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捨てられた女  作者: yukko
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ある晴れた日

今日もあの日と同じ青い空が広がっている。

空を見上げて、春子はそう思った。

あの日から幾つもの年月を経て、高齢者になった。


「あの日も晴れてたわ。

 あの日のことは生涯忘れられない。

 辛い人生の始まりだった……。」


◇◇◇◇

あれは……… 1968年(昭和43年)1月9日。

あの日も晴れていた。仕事から帰って来た夫とテレビを見ていた。


「お父ちゃん、円谷選手が自殺なさったって……。

 東京オリンピックのマラソンで銅メダル取られて……。

 どうして自殺なんてこと、なさったんだろうね。」

「……生きたくても叶わない人が居るのに………。」

「本当にそうだわね。」


産まれて半年の娘が泣いた。


「オムツかしら?」


私は娘のオムツを替える為に立ち上がって、寝ている娘の所へ行った。


「さぁ、スッキリしましょうね。」


夫は娘が産まれてから可愛がってくれていた。

その日は、何も変わらず布団に入った。


翌朝、起きて、いつものように夫を送り出した。

玄関で起きていた娘を抱いて、娘の手を取って「お父ちゃん、行ってらっしゃい。」と振った。

夫は「行ってくる。」とだけ言って出て行った。

そして、帰って来なかった。

あの晴れた日、夫は妻と子を捨てたのだ。

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