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ゲームのGMと思った? 残念!異世界管理人でした!!  作者: 黒野されな
2章 戻れない『日常』と正すべき『日常』
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交渉とビジネス

ただの報酬の説明のつもりが、成り行き…といっても自分がビジネスになると判断した上の行動だが――村を助けてしまった。

そして現在は、私は村長の家にいる。

先の戦いで重症を負った盗賊団の頭目ギル・レドにはポーションを飲ませたは良いが、思ったより重症だった為に監視付きでベッド療養中。

団員は頭目が療養+監視と知ってか、大人しく村の外で待機している。

よほどお頭を慕っているのだろう。


村長はゲイツ…ゲントの父親であり、元冒険者でこの村を開拓した1人なのだそうだ。

50代そこそこのがっしりめの体つきをして居る。

それにゲントと村の顔役が3人…そして私の6人が顔を突き合わせて会談、交渉という訳だ。

ゲントも殴られ気絶していたが今は元気なようだ。


「まずは村を救っていただき感謝する。」


ゲイツ、顔役らも椅子から立ち上がり深々と頭を下げる。


「私にも利があると判断したまでの行動です。そこまで畏まらないで下さい。」


「恩人に対しこんな話をするのは大変恐縮だが、見ての通り何もない村だ…貴方の望む報酬が出せるかどうかは…」


デジャヴだな、同じ事をなんど話したやら…


「それに関しては…ゲント君、君との契約でもある。責任を果たしてもらおうか。」


私は背もたれに体重を預け、ゲントに丸投げする。

呼ばれたゲントは体を強張らせ、息子の名前が呼ばれるとは思っていなかったゲイツ、それに顔役らは怪訝な顔をした。


「…どういうことだゲント?」


語気に若干の怒りと戸惑いのニュアンスが感じられる。


「ごめん…父さん、このままじゃみんな殺されるか、奴隷行きだと思って勝手に…この人と契約した。」


ゲイツはいろいろと言いたそうにしていたが自分が捕まっていた事、私が盗賊団と黒幕を一掃した結果、その上で言葉を飲んだようだ。


「申し遅れた。私はアダムという牧師や宣教師のようなものだと思っていただければ良いでしょう。」


「えっと、アダム…さんが言うにはこの像に祈りを捧げて欲しい。可能な限り村民みんなで…それが報酬だって言ってた。」


リリアナの所で出した少し大きめの神像、事前に渡しておいてよかった。


「我々に、今までの信仰を捨て新たな神を崇めよと?」


最年長と思われる顔役…顔役Gとしよう(爺さんだし)


「いいえ、そこまでは言いません。ただ像に対し1日1度祈るだけで構いません。」


顔役K(筋肉もりもり)、顔役Oおばさんは何も言わずに顛末を見守っている。


「報酬の件は理解しました。村の教会を祈りの場として朝か夕の時間がある時に村民に祈らせるようにしましょう。」


ゲイツが結論を出した。

祈るだけなら安いと判断したようだ。


「それにしても…あのゴーレムやら盗賊をいとも簡単にあしらえるほどの牧師…ねぇ?」


魔法士にしては筋力が――とかブツブツ言いながら顔役おばさんが胡散臭そうに見てくる。

その観察眼からこの人も村長と同じ冒険者だったのではないか?


