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ゲームのGMと思った? 残念!異世界管理人でした!!  作者: 黒野されな
2章 戻れない『日常』と正すべき『日常』
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救出作戦 その1

「貴女方の力は痛いほど分かった。私たちが束になっても決して敵わないことも…。」


「それは良かったです。」


ニッコリと営業スマイル、この顔と格好であれば聖女スマイルにも見えるのでは、と自画自賛。

コーウェル公は衛士を下げさせ執事と思われる初老の男性を呼びつけ、傍に置いた。

部屋も荒れた書斎から応接室だろう、壺・絵画・生花など調度品で飾られた部屋に移動した。


「まずは頭に血が上っていたとはいえ、武器を向けた非礼を詫びたい。平にご容赦願いたい。」


一国の貴族のトップと思われる人が頭を下げるという事は相当な事だ。

それこそ、国対国の謝罪の場で行われるべき事例だろう、それを私に対して行うとは自分で行える最大限の姿勢を現している。


「心労ゆえの事だと思われますのでお気になさらずに…それよりも誘拐されたことについて詳しくお伺いしたのですが。」


コーウェル公が初老の男性に指示を出すとが椅子が引かれ、着席を促される。

さらにはお茶や一口大のケーキや焼き菓子、フルーツなどがテキパキと並べられ、まるでデザートビュッフェだ…行ったことは無いが。


「こんな物で謝罪になるとは思いませんが、お話中の口汚しにどうぞ。」


「お言葉に甘えて頂きましょう。」


"我も良いのか?食っていいのか?"


"なるべく行儀良くな…全部食うなよ。"


お茶は紅茶…のようなお茶だな、軽いフローラルな香りにほろ苦めの口当たり。

日常では紅茶などほぼ飲まなかったがこれは悪くない。


「お茶の銘柄は詳しくありませんが、良いお茶ですね。」


「お褒め頂きありがとうございます。我が領の特産品の一つです。」


ビジネストークは何気ない会話からスタートするのが基本だ。

いきなり本題に踏み込むのは良い事とはされない…この世界でそれがどうかは不明だが。


「…不躾なお願いであることは重々承知している。神の御使い…と名乗るのであればそれ相応の証を見せて頂けないか。」


やっぱり力は見せても身分に対する不信感は拭えないようだ。


「証…ですか。どのようなものをご所望ですか?神器や神具でも出せばよろしいですか?それとも国の1つでも滅ぼして見せれば?」


「っ!!…いえ、そうですね…例えば国の宝物庫に収められている魔槍ガエボルグ…これに匹敵する物を見せて頂ければと思います。」


検索検索っと…ガエボルグ…あれ、引っかからないな。

もしかしてゲイ・ボルグか?

発音やら言語の違いでガエ・ブルグ、ガエ・ボルガやらいろいろあるみたいだし…。

ちょっと実験も兼ねよう…ちょっとハチ、お菓子食いすぎ、お代わりとか貰おうとしない!


