表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ガンテツ 滅亡のパラドクス  作者: ちみあくた


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

32/66

第二章 3



 地下の繭から、先がドリルになってる太い管さ、地上へ通し、そこから俺とナナは人気のない丘に出ました。

 

 お互い口利かねで、しばらく海沿いの道さ歩ぐ内、女川の漁港が見えてきた。

 

「送っでもらって、ありがとう。こっからは一人で行けるすけ」


「……街まで、お送りします」


「もう良いよ」


「私には責任がありますから」


「何の?」


「あなたをここまで連れてきた責任です。野垂れ死には、やはり困る」


 言うだけ言って、又、ソッポさ、向く。


 トコトン、可愛げの無い娘だと思ったけんじょ、俺が早足で歩き出したら、慌てて後からついて来た。

 

 時々、緊張した目で辺り見回してな。


 ガチガチに体固くしてる分、歩き方も何ンかトボトボって感じがしてなす。子供の頃、道端に捨てられてる子犬さ拾った時の事、思い出しました。

 

 んで、気が付いたんです。

 

 憎まれ口叩いてっけど、コイツ、もしかして、心細いだけなんじゃねぇべか?






 夕焼け空の下、女川町の路地に入ってもナナは俺の後さ、ついてきた。


 女川は漁業が盛んで、午後より朝方の方が賑わう所だけんじょ、丁度、夕飯の買い物時で人出が多かったんです。


 水着みたいなカッコじゃこっちが恥ずかしいで、間に合わせに俺のシャツ、羽織らせてな。汗臭いだの、垢抜けないだの、何かと文句たれるけんど、そっただ問答無用だなし。


 んで、誰かとすれ違う度、ナナの奴、ちっとだけ俺の側さ寄る。その癖、珍しい物見つけっと目ぇキラキラさせて、近寄ってく。


 まんま修学旅行の女学生さんだ。


「……町さ着いたども、あんた、まだ俺と一緒で良いのけ?」


 ちょぃとからかったらナナは唇を尖らせ、大急ぎで冷たい顔さ、こしらえた。


「今は偶然、私とあなたの進む先が同じであるに過ぎません。敵の出現を待つ間、私には物資を補給する必要がある」


「つまり、買い出し、け?」


「はい」


「この町の事、全然知らねぇ癖して、一人で大丈夫?」


「……問題ありません」


「ホントに? 一人で心細くねぇの?」


「そういう感情は、既に捨て去っています。だって私は」


「ヒトじゃねぇから?」


「……はい」


「んじゃ、俺はここでさいなら、だ」


 わざと冷たく言ってナナに背を向け、俺、さっさと駅の方へ歩き出した。んで、十まで数えて、振返る。


 正面から目ぇ合いました。ポツンと立つナナの、寂しそうな瞳と。


「なぁ、あんた」


「……はい」


「取引、しねか?」


「はい?」


「あんたの買い物、手伝うから、俺の旅費さ出してけれ」


「……了解です。問題、ありません」


 もう、ネコまっしぐらの勢いでな。ナナが俺ッとこ駆け寄ってきて、それからしばらく二人で通り、ぶらつきました。






 東京オリンピックの開会式に巨人が現れた事は、何処でも噂になってたなし。


 でも、割と皆、呑気に話してたんです。でっけぇ虫や、その被害についちゃ、あんまり報道されてなかったから、政府の偉い人が口止めしたのかもしんねぇな。

 

 ナナは野菜や穀物の種、山程、買った。繭の中に植物さ育てる場所があって。そこに植えっと、すぐ大きくなるそうです。


 燃料とかは、今は要らねぇって言う。


 あの化け物……え~、ベクラって奴と同じ燃料……海の底にあるアビ何とかってのでガンテツは動いてて、効率良いから、繭に蓄えた分が有れば100年は大丈夫だとか。


 凄いなや、実際。後でウチの社長が、血眼になって秘密を探ろうとしたのも、当然だと思います。


 買い物の支払は、金時計でしました。


 お札も小銭も無かったけんじょ、ナナは金の懐中時計さ沢山持ってて、それ、質屋で現金に換えたんです。


「路銀の代りにと、父が渡してくれました。金は光輪を通過しても、性質変化を免れる素材の一つなので」


 ナナは時計について、そう言ったべし。


 でも、ヒトではない、作られたモンだと言い張る娘に、何で親だけいるんだか?

