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貧乏子爵令嬢に転生した私が気難しい公爵様にプリンを振る舞ったら、食レポが壮大すぎました   作者: 豆柴の旅々


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第一話 気難しい公爵様とプリン

「リリア。お前に縁談が来ている。」


「……はい?」


 朝食の席で、父が突然そんなことを言い出した。


 私は思わず、手にしていたパンを皿へ戻した。


「縁談、ですか?」


「ああ。グランヴィル公爵家からだ。」


「……公爵家?」


 思わず聞き返してしまった。


 我がベルフォード家は、由緒こそあるものの、今ではすっかり没落した貧乏子爵家だ。


 領地からの収入は少なく、屋敷の使用人も必要最低限。私自身、厨房に立って料理をすることも珍しくない。


 そんな家の娘に、公爵家から縁談?


「お父様。何かの間違いでは?」


「いや、間違いではない。先方から正式に連絡があった。」


「どうして、うちに?」


「実はな。アルフォンス公爵の祖父君と、お前の祖父は古くからの友人だったのだ。」


 父は懐かしそうに目を細めた。


「その昔、互いの家に子供が生まれたら、いつか縁を結ぼうと約束したらしい。」


「……ずいぶん昔の約束ですね。」


「そうだな。私もすっかり忘れていた。」


 ……忘れてたんだ。


「だが、先方は覚えていてくださったようだ。まずは一度、顔を合わせてみないかという話になってな。」


 私は小さく息を吐いた。


 公爵家といえば、この国でも指折りの名門だ。


 そんな相手との縁談を、貧乏子爵家の娘が簡単に断れるはずもない。


「……ちなみに、お相手はどのような方なのですか?」


「アルフォンス・グランヴィル公爵。二十七歳。若くして家督を継ぎ、領地経営にも優れ、王国の要職にも就いておられる立派な方だそうだ。」


「へえ……。」


「ただ、少々気難しいという噂もある。」


「……気難しい?」


「何事にも妥協を許さず、特に食事には厳しいらしい。」


 ……うわぁ。面倒くさそう。


 私は心の中で呟いた。


 もっとも、会ってみなければ分からない。


「分かりました。お会いしてみます。」


「そうか! それはよかった!」


 父は嬉しそうに笑った。


 その笑顔を見ていると、断らなくてよかったと思う。


 ……ただ、一つだけ気になるなぁ。


 気難しくて、食事に厳しい公爵様。


 少しだけ、先が思いやられた。


 ◇ 


 私には、前世の記憶がある。


 前世では日本で暮らしていた、ごく普通の女性だった。


 料理が好きで、休日には新しいレシピを試すのが楽しみだった。


 それが十八年前、気がつけば、この世界のベルフォード子爵家の娘として生まれていた。


 最初こそ驚いたものの、今ではすっかりこちらの暮らしに馴染んでいる。


 ただ、一つだけ困ったことがあった。


 この世界には、前世で慣れ親しんだ料理やお菓子が、ほとんど存在しないのだ。


 もちろん、おいしい料理はたくさんある。


 焼きたてのパンも、じっくり煮込んだ肉料理も大好きだ。


