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ガンテツ 滅亡のパラドクス  作者: ちみあくた


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第二章 4



 次の日の朝、俺達、女川漁港の朝市にいました。駅まで送るとナナが言い、なら、ついでに港見物すべぇ、って誘ったんです。


 昨日の今日で、ベクラもまだ動かねぇと思ったし、そう思いたかった。

 

 買ったばかりの青いワンピースを着て、ナナは相変わらず港に出入りする船や水揚げされる魚とか見る度、珍しそうにはしゃいでたっちゃ。


 俺も調子合わせたども、本音は切なかった。だって、もうすぐ別れねばなんねって、二人とも知ってたから。

 

 

 

 

 

「……なぁ、ベクラやっつけるまで、俺、一緒にいよっか?」


「論外です」


 港の突堤で試しに聞いてみたら、いつもの身も蓋もねぇ答さ、飛んでくる。


「ベクターに対し、あなたは何の戦力にもなれない。無駄死にするだけでしょう」


 ナナは目一杯、冷たい目で睨んだ。


 けど、今はその裏にあるもの、俺は良~く知ってる。

 

「あんた、えらくノッパリだなし」


「のっぱり?」


「強情っぱりの事でがす。俺、村一番だったども、あんたは良ぇ勝負だ」


「私、強情なんて……」


「俺を危ない目にあわせたくないから、そんな言い方してるんだべ?」


「わ、私に、そんな感情はありません。だって、私は」


「人間じゃないから?」


「……はい」


「あ~、いらすぐねぇ! あんたは形から入り過ぎだなし」


 戸惑い、困った顔しているナナを、俺は思いっきし上から見下ろしてやりました。


「良ぇか、形から入るってのはな、中身に自信の無ぇ奴がやるこった。あんたが何処の何者だろうと、要は心のド真ん中、何が詰まってるか、だべ? 何事につけ最初に決めつけてかかっと、できる事もできなくなる」


「……はい」


「さだめに抗え。諦めて、楽すんな。あんたはあんたの思うままに生きて良い」


 ナナは、素直に頷いた。

 

「上京した晩、俺の歓迎会で社長さんが、そう教えてくれたなや」


「……つまり……今、言ったのは、他人の受け売りですか?」


 ナナの目が、いぎなし、冷たくなる。


 だども俺は突堤の先、水平線の境が見えない海と空さ、眺めて、大声で笑った。

 

「仕方無ぇよ、俺、まだ中身無ぇもの。空っぽで上京して、毎日仕事覚えて、空っぽの中身、埋めていくんだもの」


「それ、開き直り?」


「ナナさん、空っぽってのも良いぞ」


 大きく背伸びすっと、遥か彼方、太平洋の大海原へ漕ぎ出す船、女川へ寄港する船の行きかう様が見えたっぺ。


 俺の親父も漁師だ。三陸沖で、沖合漁業に精出してる。


 今頃、同じ青、見てんのかなや?


 そんな事、思ったら、言いてぇ事が波みてぇに押し寄せてきたべし。


「今が空っぽだから、思うままに生き、なりてぇ自分の形、さがしていく。俺ぁ、まだ若ぇ。この日本って国も。戦争でぶっ壊れてなし、焼け跡から生まれ変わってなし。こん先、どんなふうに変わってくか、もう楽しみで、しょうがねぇ!」


 俺、思いっきし、海へ吠えた。


「……とても幸せな事ですね、未来を信じられるって」


 何ンでか、ナナは眩しそうな顔してた。良い天気だで、強ぇ陽の光さ、目に入ったのかも知れね。


「轍冶さん」


「ん?」


「あなたの未来、私も見てみたい」


 俺達、何時の間にか、すぐ側で正面から向い合ってた。


 どうこうする気、何ンも無ぐて。


 ただ自然に唇が近づき、もう少しで触れ合おうとした時、船着き場の方から誰か近付く気配さ、したんです。






「お取込み中、無粋ではあるが、最後まで見物するのも悪趣味だと思ってね」


 歩いて来る三人の漁師は、海から戻ったばかりに見えた。けんど、外見と不釣り合いの流暢な言葉、使ったなし。


 んで、異様なのは、その目だ。


 白目のとこまで黒く淀んで、瞳全体が、底なしの穴みてぇに見える。


「……ベクター」


「こいつらが、あんたの言う、ベクラのおまけか?」


 ナナは頷き、庇うように俺の前さ、出た。


「GAN―7、昨日は慌てた。我々に先回りした上、光輪を閉じようとするとは」


「しかし、ガンテツを降り、そこの現地人とうろつく行為は余りに軽率」


「おかげで任務を、予定より速く進める事ができそうだ」


 漁師三人の腕が黒くなり、海蛇みてぇに伸びて、くねり始めた。


 コイツら、正真正銘の化け物だ。

 