「その魔槍ガエボルグというのはこの槍の事ですか?」


アイテムボックスから槍を取り出し、公爵に渡してみる。

穂先が深紅、柄は純白の槍…装備レベル65とこの世界基準では相当な代物だろう。


「!!? なぜ宝物庫にある槍がここに!?」


「神の蔵には下々の作った物から神々所有の神器まで全ての物が収められています。もちろん模造品などではなく宝物庫の物と『同じ物』のはずです。」


公爵は槍を執事に渡し何やらボソボソとやり取りしている。

私はもう1本、同じ槍を引き攣った顔の公爵に「どうぞ、入念に見てください」と私はお茶を啜る。

ハチはお菓子とフルーツを食い尽くし「足りぬ」とメイドにお代わりを要求している。

執事が槍を戻しつつ、公爵に耳打ちしている。


「…!?」


さすが公爵家、現代日本と遜色のない美味しさのケーキだ…あ、メイドさん私にもお茶のお代わり下さい。

優雅なお茶を楽しんでいたら2本の槍の確認が終わったらしい。


「拝見させて頂きました…確かに王国所有の槍とまったく同じ性能の物でした。2本とも…試すような真似をして誠に申し訳ない。」


「構いませんよ、美味しいお茶とケーキご馳走様でした。」


ナプキンで口元を拭きながら槍を受け取りアイテムボックスにしまう。

この武器のレベルが国宝とされると…これは有益な情報をゲットできた。

情報の代わりにアイテムをプレゼントするときはこれを基準にしよう。


「おほん…では、奥さんと娘さんの名前と誘拐されたときの状況、心当たりのありそうな犯人…聞かせていただけますか?」


コーウェル公は少しずつ語りだす。



― ― ― ― ― ― ― ― ― 



コーウェル・レニード・マンダン公爵の妻メルラダ・ミリエ・マンダン、娘メリーベル・ミランダ・マンダン。

なんで貴族ってのは名前が長いんだ、名刺くれよ名刺…。


この2人はどうやら辺境伯と言われる人物のパーティに出た帰りに馬車もろとも誘拐されたらしい。

知らせたのは護衛の衛士1人、重症を負いながらも報告に戻ったらしい。

襲ってきたのは訓練された集団で魔法による強襲で護衛を無力化、生き残った1人は報告用というか見せしめと分からせる為に生かされたらしかった。

犯行現場は今いるこの王都の外、辺境伯の領地との丁度間にある森の傍とのこと。

王都からの直線距離にして約20キロほど。


「…貴族も長くやっていると当然しがらみが生まれます、私を陰で恨んでいるものは多いでしょうし正直、国内外に敵が多すぎて目星が付きません…」


小さな会社1つとっても派閥やらグループやらしがらみが生まれる。

1つの国の中では当然もっと大きくなり、絶対に一枚岩ということはあり得ない。

まだ表に出さないが自分のやっている黒い案件についての敵も考慮しているのだろうか。


「なるほど…ご自分が恨みを買っているというのは理解しておられる訳ですね。」


「政治をやっていれば相容れないという事もあります。命令によっては立場の弱い者に泣きを見てもらうこともありました。私はそれを理解できないほどの暗愚ではないつもりです。」


「横から失礼いたします。先ほどこんな物が届いております。」


初老の執事は見た目はただの無地の封筒を渡してきた。

特によくある蝋付けの封もなく、中には一枚の手紙だけ…読ませてもらうと簡潔に一文だけ。


"我らの痛みを知り自らの行いを顧みよ、さすれば大切な物を失わずに済むであろう。"


確実に恨みに根差した行動、かつ改善を促すような内容から察するに公爵の目に余る活動を諫める為の犯行か?