 けれど、プリンやチーズケーキ、オムライスといった料理は見かけない。


 だから私は、手に入る材料を使って、少しずつ前世の料理を再現してきた。


 幸い、父も母も私の料理を喜んでくれる。


 特に父は、私が料理を作ると、いつも大喜びしてくれる。


 だから、誰かに料理を振る舞うことは、私にとって楽しみの一つだった。


 ◇ 


 お見合い当日。


 私は父とともに、グランヴィル公爵邸を訪れていた。


「……大きい。」


 馬車を降りた瞬間、思わず声が漏れた。


 目の前には、白い石造りの壮麗な屋敷がそびえ立っている。


 手入れの行き届いた庭園には色とりどりの花が咲き、噴水からは澄んだ水が流れていた。


 ……うちの屋敷、ここの使用人棟より小さいんじゃないかな。


 そんな失礼なことを考えながら、私は案内された応接室へ足を踏み入れた。


 そこに、一人の男性が立っていた。


 整った顔立ち。


 艶のある黒髪。


 背が高く、仕立てのよい濃紺の上着を身につけている。


 そして、何より印象的だったのは、その鋭い眼差しだった。


「アルフォンス・グランヴィルだ。本日はよく来てくれた。」


 低く、落ち着いた声。


「リリア・ベルフォードと申します。本日はお招きいただき、ありがとうございます。」


 私は丁寧に一礼した。


「どうぞ、掛けてくれ。」


「失礼いたします。」


 向かい合って腰を下ろす。


 父は公爵様とひとしきり挨拶を交わすと、二人で話せるようにと、別室へ案内されていった。


「…………。」


「…………。」


 沈黙。


 ……き、気まずい。


 公爵様は表情をほとんど変えず、こちらを見ている。


 怒っているわけではなさそうだけれど、何を考えているのか分からない。


 しばらくして、公爵様が口を開いた。


「リリア嬢。君は普段、どのように過ごしているのだ?」


「そうですね。読書をしたり、庭を散歩したり……。あとは料理をすることが多いです。」


「……料理?」


 公爵様の眉がぴくりと動いた。


「はい。料理をするのが好きなんです。」


「貴族令嬢でありながら、自ら厨房に立つのか?」


「ええ。実家ではよく作っています。」


「ほう……。」


 それまでほとんど表情を変えなかった公爵様が、わずかに身を乗り出した。


「それは興味深い。」


 初めて、少しだけ表情が動いた気がした。


「どのような料理を作るのだ?」


「肉料理やスープも作りますし、お菓子も作ります。」


「お菓子?」


「はい。最近はプリンを作りました。」


「……ぷりん?」


 公爵様が首を傾げた。


「聞いたことのない名だな。」


「卵と牛乳と砂糖で作る、甘いお菓子です。」


「ほう。焼き菓子か?」


「いえ。蒸して固めるんです。黄色くて、ぷるぷるしていて……。」


「……待て。」


「はい?」


 公爵様の表情が険しくなった。


「黄色くて、ぷるぷる……?」


「ええ。」


「まさか、スライムではないだろうな!?」


「違います!」


 思わず即答してしまった。


「食べ物です! ちゃんとしたお菓子です!」


「そ、そうか……。」


 公爵様は少しだけ安堵した様子だった。


 ……この人、何を想像したの!?


