最終話 最終依存彼女
この世界の聲を聞くことは容易にできました。
でもわたくしは――あなたの声が聞きたかったのです。
美剣 カンナ
美剣カンナは『神頭』で眠っている彼の家にたどり着く。
「ありがとう」
『神恢領域』を発動し、数十の神器を並べた彼女に抵抗する者は皆無だった。
カンナはあたりを見渡し、タナトスと名付けられた庭園が未だに綺麗にされているのを見ると、その人間を自分の眼前に呼び出し、震えるメイドに一言だけお礼を言い建物の中へと入っていった。
「……ヒロ様」
カンナはようやく弘樹に出会う。
「カンナか。……もう目が見えなくてな。そこの絨毯に座りなさい」
「は……はい」
――ドッ!
頭上から放たれた一本の矢がカンナの胸を貫いた。
「……!」
『ラン・アサイラム』歴代最強の人間を射貫いたのは他の誰でもない、ただ天井から放たれた一本の矢だった。
「……カンナ。最後までごめんな」
カンナは弘樹に対して笑顔で口を開いた。
「……ヒロ様、カンナは幸せです。もう一度……ヒロ様の御顔を拝見できたのですから……」
カンナは自身の身体を修復する気は毛頭なかった。なぜなら、これは愛しき主が彼女を相手に、〝したこと〟なのだから……。
「カンナ……。お前の顔を見てやりたいが、もうわたしには今のお前を見ることすらできんのだ。どうか、わたしの手を握ってはくれないか」
カンナは口から大量の血を吐き出しながら弘樹の側まで歩いて行き、そして自身の両手で彼の右手を優しく包んだ。
二人共、死期がまじかに迫っていた。
もう間もなく、二人の生命の糸は切れるだろう。
「……カンナ」
「なんで……しょうか? ……ヒロ様」
カンナは返答するだけで、口から大量の血が外に流れていき、すでに息をすることも辛かったが、それでも目が見えない弘樹に対して、笑顔を守り続けていた。
弘樹はカンナに向けて、最後の言葉を伝えるために口を開く。
それは『あの時の』内戦が終わってから、ずっと弘樹が知りたかったこと……。鈍感な自分が気付けなかった、カンナの気持ち――。
「カンナ……。お前は、俺のことを……?」
弘樹の問いに、カンナは当時の弘樹と一緒にいる時の極上の笑顔になった。
そして、それは弘樹とカンナの、決定的な気持ちの齟齬がなくなる瞬間。
「はい――愛しています」
カンナは弘樹に一言だけ呟き、そして彼と共に永遠の眠りについた。




