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偽聖女として追放されそうになりましたが、それを知った女神様が激怒したので大変な事になりました  作者: Izumi
4 禁術の勇者召喚だと気付かず発動してしまい、女神様に大目玉を喰らった

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禁術の勇者召喚だと気付かず発動してしまい、女神様に大目玉を喰らった

3話目の『バッドエンドのその先で〜』で世界が滅びた後、なんやかんやで冥界にいたバルドルとかが復活し世界を再生させた後の世界の話。

 召喚魔法は精霊や神霊、悪魔と呼ばれる神秘の存在と契約し、力を借りたり使役する類いのものが主流で、いかに力を持つ存在と契約できるかで魔術師としての格が決まるとされている。

 (ふる)い時代には異世界から特定する条件に合致する相手をこちらの世界へ召喚する召喚魔法もあったそうだが、今は滅んで名も存在も消された国が頻繁に勇者召喚を行い、尊ばれるべき勇者たちを利用するだけ利用して理不尽な理由で廃した事を神々が大変お怒りになったので、女神スルーズが旗頭となって彼の国を殲滅し──異世界召喚魔法はその時を機に禁術とされた。

 名も存在も消された国の話は『勇者たちの鉄槌』と呼ばれる御伽話として現在まで伝承され、女神スルーズが世界に向けて「次に勇者召喚を使ったらその者の国を滅ぼしに行くからね」と凄んだ事もあって大人は子供に「悪い事をしたら女神様が飛んで来てお仕置きされるぞー!」と脅すように最後に締めくくるのだが、どんなに注意していてもやらかしてしまう者はやらかしてしまうのである──。





「この辺の文字が消えていたから、多分これだと思うんだよね……」


 パウリーネは魔術オタクで、古の召喚魔法の研究をしていた。

 一部が欠けた魔法陣の資料を元に、経験則から本来はこうだったんじゃないかと再構成して床に描いていたのだが。

 魔法陣が完成した瞬間、パウリーネの魔力の一部が魔法陣に取り込まれていったのを感じた。


「あれ? 何か喚んじゃった?」


 発動させるつもりはなかったのに、魔法陣は光を発して何かを喚びだす動作をしている。

 感覚的に()()()()()のを察知したパウリーネは、魔法陣から距離を取るべく数歩後退(あとずさ)った。

 刹那、眩い光が部屋に満ち──その光が消えた時、魔法陣には黒髪黒目の精悍な青年がいた。

 召喚された青年は、いきなり見知らぬ場所へ飛ばされてビックリした、と言わんばかりの表情をしていて、気配を察したのか魔法陣の外にいるパウリーネを見た。

 青年と目があったパウリーネは、状況から青年をアクシデントで召喚してしまったと悟り、謝罪の言葉を口にしようとしたがそれを遮るように至近距離で爆音がドーンと轟いたので、それどころではなくなった。


「ひぃ〜」


 建物が揺れるのを感じ、身を屈めて両腕で頭を庇いながら音がした方を見遣ると、そこにあった壁に大穴が空いており、そこから外気が入り込んできて部屋の中を埃やら何やらがもうもうと舞い踊る。

 髪も風に煽られるように乱れに乱れ、思わず目を閉じてしまったパウリーネだったが、次に目を開いた時には赤い髪にルビーの瞳の少女が仁王立ちしてパウリーネを見下ろしていた。