 

 聞きたかったども……止めた。


 ナナがちっとずつ、ほんのちっとずつ、笑うようになっで、そいつ、消したくなかったんです。


 えらくメンコい笑顔でなや。

 

 無性に写真、撮りたくて、俺、光代さんのカメラ、そ~っと向けました。でも、気付いたナナが片手掲げた途端、火花上げて、カメラが熱ぅなったっちゃ。

 

 俺、アスファルトの上へ落としちまって、モダンなカメラさ、アチコチ吹っ飛び、すっかりオシャカでがす。


「あ~、光代さんに怒られるぅ。コレ、もう直んねぇかなぁ」


「……すみません。でも、あなたが急にカメラを向けるから」


「ナナさん、ビックリした?」


「私の写真は、災いの素になりえるのです。GANベクターが健在である限り」


「あぁ、ベクラ?」


「……名前はどうあれ、この地で見失えば、敵は潜伏し、おそらく35年の長きに及ぶ戦いになるでしょう」


「35年!? なして、そんなに時間、掛かるの?」


「今日、出現した光輪が、次に発生するのは1999年だからです」






 ナナは、壊れたカメラさ拾い、丁寧に拭いながら、信じられねぇ話、始めた。

 

 この世に光の輪が現れるのは、後にも先にも二回だけ。最初が今日、次が35年後、1999年の春。二度目の方がずっとでっけぇ輪になり、簡単には消えねぇ。

 

 ナナが言う「敵」は、その二度目の輪が出た時、途轍もない悪企みさ、俺らの世界へ仕掛けようとしてるそうです。

 

 ガンテツは、食い止める為に来た。

 

 逆に大鋼獣は、35年かけて企みの準備を整える為、やって来た。

 

 

 

 

 

「GANベクター……ベクラの中には、工作員が搭乗しており、既に人間社会へ侵入を果たしているかもしれません」


「工作員って、スパイの事だべ?」


「彼らに私の写真を見る機会があれば、そこから、あなたへ辿り着くでしょう。何せ1999年まで、時間だけはたっぷり有るのですから」


「こっちが先に見つけて、やっつけちまえば良い」


「彼らは自由に姿を変え、他人を操る能力を与えられていて、捜索が極めて難しい。ヒトに似て、ヒトならざる者。GANシリーズのシリアル・ナンバーを持つ私と、ある意味では兄弟とも言えるベクターα、β、γの三名です」


「たった三人しかいねぇのけ?」


「ベクラ本体を含めて四体。こっちは私とガンテツの二体。他は誰も来ない。光輪が二つの世界を再び繋ぐまで」


「で、もし、負げたらどうなる?」


「……言った所で、あなたにはわからないと思います」


 そのナナの言回しに聞き覚えさ、あった。でも俯いた顔、前と全然違って見えたなし。わからねぇから言わないんじゃなく、辛ぐて言えねぇんだと、俺、思った。


 そんだけ恐ろしい事が起きる、と。


「あの……これ、元通りにできそうです」


 しばらく黙ってたら、ナナがカメラさ、こっちへ差し出した。


「コクーン・ベースに戻れば修理は可能ですし、素材を見る限り、構造のスキャニングと3Dコピーで新品を用意する事も、不可能ではありません」


「つまり、俺も戻らねぇとダメ?」


「あなた個人のリスクを考慮すると、お勧めできない選択肢ですけど……」


「う~ん、借り物の大事なカメラだし、仕方ねぇかなぁ」


 俺、わざと難しい顔して、カメラさ、受け取りました。


 内心、小躍りしてた。遠い未来の心配はさて置き、もう少しナナと一緒にいられるのが嬉しぐて仕方ながったんです。

 

 繭に戻った後、俺、故郷の気仙沼で覚えた漁師料理の腕さ、振るいました。ホヤの刺身はナナの口に合わなかったども、後は綺麗に平らげた。


 アイツには、もう何ンも訊かず、代わりに俺の事、夜更けまで話し続けたなす。子供の頃の思い出、拾った子犬、集団就職に来た日の心細さや今の職場の温かさも。


 ナナは、椅子の上で膝抱えて、目ぇキラキラさせながら、聞いでました。


 楽しかったなや。もう、コイツがヒトだろうが、作りモンだろうが、俺、どうでも良ぐなってた。


読んで頂き、ありがとうございます。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
もう!! 完全に恋ですね(#^.^#)
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