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レティス王女の近衛7騎士  作者: 相馬あさ
気炎万丈編
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エピローグ

「何つーか、こうしていつもの日常に戻ると、夢だったんじゃないかって思うよな」


 ジェイクは放課後のエウニス学園の教室から外の景色を眺めながら呟く。


 すると隣にいたアリサが頷いた。


「私はいまだにジェイク君の作り話なんじゃないかって思っちゃうよ」

「冬休みの間に帝国に行ってあのオーレンドルフや帝国の皇孫女と仲良くなって帰ってきたなんて、普通信じられないよね」


 シアメイがケラケラと笑いながら言うと、ジェイクが即座に否定する。


「いや、フランツィスカ皇孫女はともかく、俺はジークベルトの奴と仲良くなったつもりはねえぞ」

「そうだね。その代わりジェイクはエーデルフェルグ大佐と仲良くなってたけど」


 アルフレートが補足すると、ジェイクは罰が悪そうに頭を掻いた。


「確かに帝国軍に入らないかとは言われたけどよ。敵対している国の人間を引き抜こうとするなって話だよな。普通に断ったぞ」

「そっちじゃなくて、夜のお店の話で意気投合してたじゃない」

「ばっ、馬鹿! アル、お前なんてことを!」

「…………夜のお店?」


 アリサがジェイクの腕をがっしりと掴む。


「私も詳しく聞きたいな?」


 とても可愛らしい笑顔を貼り付けた状態で、アリサはジェイクの腕を万力のような力で握る。


「い、痛たたたた! ご、誤解だアリサ!?」

「誤解も何もまだ何も話してくれてないよね? ちゃんと順を追って説明して?」

「は、話す! 話します!」


 ジェイクが叫ぶように宣言すると、アリサは彼の腕を掴んだ手の力を緩めた。


「――ってわけで、俺はそういう店には行ってないから安心してくれ! な?」


 ジェイクの話を終始半目で聞いていたアリサは、彼が話し終えたタイミングでアルフレートへと視線を移す。


「嘘は言ってないと思うよ」

「そっか。疑ってごめんね、ジェイク君」

「いや、ならアルに確認しないでも信じてくれよ……」


 ジェイクは自分の信用の無さにがっくりと項垂れる。


「アル、ジェイク、遊んでないで行くわよ!」


 教室の入り口付近からティアが二人に声をかける。


「ご、ごめん、すぐ行くよ!」


 アルフレートは急いで席を立って、隣で眠っていたフローラとリーゼロッテを起こしてティアに駆け寄る。


「ティアちゃん、帰って来てから熱心だよね」

「あれも仲良くなったって言う皇孫女が原因なのかい?」

「ああ。強くなって、次は絶対に勝つんだと」


 ジェイクはアリサとシアメイの質問に答えつつ、ティアとアルフレートに続いて教室を出て行く。


 行き先は学園のシミュレーションルームだ。


 学園に戻って来てからティアはとにかく強くなることに執着し、同じレティスの騎士であるアルフレートとジェイクを巻き込んで訓練に明け暮れていた。


「どうする、シアメイちゃん。私たちも行く?」

「もちろん。ボクだってもっと強くならないといけないんだ!」


 シアメイはアリサの手を引っ張って三人の後を追った。




 すっかり日も落ちた夜の学園からティア、アルフレート、ジェイク、アリサ、シアメイの5人がクタクタになりながら寮へと帰る。


 フローラとリーゼロッテは体力の限界に達したので、腕輪の姿になって眠っている。


「シミュレーションとはいえ、これだけやると精神的にすり減るわね」

「ティアちゃんはシミュレーションとは思えないほど鬼気迫る戦いぶりだったし、仕方ないよ」

「シミュレーションだと思ってやってないからよ。その証拠に、私は一度も死んでないでしょう?」

「あっ、確かに。シアメイちゃんとアル君は何回かやられてたけど」


 アリサに指摘されてシアメイとアルフレートは悔しそうに目を泳がせる。


「でも、やっぱり一番強いのはアリサだったね。もしかしたら師匠にも勝てるんじゃない?」

「マサムネさんに? まあ、奇襲していいなら可能性はあるけど、真っ向勝負だと無理かな」


 アリサは大真面目な顔で言い放ったが、どのような状況であれマサムネに勝てる可能性を持っている時点で凄いのだ。


 シアメイは自分がマサムネに勝つなど、想像することすら出来ない。


 すると、先ほどから黙って先頭を歩いていたジェイクが振り返る。


「なあ、ティアはレオンティウス帝国と和平が結ばれるのを望んでいるんだよな?」

「ええ。それがツィスカ姉さんとの約束だもの。次に会うときは堂々と正面からアウデンリート城へ乗り込んでやるわ」

