートで命を絶たれたらしい。
なむさん。
ホッとしたのもつかの間、恐ろしい殺気が俺を襲う。
マイケルさんが真っ赤なゆでだこのようになっている。
ああ。このユデダコ倒したらレアドロップ確実だろうなーなんて不謹慎に考えてる場合ではない。
マイケルがしゃべる前に、とりあえずに誠意のない土下座。
「すみません、出来心で!もとい、方向を間違えました。」
「ああ。そうだな、お前は方向を間違えた、一番間違えてはいけない方向にスライムを蹴り飛ばしたんだ。それがわかるか?二度目の転生を楽しめ。」
あっさり本性を現したマイケル……ただのヤクザじゃねーか。
「本当にすまん。すみません、許してください。」
ちょっと本気で怒ってる……
殺気だけで死にそうになる、このハゲハードゲイ宿屋のおっさん只者じゃないな。
宿屋の店主の固有スキルか?
とにかく、かなり強いことだけはわかる。俺くらい殺すことは容易いだろう。
「ははは。冗談だ。誰にでも間違いはあるよな。特にお前は転生したて、レベルも低いたまたまスライムを仲間に蹴り飛ばすなんてよくあることだよな。俺も昔気に食わねー奴に……なんでもない。だが覚えておけ、次はない。気をつけろ」
守護天使マイケル再臨。
ちょっと遊びすぎた。遊び人の性がでてしまった。
前世では堅実な性格だったんだが、ジョブ遊び人に俺の心が蝕まれているようだ。
そして俺はそれに身をゆだねている。
蝕むだけ蝕め。早く俺を生粋の遊び人に育てるんだ!
脱社畜
だが、分かったことがある、今回のスライムはマイケルがとどめを刺している。
仲間がとどめを刺しても経験値は入るといういこと。
仲間が倒しても、ドロップ品は貰えないってこと。
「マイケルさん。今のは、本当にすみません、でも冒険していくうえで確認したいことができました。教えてください。仲間が倒しても、経験値ははいる。ドロップ品は手に入いらないし、仲間が何を得たかはわからない。これであっていますよね?」
「そうだ経験値は均等に入る。だが、ドロップは全員配布型以外は、基本一番ダメージを与えた人間のアイテムボックスに入る。だから火力職にドロップ品が集中し、回復職にはドロップがいかないなんてこともある。ドロップ品の適正分配は今も昔も即席パーティーの課題の一つだ。冒険者ギルドを通じて解決策はいくつもあるがな。ラッキーなことに俺もレアドロップゲットだぜ?
なんとなんとだ!俺はスライムの水晶を手にしてる!!くくく。スライム蹴り飛ばしてくれてありがとよ。」
マイケルそれ俺の!!俺の幸運がPTメンバーに作用しマイケルもスライムの水晶を手にしたと考えるのが自然か??
今後PTを組むうえでレアドロップが出過ぎて、俺の幸運チートがばれるなんてこともあるかもしれない、これは要注意だな。
とにかく、俺の幸運チートはヤバイ……本当にスライムハンターで豪邸立つレベルだぜ。
だが、現実は甘くない俺たちがしゃべっている間に次の敵がやってきた。
先にマイケルが気が付く。
「おい。ワイルドウルフだ、1匹だが油断したら死ぬぞ。死にそうになったら俺が間違わずお前に向けて回復することを祈れ、手違いでワイルドウルフを回復したりしてなあ。」
おい。こらハゲ。顔が笑ってるぞ。しっかり謝ったじゃないか……レアドロップもゲットしたくせに!女々しいぞマイケル
ワイルドウルフが姿を現す。
さすが、だてにウルフしてない。だてにワイルドしてない。
常識的に考えて、まずは普通のウルフからだろ。
あほかこの世界。
普通の狼の倍。
ちょうどマイケルが四つん這いになったくらいの大きさなウルフが歩いてきている。想像し見てみてくれ?怖すぎる。
明らかに俺を餌としてみている。
マイケルはいつの間にかかなりさがって観戦モード。
さあ。本当に命がけの戦いは、俺たちの戦いはこれからだ!マイケル逃がさんぞ、死ぬときはお前が先だ。