 しかし、すぐに真剣な表情へ戻る。


「ふっ。言っておくが、私は味にはうるさいぞ。」


「……そうなのですね。」


「料理は、素材の調和が重要だ。甘ければよいというものではない。」


「はい。」


「食感、香り、温度。そのすべてが一体となって、初めて一皿の完成を見る。」


「なるほど……。」


 ……うわぁ。やっぱり面倒くさい人だ。


 けれど、料理について真剣に考えていることは伝わってきた。


 ……料理に厳しい人みたいだけど、本当に料理が好きなのかもしれない。


 それなら、一度食べてもらいたい。


「あの、よろしければ、プリンを作りましょうか?」


「……何?」


「実際に食べていただいたほうが、分かりやすいと思いますので。」


「今からか?」


「はい。厨房をお借りできれば。」


 公爵様は驚いたように目を瞬かせた。


「本当に、君が作るのか?」


「もちろんです。」


「……そうか。」


 公爵様は、しばらく私を見つめた。


 そして、ゆっくりと頷いた。


「よかろう。その挑戦、受けて立とう。」


 ……別に挑戦したわけじゃないんだけど。


「……分かった。料理長に話を通そう。」


 公爵様は使用人を呼び、厨房を使わせるよう指示した。


 どうやら、本当に作らせてくれるらしい。


 こうして私は、公爵邸の厨房を借りることになった。


 ◇ 


 案内された厨房は、我が家のものとは比べものにならないほど広かった。


 磨き上げられた調理器具が整然と並び、何人もの料理人が忙しそうに働いている。


「……お嬢様が、お料理を?」


 料理長らしき男性が驚いた顔をした。


「はい。少しだけ厨房をお借りしてもよろしいでしょうか?」


「もちろんでございます。しかし、何をお作りに?」


「プリンです。」


「……ぷりん?」


 ……あ、この反応、さっきも見た。


 私は卵と牛乳、砂糖を用意してもらった。


 まずは砂糖を熱して、カラメルソースを作る。


 鍋の中で砂糖が溶け、少しずつ琥珀色へ変わっていく。


「ほう……。砂糖を焦がすのですか?」


 料理長が興味深そうに覗き込んだ。


「はい。少し苦味をつけるんです。」


「甘い菓子に、苦味を?」


「ええ。それがおいしいんですよ。」


 私は笑顔で答えた。


 出来上がったカラメルに少量のお湯を加え、小さな器の底へ流し入れる。


 次に、卵と砂糖を混ぜ、温めた牛乳を少しずつ加える。


 丁寧に濾してから、カラメルを入れた器へ静かに注いだ。


 あとは、ゆっくり蒸して固めるだけだ。


「……なるほど。卵をこのように使うとは。」


 料理長は感心した様子で頷いた。


「完成が楽しみですな。」


「ありがとうございます。」


 蒸し上がったプリンの粗熱を取り、料理長に頼んで氷室で冷やしてもらうことにした。


 その間、私は応接室へ戻った。


 ◇ 


「もう完成したのか?」


 公爵様が尋ねた。


「いえ。あとは冷やせば完成です。」


「……冷やす?」


「はい。冷たくすると、よりおいしいんです。」


「ほう……。」


 公爵様は興味深そうに頷いた。


「温かい菓子は多いが、冷やすことで完成するものもあるのだな。」


「そうですね。料理は温度によっても味わいが変わりますから。」


「確かに、そのとおりだ。」


 公爵様は少し考え込んだ。


「リリア嬢。君は、なぜ料理をするのだ?」


「え?」


「貴族令嬢ならば、料理人に任せることもできるだろう。それでも、自ら作る理由があるのか?」


 私は少し考えた。


「……好きだから、でしょうか。」


「好き?」


「はい。おいしいものを作るのも好きですし、誰かに喜んでもらえるのも嬉しいんです。」


 私は自然と笑みを浮かべた。


「自分が作った料理を食べて、笑顔になってもらえたら、それだけで幸せな気持ちになります。」


「…………。」


 公爵様は、じっと私を見つめていた。


「……そうか。」


 そして、少しだけ表情を和らげた。


「君は、本当に料理が好きなのだな。」


「はい!」


 思わず元気よく答えてしまった。


 公爵様が小さく笑った。


 初めて見る、穏やかな笑顔だった。


 ……あれ?


 私は少し驚いた。


 ……こうして笑うと、意外と優しそうな人かも。


 先ほどまでの鋭い眼差しが嘘のように柔らかい。


 その笑顔を見ていると、なぜだか私まで嬉しくなってしまった。


 ……ちょっと、素敵かもしれない。


 そんなことを考えてしまい、私は慌てて視線を逸らした。


 気難しいという噂だけでは、人柄は分からないものだ。


 それから、しばらく他愛のない話をしているうちに時間が過ぎた。


 やがて、プリンが冷えたという知らせが届いた。


 ◇ 


「お待たせしました。こちらがプリンです。」


 私は公爵様の前へ、小皿を置いた。


 冷えたプリンを器からそっと取り出し、皿へひっくり返したものだ。


 黄色いプリンの上から、艶やかな琥珀色のカラメルソースが流れ落ちている。


 皿を置くと、ぷるん、と小さく震えた。


「…………。」


 公爵様が固まった。


「……これが?」


「はい。」


「ぷりん……。」


 公爵様は皿をじっと見つめた。


「……動いたぞ。」


「揺らしたので。」


「自ら形を保ちながら、これほど柔らかく揺れるとは……。」


「そういうお菓子なんです。」


「……本当に、スライムではないのだな?」


「違いますってば!」


 公爵様は咳払いをした。


「失礼。では、いただこう。」


 そして、私へ視線を向けた。


「リリア嬢。私のために、わざわざ作ってくれてありがとう。」


「……いえ。喜んでいただければ嬉しいです。」


 公爵様は小さく頷き、銀のスプーンを手に取った。


 プリンの表面に、そっと差し込む。


「……ほう。ずいぶん柔らかいな。」


 慎重に一口分をすくい、口へ運んだ。


 ぱくり。


「…………。」


 沈黙。


「…………。」


 公爵様が動かない。


 ……あれ?