 俺、気合入れて拳握り締めたども、そのまた後ろ、今度はバイクに乗った男が、凄ぇスピードで突堤、走ってきた。

 

 海へ化け物さ跳ね飛ばし、モダンなヘルメット取って、アメリカ映画張りにニヒルな笑い、浮かべて……

 

 俺、その顔に見覚えがあったでがす。

 

 霞ヶ丘競技場で、俺に逃げろって命令したカッコ良い人だなし。

 

「……あんた、何でここさ、いる?」


「仕事柄、君達と巨人に興味がある」


「仕事? んだば、あんた、やっぱりスパイか、何か?」


 男はニヒルに首さ、傾げた。


「後で話を聞かせて貰うが、良いかな?」


 俺、007の映画、何本か見てたから、ちょっとワクワクしたなす。

 

 でも、そんな場合で無ぇべさ。

 

 ベクラのおまけは、ビヨ~ンと体伸ばして、簡単に海から突堤へ戻ってきたんです。

 

「貴様ら、何者だ!? 共産圏の諜報部員か? それとも、ナチスの残党か?」


 奴らは答えず、逃げる俺達、追ってきた。


 警告が無視されて、男の人は懐から拳銃さ取り出し、撃ったんです。これがまぁ、全然、効かね。コンニャクでも撃った感じで、前から後ろへ抜けちまう。

 

「逃げろ! 君達、早く」


 男の人はもう一回、バイクで体当たりしようとした。そしたら、敵の腕が槍の形に伸びて、その胸さ突く。


 さっきまでニヒルに笑ってた口が、血ぃ吐いて、バイクもろとも海へ落ちました。

 

 普通なら助ける所だども、俺達も危ねぇ。テレビの月光仮面なら絶体絶命、又、来週~って、なる感じだなし。

 

 何しろ敵の動きが早ぇ。

 

 突堤の真ん中で、又、ビヨ~ンと体伸ばした奴らに、前へ回り込まれました。

 

 

 

 

 

「逃げられる訳、無いだろう? そんな足手まといを連れて」


「もう、逃げません」


 三人が凄ぇ勢いで、腕、突き出す。


 言葉通り、ナナは逃げねぇ。で、その体がガンテツと同じ黒鋼色に染まったんだ。

 

 柔らかい肌は鎧みてぇに奴らの攻撃、弾き返した。

 

「……轍冶君、見ないで」


 ナナの呟く声さ、聞こえました。


 けど、俺、あんまし驚いたもんで、目ん玉ひん剥いてたなや。


 すっとナナは両の掌を敵へ掲げた。競技場で、ガンテツが光の輪を閉じようとした、そん時の姿勢でがす。

 

「同じGANシリーズでも、あなた達と能力が違う。私とガンテツは、姿を変えられない代りに……」


 たじろぐ連中の周囲が、ボッと光った。


 蜃気楼みてぇに空気が揺らぎ、おぼろげな輪っかさ、浮かぶ。

 

「重力波で時空間へ干渉し、発生した光輪を閉ざす事ができる。小さな規模なら、逆に疑似的な小光輪を作り出す事もできる」


 ベクラのおまけは、もがいてた。


 でも、光の輪っかに捉えられたら、簡単には逃げ出せねぇ。

 

「何処か、遠くへ飛ばしてあげるわ」


「……こちらも二の矢は用意している」


 輪っかの輝きに呑み込まれて、奴らの姿さ消える寸前、一人が腕の槍、伸ばした。それはナナの手前で鋭く曲がり、隣にいる俺の方へ……


 胸がチクッとしたなし。

 

 派手に血ぃ噴いてビックリしたども、妙に痛くなぐて、代りに気ぃ遠くなってきた。


 ナナの、俺を呼ぶ声、しました。


 海の彼方から、あの耳障りに吠える声も耳へ飛び込んできたなや。薄れていく景色の中に港へ迫る大鋼獣の姿、見えました。

 

 魚からトカゲに形が変わっていて、一歩進むごとに打ち寄せる波が大きくなんだ。堤防へ打ち寄せ、削り、乗り越える。ありゃ、もう津波だべさ。


 あぁ、釣り人が海に呑まれてく。街の人達の悲鳴があちこちで聞こえる。

 

 こんな大事な時さ……ナナ、助けてやんなきゃなんねぇのに、俺、何で動けねぇかな?


 もう、俺の事さ、良いがら、行け。


 頑張れ。

 

 そう言いたかったけんじょ、もう口を動かす力も残ってなくて、俺の目の前、とうとう真っ暗になったべし。


読んで頂き、ありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
これは!! 大ピンチ?!!
ちみあくた先生へ。 ここで、月光仮面が出て来ますが、何と、私の子供時代の白黒テレビです。 時代が分かる描写です(^_^) 今の若い人でも、月光仮面の歌は、意外に知っています。 職場の新人職員が、…
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