「えっ」


 魔法陣で召喚してしまった青年とは違う現れ方をした少女の出現に驚きながらも、途轍もない圧を感じる。

 だならぬ雰囲気の少女にパウリーネはどこか既視感を覚えながらも、頭の中にある情報の引き出しを(さぐ)る。

 パウリーネ専用の魔術の研究棟である尖塔の壁を突き破って現れるような存在は限られていた。

 よって、導き出された答えは。


「女神スルーズ……?」

「いかにも。ボクはスルーズだ」


 怒鳴り込みに来た雰囲気の女神スルーズは両腕を組み、名前を言い当てられてしまった事で出鼻を挫かれたかの様な表情をしている。


「なんで女神様が空から降ってくるんです?」

「それはこっちのセリフだよ」

「へ?」

使()()()ね?」

「何を、でしょうか」


 心当たりがなかったので、女神スルーズの言葉の意味がわからず返すと。


「キミ、自分が何をやったかわかってる? ──()()()()()()、勇者召喚! キミは、ボクたち神々が禁忌指定した勇者召喚を行なったんだ」


 女神スルーズが何度も勇者召喚というワードを口にしたお陰で、パウリーネは顔から血の気を無くした。


「という事は、あの方は……」

「今まで召喚された勇者の一人だよ」


 パウリーネと女神スルーズのやり取りを静観していた青年──勇者は困った様な顔で笑い、女神スルーズへ会釈した。雰囲気からすると勇者は女神スルーズとも顔見知りなようだ。

 未知の魔法陣の研究だったとはいえ、パウリーネは禁術と知らずに行使してしまった事をようやく認識し、勢いよく額を床に打ち付けるようにして土下座した。


「ずびばぜん゛。でぎごごろ゛でや゛っでしまいばじだ……」


 ごちんと鈍い音がし、相当痛い筈だったがパウリーネはそれどころでは無いらしく、謝罪の言葉を続ける。


「どゔか、罰はっ、わだじだげに゛ゔぉね゛がゔぃじま゛ずーーー」


 えぐえぐしゃくりあげ、ギャン泣きして謝るパウリーネに女神スルーズはドン引きし、勇者は苦笑した。


「まぁ、あの後ラグナレクがあって一回世界滅びてるし、それからうん百年経ってるからねぇ。異世界に通じる門は禁術指定した後に神々が閉じてるから、異世界召喚は必ず失敗するようになっていたわけだけど、本来の勇者召喚とは違う形で不完全な勇者召喚が今回行われてしまったからどうするべきか」


 何やら情報量が多い。


「あの国みたいに搾取目的ってわけじゃなかったみたいだしなぁ」


 御伽話にあるように、容赦なく罰を下されるとばかり思っていたパウリーネは、予想外に柔軟な態度の女神スルーズの態度に胸を撫で下ろしそうになるも、その刹那──緊急時のサイレンが尖塔内に鳴り響いた。

 国を護る結界に何らかの干渉があり、破られた時に鳴るものだったので、女神スルーズの塔への突撃がきっかけかと思い、涙と鼻水でぐしゃぐしゃな顔でパウリーネは女神スルーズを見上げる。

 それに対し、女神は否定するように(かぶり)を横に振った。


「ボクじゃないよ。でもこの気配は……」


 女神スルーズが何かを言いかけた直後、ドーン! という音と共に塔が揺れ、パウリーネは両手で頭を庇いながら身を屈めた。

 再びもうもうと粉塵が舞い踊る。泣いた後なので色々な細かいものがパウリーネの顔に張り付くのだが、それがおさまると女神スルーズが開けた大穴が少し広がっているのが見え──先程までは尖塔の外の青い空や風景が見えていたのに、こちらを覗く大きな濃紺の眼があった。

 夜空を閉じ込めたような色をした眼の瞳孔は縦長のもので、その眼を縁取るような濃紫の縁取りは白銀に輝く鱗に映えている。全体像は見えないもののその姿は、どう見ても竜種。

 しかも、希少種すぎて目撃した者は近年いないとされる古代龍だ。


「ギャオオーーン!」

「ひぃぃぃぃぃぃー!」


 女神の襲来で肝を冷やしているのに、希少種の古代龍も突撃してきたのでその咆哮にパウリーネは身を縮め悲鳴を上げていると。


「ルギア、ステイステイ。大丈夫、俺は召喚されただけで何もされてない。だから落ち着いて」


 勇者が壁の大穴に歩み寄り、古代龍を宥めるように話しかけていた。

 勇者に対して古代龍はぎゃおぎゃおと鳴くので、彼は労うように鼻先を撫でる。


「──え? 300年探してた? マジで? それは心配かけたね。俺的にはそんなに時間経ってないから実感あまりないんだけど、迎えに来てくれてありがとう」


 爽やかな笑顔で古代龍に語りかける勇者と、突撃時とは違ってくるくると甘えたように鳴く古代龍だったが、鼻先だけの触れ合いでは物足りなかったようで、古代龍は壁の大穴の面積を額でガシガシと削って拡大させ、頭が屋内に入るようにすると、「もっと撫でろ」と言わんばかりにぎゃおと鳴いた。