 口に合わなかったのだろうか。


 少し不安になった、そのときだった。


「……なんだ、これは。」


 公爵様が小さく呟いた。


「……アルフォンス様?」


「待て……。今、私は何を食べた……?」


「プリンですけど。」


「そうではない!」


 公爵様が顔を上げた。


 その瞳が、驚くほど輝いている。


「舌に触れた瞬間、音もなく消えた……! いや、消えたのではない! この甘美な余韻だけを残して、静かに溶け込んだのだ!」


「は、はい……。」


「卵の豊かな風味! 牛乳の優しい甘み! それらが互いを主張することなく、完璧な調和を成している!」


 ……あ、ちゃんと味わってくれてる。


 私は少し嬉しくなった。


 ところが。


「……そして、このカラメル!」


 公爵様の声が、一段と大きくなった。


「甘さの中に潜む、ほろ苦さ……! なんということだ!」


「え?」


「甘味と苦味。本来なら相反する二つの存在が、この小さな皿の上で手を取り合っている!」


 ……ん?


「まるで、百年ものあいだ争い続けた二つの王国が、ついに剣を置き、和平を結んだかのようではないか!」


 …………。


「争いの果てに訪れた平和……。この穏やかな甘みこそ、人々が長きにわたって求め続けた理想郷……!」


 ……いや、プリンだから!


 公爵様は、さらにもう一口食べた。


「……素晴らしい。」


 その声が震えていた。


「見える……。私には見えるぞ……!」


 ……何が!?


「戦場に花が咲き、兵士たちが武器を捨て、敵も味方もなく笑い合う姿が……!」


 ……プリン一個で戦争終わっちゃった!?


 公爵様は、ゆっくりとスプーンを置いた。


 そして。


 ガタッ!


 突然、立ち上がった。


「リリア嬢!!」


「は、はいっ!?」


「私は今、確信した!」


「な、何をでしょう!?」


「このプリンが世界中に広まれば……!」


 公爵様は胸に手を当て、高らかに宣言した。


「世界から争いがなくなるかもしれん!!」


 ……無理でしょ。


「甘味と苦味が共存できるのだ! 人と人、国と国が分かり合えぬ道理など、どこにあるというのだ!!」


 応接室が静まり返った。


 窓の外では、小鳥がのんびりと鳴いている。


 私は目の前の公爵様を見つめた。


 ……この人、本気で言ってる。


「なんと偉大な菓子なのだ……!」


 公爵様は深く感動した様子で、再びプリンを見つめた。


「この小さな器の中に、世界の理想が詰まっているとは……!」


 ……ただのおやつなんだけどなぁ。


 私はどう反応すればいいのか分からず、とりあえず微笑んだ。


「……お気に召していただけたようで、何よりです。」


「ああ! これほど心を動かされたのは久しぶりだ!」


 公爵様はようやく椅子へ座り直した。


 そして、残りのプリンを一口ずつ、大切そうに味わい始めた。


 ……そのたびに、何かを悟ったような顔をしていたけれど。


 私は見なかったことにした。


 ◇ 


 プリンを食べ終えたあと。


 公爵様は、しばらく考え込んでいた。


 空になった皿を見つめ、それから私へ視線を向ける。


「……今日、君と話せてよかった。」


「え?」


「最初は、祖父たちの約束を果たすための顔合わせだと思っていた。だが、今は違う。」


 公爵様は穏やかに微笑んだ。


「君と過ごした時間は、思っていた以上に楽しかった。」


「……ありがとうございます。」


 私も、少し照れくさくなった。


 やがて、公爵様は意を決したように顔を上げた。


「リリア嬢。」


「はい。」


「君に、一つお願いがある。」


「何でしょうか?」


 公爵様は、まっすぐ私を見つめた。


「私と、結婚を前提に交際してほしい。」


「…………。」


「…………。」


「……はい?」


 思わず聞き返してしまった。


「君の手料理を、もっと食べてみたいのだ。」


 ……料理目当て!?