「人は見かけによらない…とだけ言っておきましょう。」


お茶を頂く、うん、こっちはちゃんと香りと味が付いている。

緑茶や紅茶とは違うもっと新鮮で鮮明な緑の香り…うん、クセはあるが悪くない。


「中々のお茶で…時にあのゴーレム使いの素性はご存知ですか?」


テーブル越しに全員を顔を見回すが、誰一人縦に首を振らなかった。


「そうですか…」


「しかし、あのゴーレムは通常ではない。かなり手を加えられたのでは…というぐらいしかわかりません。」


村長が経験談からの予測を述べてくれる。


「村長さん、これは依頼ではなく提案なのですが、今回の事も踏まえ村に護衛…用心棒兼労働力は必要ではありませんか?」


「それは…」


「おう!木こりでも猟師でも大工でも男手はいくらあっても足りねぇな!」


村長は私の言わんとすることを察したのだろう、語尾を濁らせている。

今度は顔役筋肉が出てきた。こちらは…察せていない空気を感じる。

あと声がでかい。


「私の見立てではあの盗賊の頭目…ギル・レドという男、中々に義理堅く部下にも慕われている様子。」


「あの盗賊どもを村で雇えと?」


爺様、睨まないで欲しい。


「直接手合わせ…というよりあのゴーレム使いとの関係ですね、彼女に弱みか、支配か…何らかの逆らえない状況で彼女に従わざるを得ない状況だったと思います。

事実、何かを喋ろうとして口封じに撃たれたと思いますし。」



「…そのあんちゃんの言う通りだ…」


村長家の扉が開かれ、ギル・レドが肩を支えられ、立っていた。

突然の来訪だったが椅子を用意してもらい座ると大きなため息を付いている。

まだ万全でないのだろう、ポーションによって一命は取り留めたみたいだが、まだまだ時間は必要なようだ。


「…村を襲った立場だが、説明と詫びを……入れに来た。」


すまない、とテーブルに頭をぶつけながら詫びる。


「あの女に俺たちの根城を襲われて…あのゴーレム1体にほぼ壊滅状態にさせられた。妹を人質に取られた。そして…実験に付き合えば開放してくれる…そういう約束だった。」


その約束がこの村の襲撃、村人をあのデモンゴーレムの生贄にすることだろう。


「謝って済む問題じゃねぇ事は重々承知だ、詫びとしてこの首、取ってもらって構わない…ただ!

妹や団員達は…許してやって欲しい…。」


頭を下げなら事情を説明するこの男、やはり義理堅い。


「村長殿、改めてどうでしょう。私の顔に免じてこの者と…盗賊団をこの村での労働力兼護衛として雇う…いえ、同居しては?」


ギル・レドは頭を下げたままだ。

村長、顔役らもまだリスクの方が大きいと感じているのだろう。

それぞれ渋い顔と腕組みで唸っている。

私は「ここが交渉の決め所」と感じ、もう一言付け加える。


「例えばこの者たちの謀反が心配というのであれば…そうですね、この神像に『助けて』と祈って頂ければ私が直接成敗しに来ましょう。この神像は祈りの対象でもあり、私との連絡も出来る優れものなのです。」


時間にして1分は経過していないだろう、ゲイツが私の目を見てゆっくりと口を開く。


「おほん…全員いきなりというのは無理だ。現実的な所でまず5人を受け入れてキニークに付ける。」


ゲイツが村の内情を鑑み、現実的な案を出す。それにしても顔役筋肉=キニーク…分かり易くて助かる。

確かに全員で30人ちょっと、いきなり村に全員を入れて暴れられでもしたらさすがに私でもすぐには追い付かないかもしれない。


「おう!へたな真似したら即座にノしてやるぜ!」


「ッ…温情…感謝する…ッ」


自分よりも部下が助かるという事がよほどうれしいのか。

テーブルにポタポタと染みが出来る。


「但し…先ほどアダム殿が仰っていたように謀反や村に危害を加えさせない為にまず頭目のあんたを監視…悪いが少しの間は軟禁状態にさせてもらう。」


「一度目はあの女から救って貰って、傷を癒してもらって…それで裏切るまで性根は腐ってねぇよ。」


「ならば村民から信頼されるように励むことだ。」


私以外に進行してくれる人がいるというのは非常にありがたい。


まずギル・レドと盗賊団の今後は決まった。



次は…納屋に縛られている村を襲った首謀者はフードを被った女性。

フードを剥いでみるといろいろと隠ぺいされていた情報が確認できた。

どうやらあのフードは『情報隠蔽』というスキルが付いた魔法防具らしい。

念のために確保させてもらったが魔法が付いているだけで装備品としてはただの布のマントと大差なかった。

ちなみに今は、装備を取り、最低限の服装をさせて納屋の柱に縛って、さらに猿轡状態ではまともな抵抗は出来ないだろう。



名前:エミエ・ラヴレ

種族:人種

階級:宮廷魔法士

性別:女

レベル:28

状態:健康

職業:魔法士



宮廷魔法士…宮廷という名称が入っているという事はどこかしらの国に所属しているという事だ。

得てしてこういうマッドサイエンティスト系は自分で暴走して――ってパターンが王道だが、さてこの場合はどうだろうか。

読んでいただいてありがとうございます。

ブックマークや評価を頂ければやる気に直結します。

よろしくお願いいたします。

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