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雨は止み、空には虹が。

 30分程度、また無視を決め込んだでしょうか。遠くの空の雲の割れ目から、太陽の光が差し込みはじめたのが見えます。

 「噂をご存じですか?」と、王子様の質問を無視して話題を変えます。無粋な質問は、無視です。女に恥をかかせるような質問をする男は最低です。


「どのような噂でしょうか?」と、王子様は聞き返します。


「この国の王子のご噂です」と私は言いました。そして、雨宿りしてから初めて、王子様と目を合わせました。遠くの景色ばかり見ているのもそろそろ飽きました。


「そ、それはどのような?」と、王子様は不安げに聞き返します。まぁ、本人の噂なのですから、不安げになるのも当然でしょう。それに、噂と言っても、悪い噂の方ですし。


「とある貴族の屋敷で、昨日、盛大な舞踏会が行われたとか……。それはそれはとても盛大な舞踏会……。それにこの国の王子様も参加されていたとかいないとか。そして、その舞踏会には、三国一美しいと言われる隣国の姫も参加していたとかいないとか。この国の王子様はその麗しき姫に心奪われ、その姫に三度もダンスを申込み…… ついには、舞踏会の最中にも関わらず会場を去り、姫と別室に消えたとか……。そして、王城に戻ったのは、太陽が昇ってから……。王子様には婚約者がいるにも関わらず……。そんな噂を…… 耳に…… しましたわ。私は……ずっと…… ずっと…… 帰りを待っていたのに……」と私は淡淡と述べるつもり……………… だったのですが…… なぜか途中から涙が止まらなくなってしまいました。しかも、途中から主観が混じってしまっています。


「それは誤解だ、クリスティーヌ!!」と王子様が私を抱きしめました。


「でも…… ヒック。でも…… ヒック」

 私はしゃくり泣き、上手く喋ることができません。


「隣国から、我が国の重要機密を漏らしているという裏切り者の情報が突然入ったのだ! しかも反乱の計画まで! ダンスを踊りながら隣国の姫からそれを密かに耳打ちされたのだ! そして、会合の場所をセッティングしたりし、その連絡の為に、何度もダンスを踊ったのだ! 別室に行ってからも、何もやましいことなどしていない! 別室で、洩れた機密や反乱の計画などの詳細を聴き、そしてその証拠を預かっていたのだ! それに、私は夜半に王城へと帰っていた! 朝まで過ごしていたというのは、誤解だ! 王城へ急ぎ帰り、父上にその事の詳細を報告し、反乱を事前に鎮圧するための指揮を執っていたのだ。都にいる首謀者の屋敷に踏み込み、拘束して一段落し、部屋に戻ったら君の置き手紙があり…… 慌てて追っかけて来たんだ!」

 王子様は、私を力強く抱きしめてそう言います。この雨よりも大粒の涙が、王子様の胸元を濡らしいます。


「不安だったんです。本当に不安で……」


「すまない。君も一緒に舞踏会に参加してもらうべきだったのだが……。すぐに舞踏会に参加してくれという火急の招待状で……。私も馬車で衣装を着替えたほどだったのだ。本当にすまない」


「言付けくらい、誰かに頼んでくれたってよかったではありませんか……。連絡の一つくらいくれたって……」と私は言います。なんだか、愚痴のようになってしまっています。


「本当にすまない……。すまない。クリスティーヌ」と王子様は、私を抱きしめ、優しく私の頭を撫でます。ずっとずっと、私の頭を撫で続けてくれます。


 ・


 随分と長い時間、私は王子様の胸の中で泣いていました。やっと気持ちを落ち着かせ、顔を上げました。顔を上げると、王子様の、私の愛するヨハンの優しい笑顔があります。

 ヨハンは私の目に溜まった涙を右の人差し指で優しく拭き取りました。そして、優しいキスをくれました。


 そしてキスが終わると、「クリスティーヌ。ご覧」とヨハンは空を指差します。


 見上げた空には、いつのまにか雨は止み、雲の隙間から太陽が顔を出しています。そして、ヨハンが指差す方向には、美しい虹がありました。本当に、綺麗な虹でした。

ベタ過ぎる展開かも知れない……。

ご感想等戴けたら幸いです!

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