「実際に帝国と戦争をしていた世代は良い顔しないけど、俺もそうなったらいいとは思うんだ。レティスもそれを望んでいる」


 平和が一番。当たり前の話だ。


 それはレティスだけでなく、ソフィアやシーラの望みでもある。


「でもよ、もしそうなら俺たちがするべきなのは強くなることなのか?」

「どういうことよ?」

「戦いが無くなるなら、力は必要ないだろう。むしろ、俺たちは政治を勉強した方がいいんじゃないか?」


 ジェイクの口から勉強を推奨するような言葉が飛び出したので、その場にいた全員が立ち止まって驚いた。


 ジェイクは後ろ歩きを止めて、不満そうな顔をする。


「何だよ。俺、変なこと言ってるか?」

「う~ん。変じゃないはずなんだけど、変だわ」

「ジェイク君、熱でもあるんじゃないの?」


 アリサが心配してジェイクの額に手を当てる。


 ジェイクはその手をやんわりと退けると、続けた。


「俺だってたまには真面目な話くらいするぞ」

「そ、そうだよね、ごめん」

「んで、話を戻すけど、みんなはどう思う?」


 ジェイクの問いかけに、アルフレートは少し考えてから答えた。


「帝国と和平を結べば、国と国との争いは確かに減ると思う。でも、僕たちの力は外国の魔道士と戦うための物ってわけでもないよね」

「そうね。アッシュやカーミラみたいな犯罪者がまた現れるかもしれないし」


 ティアが二人の名前を口にすると、シアメイが身震いする。


「……次は捕まらないようにもっと強くならないと」

「それにさ、ケイオスが何者なのかとか、最後まで分からなかったでしょ? エメットさんに聞いてみたんだけど、あいつは恐らく『この世の悪意そのもの』みたいな存在なんだって」


 ジェイクが首を傾げる。


「何だそりゃ。生き物ですらないってことか?」

「恐らくはね。そうだとしたら、あいつはまた現れる。そう思わない?」


 アルフレートの言葉にジェイクは目を見開いて驚いた。


 ケイオスが生物ではなく、悪意から産まれた存在なのだとしたら、アルフレートの言う様に必ずまた現れるだろう。


 人の心から、悪意が無くなる事などないからだ。


「……な、なるほどな。確かに、こりゃ勉強どころじゃねえや」

「いやいや、勉強は大切だよ?」

「うっ、そうだけどよ。でも、やっぱり俺たちは今以上に強くならないとダメだろ? もしもまたケイオスが復活したら、その時その場にティアがいるとは限らない。ジークベルトやエーデルフェルグ大佐も。もしかしたら自分一人の時に出くわすかもしれないんだ。その時までに一人でもあいつを倒せるくらいには強くなっておかないとな」

「ええ。私も、ママのペンダントの力を借りなくても、自力で雷の炎を出せる様になってみせるわ。そのためには、ママが帝国でどんな暮らしをしていたのか、パパに洗いざらい吐かせてやらないとね」


 ティアが決意するように胸の前でグッと拳を握る。


「結局、平和な世の中を守っていくには、強くなるしかないってことだね」

「おう。なんかスッキリしたぜ」

「政治とかは得意な人に任せておけばいいのさ。ボクたちは今まで通りこの学園で勉強して、訓練して、強くなればいいってこと」

「壊すことしか出来ない力だと思っていたけど、誰かを守ることにも使えるんだって分かったから。私もジェイク君と一緒に強くなるよ」


 ジェイクの抱えていた疑問が消えた時、5人の想いは一つの方向を向いた。


 それぞれ出来る事も考え方も違うけれど、最終的な目的は同じなのだ。


「頑張りましょうね」


 ティアの桃色の髪の毛が、炎のように赤く燃え上がる。


 その美しく力強い輝きは、まさしく『戦乙女(ブリュンヒルデ)』の名にふさわしかった。


「私たちはレティスを――いいえ、レティスだけじゃないわ。この国を、この世界を守る騎士になるのよ」

レティス王女の近衛7騎士、完結です!


初の連載でちゃんと続けられるのか不安でしたが、なんとか書き終えることが出来ました。


お世辞にも読んでくれている人が多いとは言えない作品でしたが、それでも更新するたびに数名の方が必ず読みに来てくだっていたのが心の支えでした。


本当にありがとうございました。




私は設定が大好きなので、今作も本編では書ききれないほどの設定を作ってしまっています。


さすがにそれを放出するためだけにダラダラと物語を続けるわけにはいかないので、ここで完結という形を取りましたが、私の脳内やパソコンの中だけに残しておくのは惜しいです。


なので後日、活動報告の方で色々と設定公開をしようかなと考えています。


もしも興味がある方がいましたら、読みに来てください。


それでは、また次回作でお会いできたら嬉しいです。

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