 古代龍が何を言っているのか解らないものの勇者の言葉から察するに、パウリーネが召喚術を行った影響で過去に残された古代龍は勇者が戻ってくるのをずっと待っていたのだろう。

 何となくホッと胸を撫で下ろしてしまったパウリーネだったが、研究室の扉がドンドンドンと叩かれて「姫様、ご無事ですかー!」と、じいやの声がして。

 パウリーネは内心「あっ、マズイ」となりながら女神スルーズを見上げた。


「キミがやらかしたのだから、責任はきちんと取ればいいだけだよ」


 とてもいい笑顔で言われてしまったので、パウリーネは観念して扉の向こうのじいやを落ち着かせるべく立ち上がるのだった。

《登場人物紹介》


パウリーネ … 魔術オタクの王女。召喚魔法の研究をしていた。迂闊の権化のような妙齢の女性。

 解析途中の魔法陣が勇者召喚だとは思わず、ビビる。

 ピタゴラスイッチ的に色々同時に起こったのでいっぱいいっぱい。

 禁術の勇者召喚が発動してしまう→ セコム1発動(女神スルーズ突撃)→ セコムその2飛来(古代龍突撃)


 最初はベルナデッタという名前だったものの、書き途中の別の作品に登場する人物にも使っていたのに気付いて名前変更(気を付けてますが、本文でベルナデッタのままになってたら名前を変えた名残りです)。

 パウリーネという名前は、パウリ効果からちょこっと来ております。



勇者 … サラサラの長い黒髪を後ろに一つに纏めて束ねた、凄腕の竜騎士(短編ゆえにこの設定はあまり反映されておらず)。

 名前は山田(ヤマダ) 和真(カズマ)。2話目の俺くん。

 パウリーネの魔法陣の解析が不十分だった為に、過去の時代から引っ張って来る形の召喚をされた。

 ラグナレク後の、新たに構築された勇者を必要としない平和な世界(和真からすればいきなり数百年先の未来へタイムスリップをしてしまった)なので、「俺何すればいいの?」な状態。

 幸運にも、転移する前の時代の相棒(古代龍)が生きており、和真の気配を感じて嬉し泣きしながらビューンと飛んできた。



ルギア … 勇者カズマがテイムした古代龍。カズマがポ◯モン好きだったのもあって、契約時に名付けた。同じ名前のポ◯モンはドラゴンタイプではないが、咄嗟に名前が出たのがルギアだった為。

 白銀のドラゴンなので珍しく、アルビノではないので瞳は濃紺。アイシャドウのような眦は濃紫。

 急に消えてしまった主を300年待ち続けた。何処かへ行ってしまったのは感覚でわかっても、契約者との繋がりが切れていなかったのでカズマが生きているのは感じていた。

 パウリーネの召喚魔法発動後、行方不明だったマスターとのパスがいきなり復活して繋がったので歓喜しながらパウリーネの研究塔へドーンと突撃。

 古代龍ルギアが飛んできたのでパウリーネの国は大変混乱するが、女神スルーズが取りなす予定なので何とか収拾させた。



女神スルーズ … パウリーネが不用意に召喚術を使用してしまったので、セコム(召喚術が発動すると自動で召喚者の処へ跳ぶ)が発動した。

 隕石みたいに落下しながら外から飛び蹴り(ライダーキックみたいなやつ?)で壁を貫通させて、キックでできた大穴からダイナミックお邪魔した。

 パウリーネが召喚したのが和真だったせいで、数百年マスターを待ち続けていたルギアも飛んできたのでああなった。

 禁術を使った咎で国が消滅一歩手前だったが、パウリーネがあんなだったし(女神スルーズ視点でなんか憎めない奴だった為)、ルギアが来ちゃって色々面倒になったのもあって、召喚魔法でパウリーネが古代龍呼んじゃったことにして、和真はルギアのパートナーなので先に召喚してしまったという無理がある辻褄合わせをする。

 これには「まぁ、パウリーネ様だしな」と周辺は納得してしまう。

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