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ゲームのGMと思った? 残念!異世界管理人でした!!  作者: 黒野されな
2章 戻れない『日常』と正すべき『日常』
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救出作戦? その3

店の前に付くと…あれだけの騒ぎになったのに衛士が居ない、全員門の方に向かったのだろうか?

最初に店に入った時のことも考え『完全隠蔽』を使用する。


"ハチ、店に着いた。どこにいる?"


"隠し部屋だそうだ、こちらから開けるからしばし待て"


店内はを見渡すと戦闘で多少荒れてはいるが、ポーションや帽子、マント、ブーツに小さめのナイフやランタン…雑貨店だろうか。

ぱっと見では怪しいところは無いが…棚と棚の間からハチが現れた。

こっちこっちと手を振っているので行ってみる。

棚と棚に囲まれた行き止まり…壁に付いたランプをハチが引っ張るとカコン…と軽い音がして壁が開いた。

壁の奥は階段になっており、地下への入り口になっていた。


"この下に人種から亜人種から…様々な奴隷がいたぞ。醜いものだ…"


"あの豚オーナーは奴隷商か、胸糞悪い。"


コツコツと螺旋になった階段を降りた先は思いのほか広かった。

40畳はあるであろう石で出来た通路に牢屋、まさに牢獄と言ったほうが相応しいだろう。

中は10部屋別れ、それぞれ、人種、亜人種、耳長種、初めて見たが土精種…いわゆるドワーフまで居た。

どいつもぼろ布のような最低限すぎる服装に首輪、足に繋がれた鉄球。

見る限り中には…弄ばれたような人種や耳長種も見受けられる。

これは人の所業ではない。

こちらの世界ではあり得るのかもしれないが、私の正義感では到底許せる事ではない。


牢獄の一番奥、通路の終わりにあの豚が蹲っている。

ハチが足を折ったと言っていたが確かに右足の脛が九の字になっている。

顔を苦痛に曇らせ脂汗を流し「ぐぅ」とか「ぎぃ」とかまるで本当の豚のようだ。


「それで、公爵の妻と娘は…そこの牢の中ですか。」


薄暗く、不潔な牢の中には相応しくないドレスの女性…と少女が入っていた。

胸を強調するような淡いピンクのドレスに鮮明な赤のウェーブの髪が特徴的な30代の女性…この人がメルラダさんだろう。

隣の10代後半に見える母親ゆずりの大き目の胸に赤いストレート髪、勝気な釣り目、深紅のドレスが良く似合っている…この娘がメリーベルかな?


「夜分遅くに失礼致します。公爵閣下の奥方メルラダ様に娘のメリーベル様かと思われますが、いかがでしょうか?」


「…貴方は夫の雇った傭兵か何かかしら?」


「そのようなものです。私はコーウェル公に御二人の救出を依頼されて馳せ参じました。」


「…そう、ではさっさとこの檻から出して頂けるかしら?埃っぽくて敵わないわ」


「直ちに、」と神刀を抜き放ち一閃、二閃、三閃…すると太さ2センチ程の太さの格子が細切れになり石で組まれた床にカランカランと音を立てて広がる。


「助けたついで…と言っては何ですが、この豚…失礼、商人はお知り合いですか?」


「夫の所に何度か出入りしているのは見たことありますが…名前は…何だったかしらね…」


「お母様、ブタール氏だったと記憶しています。」


名は体を表すというがあまりにも安直っぽい名前にちょっと引く。


「では…そこの豚、公爵の家族を狙った理由をこの場で今すぐ言いなさい。5秒以内に言わねば左足も折ります。ごー、よーん、さーん――」


「ひっ、言う!言う!」


言うと、言っているが理由を言っているわけではないのでカウントは止めない。


「にーい、いーち――」


「玩具だ!玩具にしたかったんだ!!」


二人はそれこそ豚を見るような目でブタールを見る。

そういう趣味を持っている者にはご褒美だろうが、足が折れて唸っている奴には自分の安全のほうが重要だろう。


「…いいでしょう、約束通り足は折りません、次の質問です。公爵邸に届けられた手紙は偽装の為ですか?」


「そうだ!あれで昔の被害者にでも目が行けばそれだけ時間が稼げるからな…」


「最後の質問です…この奴隷たちは何ですか…?」


「商品に決っているだろうが、各地から集めたワタクシの自慢の商品だ!」


腹は決まった。


「お二方…お待たせしてしまい申し訳ありません。上の階でもう少々お待ち下さい…後ほど公爵邸まで送らせて頂きます。」


「…分かりました、恩人の言葉には従わなければね、メリー、上で待ちましょう。」


「はい、お母様。」


"ハチ、念のため2人を護衛してくれ。もしあの兵士たちが来るようなら――"


"殺さずに…だな、承知しておるわ"




上へ移動する3人を見送り、未だ蹲ったままの豚を見据える。


「ここまで話したんだ!もう良いだろう!?」


まだこいつは助かるつもりで居たのか。


「そうですね…正直に話した分だけは評価しなければなりません。」


ブタールに手を向ける。


「…何を…している?」


豚が怪訝な汗まみれを顔をして私を見つめる。




『ファイヤーシュート』

火属性の初級魔法であり、魔法士であれば最初の攻撃手段として覚える攻撃魔法。

こぶし大の火球が飛び、ぶつけることで熱量によるダメージを与える。

これを応用して焚き火や竃に火をつける…なんて生活的な使い方も出来ることから魔法士でなくても覚えようとする者は多い。

しかし初級故に威力に難点があり、決定打にはなりにくい。


なぜこんな魔法の説明を今するかって?