文面からすれば人質としてさらった妻と娘を殺す気はあまり無いように思える。

お茶を一啜りし、回答を思考する。


「分かりました。貴方の『家族』は助けましょう。」


「おお、ありがt「但し!」」


感謝の言葉を紡ぐが、あえて遮る。


「貴方の血に染まった両手と無辜の民に刃を向けた事…無罪とする訳にはいきません。2人を救った後にしかるべき罰を与えましょう。」


わざと政治絡みでなくエミエから聞いた『血』と『刃を向けた』と村を襲わせた具体例を挙げてみた。

すると思い当たる節があるのだろう、頭を下げたまま押し黙っている。


「では後程2人を連れてきます…行きますよ。」


「うむ、中々美味かったぞ。」


ハチに触れ、転移する。


とりあえず情報は得られた、一呼吸入れる為に管理者の間へ逃げ込む。




― ― ― ― ― ― ― ― ― 



大きく、大きく深呼吸


「はぁぁぁぁぁぁ~~~~…」


私は元営業マンではある。

しかし、役職についていたわけでも部下が居たわけでも無し。

立場や人生観が上の立場の人と話すのは心に来る。

中途採用の年上の部下、シルバー人材のアルバイトという感じだろうか…。

とにかく疲れる。

管理者の家(仮)でテーブルに突っ伏す。


「おい、あの男の家族助けに行かぬのか?」


「誘拐犯は人質を殺すつもりは無いよ…だからちょっとだけ休憩させて…」


「しかし、我は人種を舐めておったぞ。弱者故に無意味と思っていたがあのように美味い物を作れるのであれば生かす価値もあるというものだ!」


家のドラゴン様はいたくお菓子をお気に召したようで…思い出しながら舌なめずりをしている。

世界の裏側とはそんなに娯楽も無いところなのだろうか。

あまりに1人お菓子談義がうるさいのでアイテムボックスから日本製のお菓子、ケーキを出して「ちょっとだけ大人しくしてて…」とテーブルに並べる。


「ぬほおおおおお!?」


ドラゴンの威厳も形無し、今だけなら年齢通りの小僧にしか見えない。

缶コーヒーを呷りつつ公爵の妻と娘を探し出せるような魔法を検索していく。

殺すつもりは無い、と言ったものの『無事』であるかは分からない。

生きていればポーションで多少は無理やりにでも治すことは可能であるとはいえ、万能ではない。

可能な限り早く助けるための計画を練ろう。


あ、カントリーマァムうめぇ…疲れないはずの疲れた脳に染み渡るわー


計画が固まったのはそれから1時間後の事でテーブルの上はお菓子のゴミで埋め尽くされていたとか…




― ― ― ― ― ― ― ― ― 




救出計画の大まかな段取りはこんな感じだ。


1、『範囲索敵』で見つける。

2、助ける。

3、家まで送る。


大雑把すぎる?

自身でもそう思うが、それでも何とかなってしまうと思えるのが恐ろしい。


今まで『範囲索敵』は近場の生体反応のみを調べていたが設定次第で人物、物、地名などなどを調べることが出来るらしい。

もちろん効果範囲の制限や見つからないように隠蔽魔法を使用されていたら引っかからないという条件付きではあるがそれでも十分だろう。


まず探すべきは王都周辺、そして辺境伯と呼ばれる貴族の領地が次だ。

出したお菓子を全て平らげたハチも十分満足したのかお腹をナデナデし、椅子にぐでーっと体重を預けている。


「ハチ、行くぞ」


「ようやくお仕事本番か…どれ極少量だが食った分はくらいは動くとしよう!」


救出は可能なら隠密行動で済ませたいが私のことを知らない公爵の妻と娘は素直に言うことを聞き、静かに脱出…は難しいだろう。

相手は手練の集団、見つかれば戦闘は避けられない。


人を、殺すことになるかもしれない。

手加減できる力量を持ったハチなら問題ない。

しかし、私は『力』は有ってもコントロールするにはまだまだ実戦経験値足りなすぎる。


故に武器はレプリカ武器:神槍グングニール…見た目だけは最上級の槍と同じだが攻撃力は皆無の武器だ。

可能な限り無益な殺生を避ける努力はすべきだ。


それと…今回はヴァルキリーっぽい感じで通すことを心に決めた。




― ― ― ― ― ― ― ― ― 



御使いは再び王都に現れる。


転移先はコーウェル公の屋敷の前だった。

どうやら最初に転移した場所がセーブされるみたいだが…いつも『透明化』やら『無音』で準備しなければならないのはちょっと面倒だ…。

代替手段は後で考えよう。


まずは目的の人物の探索が今の最優先事項だ。

願わくば王都の近郊に居ますように…


『範囲索敵:人名 メルラダ』…自分からレーダーのような、波紋のような物が広がってゆく。

使ってから「しまった…」と思った。

理由は簡単、「メルラダ」という名前だけでは条件が不足していたのだ。

現にマップには表示された点が20数個…、王都に何千人か何万人いるかは不明だが同名ならそれなりにいるということだ。

『範囲索敵:人名 メルラダ・ミリエ・マンダン』今度はフルネームで実施すると………ビンゴ!


ポインティングされた場所は商人街の一角だろうか、公爵邸から直線距離で4キロ程。

素直に道を通ることもない。

屋根を伝い、川を飛び越え、直線でさっさと向かおう。

興が乗って、いつもよりほんのちょっとボリューミーになっていますので分けます。


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