 公爵様は真剣だった。


「もちろん、それだけではない。」


「……え?」


「今日、君が私のために手間をかけてくれたことも嬉しかった。」


 公爵様は穏やかな声で続けた。


「それに、君が料理について話しているときの笑顔が、とても印象に残っている。」


「……アルフォンス様。」


「自分の好きなことを心から楽しみ、誰かを喜ばせることに幸せを感じる。そんな君の人柄を、私は好ましく思った。」


 先ほどまで世界平和を語っていた人とは思えないほど、落ち着いた声だった。


「だが、突然の申し出だ。今すぐ返事をする必要はない。君の気持ちを大切にしたい。」


「…………。」


 私は公爵様を見つめた。


 気難しいと噂されていたけれど、実際には礼儀正しく、誠実な人だ。


 料理について少々……いや、かなり大げさなところはあるけれど。


 何より、私の作ったものを、あんなにも嬉しそうに食べてくれた。


 それは、料理好きの私にとって、素直に嬉しいことだった。


 ふと、先ほど見せてくれた穏やかな笑顔を思い出す。


 最初は怖そうな人だと思った。


 けれど、料理の話をするときは真剣で、私の話にもきちんと耳を傾けてくれた。


 そして、私が料理を好きな理由を話したときには、優しく笑ってくれた。


 ……あの笑顔、もう一度見たいかも。


 そう思った自分に、少し驚いた。


 ……でもなぁ。


 私は、先ほどの光景を思い出した。


『このプリンが世界中に広まれば、世界から争いがなくなるかもしれん!!』


 ……毎回、あれを聞かされるの?


 プリン一つで世界平和。


 もし、ほかの料理を作ったら、いったい何が起きるのだろう。


 少しだけ、怖い。


 ……けれど。


 ……まあ、悪い人じゃないし。それに……。


 また一緒に料理の話をしてみたい。


 今度は、どんな顔で食べてくれるのだろう。


 そう考えると、少し楽しみになっている自分がいた。


 私は小さく微笑んだ。


「……私でよろしければ、ぜひ。」


「本当か!?」


 公爵様の表情がぱっと明るくなった。


「はい。まずは、お互いのことを知っていけたらと思います。」


「ああ! もちろんだ!」


 公爵様は嬉しそうに頷いた。


「リリア。これから、よろしく頼む。」


「こちらこそ、よろしくお願いいたします。」


 こうして、私とアルフォンス様の交際が始まった。


 貧乏子爵令嬢と、気難しいと評判の公爵様。


 少し不思議な組み合わせだけれど、案外うまくやっていけるかもしれない。


 そんなことを考えていると、公爵様がふと口を開いた。


「ところで、リリア。」


「はい?」


「プリンのほかにも、君が作れる料理はあるのか?」


「ええ。いろいろ作れますよ。」


「……そうか。」


 公爵様は、しばらく考え込んだ。


 そして、真剣な表情で頷いた。


「実に楽しみだ。君の料理には、まだ私の知らぬ世界が広がっているのだろうな。」


 ……また世界の話してる。


 私は思わず苦笑した。


 でも、あんなに喜んでもらえるのなら、また何か作ってあげたい。


 そう思えたのも、確かだった。


 ただ、一つだけ気になることがある。


 ……これから料理を作るたびに、世界の歴史が変わったりしないよね?


 私の心配をよそに、公爵様は満足そうに微笑んでいた。

ここまでお読みいただき、ありがとうございます!


気難しい公爵様と、料理好きな貧乏子爵令嬢のお話が始まりました。


プリン一つで世界平和を語り始める公爵様ですが、これからもリリアの料理によって、さまざまな壮大な食レポが繰り広げられる予定です。


二人の恋愛模様も含めて、楽しんでいただければ嬉しいです!


面白いと思っていただけましたら、フォローや★、応援などをいただけると、とても励みになります。


また、ほかにも短編作品や長編小説を連載しておりますので、よろしければそちらも覗いていただけると嬉しいです。


次回は10月27日の20時公開予定です。


今後とも、どうぞよろしくお願いいたします!

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