「"ファイヤーシュート"」


「なっ!約束がち――


手のひらから青い炎が一直線に伸び、ブタールの顔をジュッという音のみを残して焼き尽くし、地下室の壁に黒い穴を穿つ。

初級の魔法といえども全ての職、全てのスキルにより底上げされた能力では必殺になり得る。

もう誰も聞いていないと分かりつつもこれだけは言わないといけない。


「…私が約束したのは足を折らないということだけ。苦しませずに死ねただけ幸運に思いなさい。」


今更ではあるがどうやら自分は、正義感に引きずられている感じが否めない。

それに人を殺しても今の私は特に何も感じていない。


まずは2人を家に返して『仕事』を終わらせるとしよう、そして公爵の処置も決めなければならない。




コツコツと階段へ向かう私を引き止める声がする。


「しばしお待ちを、いと強き御方…」


まるで年を重ねた古強者のような、CVを選ぶなら大塚明夫さんのようなナイスミドルなボイスが私の足を止めた。

牢の中を見ると、片膝を立て、胸に手を当てて首を垂れる…部族や種族の違いによるがこれは相手に敬意持った姿勢であることは間違いない。

下げた頭には黒い猫の耳が見える…片耳が欠けているのは歴戦の証だろうか。


「…私を呼び止めた要件を聞きましょう。」


「感謝いたします、いと強き御方。」


「顔を上げる事と発言を許可しましょう。」


顔を上げると…黒猫という印象を強く受けた。

黄色の猫目に猫にしてはやや尖り気味の牙と長い髭…猫型亜人だろうか。


「ハッ、貴方様は我々の主人であったあの憎き人種を殺して下さいました。その為、ここに囚われた奴隷…私を含め亜人が2人、人種が2人、耳長が1、土精が1…計6名が主不在の状態です。」


「…主不在なら好きになさい、格子は壊してあげるから。」


神刀をささっと振り、格子に大きな穴を作る。


「…僭越ながら、奴隷は『制約の首輪』により主の命令無しでは自由な活動が許されておりません。」


つまり前の豚オーナーを私が殺してしまったが為にここに捕まっている奴隷たちは主無し状態で、しかも主からの命令がなければ移動も出来ない…と?


「私は奴隷の扱いには詳しくありません…主無しの場合あなた達はどうなるのですか?」


「牢を出たとしても…この建物…前の命令が活きているのであれば牢から出ることすら叶わぬでしょう。」


「仮に出ると…どうなりますか?」


「私たちは商品奴隷ですので、精々が首が締まる、苦痛が与えられるのどちらかのはずです。ですが本来の効力であれば…呪いによりその場で絶命もあり得ます。」


話を聞きながら『制約の首輪』を検索…あった。

装備レベル10、付けた相手に制約の呪いを掛ける呪具。

軽い苦痛を与える程度から即死に至るまで付与できる呪いは多岐に渡るが使うにはそれ相応の力量が必要となる。

無理に外すか壊すといった手法をとった場合はランダムな呪いが発生しいずれにしても装着者に重大なペナルティを負わせる。

権限を持った者の解除か、中級(場合により上級)の解呪魔法でのみ外すことが出来る。


「面倒な装備ですね…」


えーと、解呪魔法は…そのまま『解呪』『中級解呪』『上級解呪』と…。

解呪することは問題ない、その後が問題だ。


「私は…少なくとも私と共にいるこの者は貴方様に新しい主になっていただければと思っております。」


「……自由の身を望まないのですか?」


「我らの種族では強者に付き従うのが是とされています。貴方様はあの人種の兵士たちをモノともせずに来られた…であれば従うのは必然です。」


「そうですか…ですが私は奴隷が欲しい訳ではありません。」


正直な所、あの村と私の信頼関係の構築、盗賊団の受け入れ、エミエの雇用…途中の案件が山ほどある中で奴隷の面倒までは正直見ていられない。

しかし、放っておけば死んでしまうと分かっている者を見捨てることは出来ない。

ここは秘儀を使うしかないか…


「"範囲指定追加+上級解呪"」


牢のあちこちからカラン、カランと音が響いてくる。

目の前の黒猫?亜人からも首輪が落ちる。


「…貴方様にさらなる感謝を…」


「これであなた達を縛るものは無くなりました。あとは好きになさい。」


わざと声を大きくし、全ての部屋に聞こえるように話し、上への階段を目指す。

通りすがりに格子をバラバラにしておくことは忘れない。

そうだ、せっかく助けたんだから信仰を貰っておかなきゃもったいない。


「私はこの国の法に詳しくありません。ですので貴方たちの処遇はこの国の公爵に委ねます…これを公爵に見せれば話が出来るようにしておきましょう。」


親指サイズの神像を小袋に入れ、黒猫亜人に投げ渡す。


「それと各自その像を受け取り、祈りなさい。その祈りこそが私への感謝の証とします。」


「ハッ…いと強き御方に感謝と忠義を…」


あれ、なんか祈りだけで良かったのだけど忠義が生まれてない?

まぁいいや。

これぞ秘儀『分かる人、出来る人に丸投げ』だ。

上司やお客さんの特権でもあるがこの場合としては最適解だろう。


「それでは。」


踵を返し階段を上る私。

亜人を含め人種、耳長種、土精種…そこに居たすべての者が私に対し首を垂れていたことを知るのはまだもう少し後…。

お待たせしました。

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