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転生鍛冶師は異世界を往く。魔王の少女が旅に同行することになったが、たぶん俺のスローライフを邪魔しているのはコイツだと思う。  作者: 烏羽 楓
第二章

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第19話「向かうは鍛冶の国」

 首都ヘンデルを離れて、俺たちは西へ向かって街道を進んでいた。


 空はよく晴れていて、吹き抜ける風も気持ちいい。

 街を出る時の空気は少し重かったが、こうして外を歩いていると、ようやく旅が始まったんだという実感がじわじわ湧いてくる。


「で、ユウマよ。行く当てはあるのか?」


 隣を歩くティアが、こちらを見上げながら問いかけてきた。


「ちょっと遠いけど、このまま西へ進んでガリア共和国を目指そうと思う」


 俺は地図を広げて確認しながら答える。

 すると、ティアがひょいと横から覗き込んできた。


「ふむ。ドワーフたちが運営しておる国じゃの。中立(・・)国家でもあり、世界的に有名な鍛冶の国じゃな」

「そう。それが目当てだ」


 俺がガリア共和国を目指している理由は、まさにそこにある。

 俺自身が鍛冶師だから興味がある、というのももちろん本音だ。けれど、一番大きいのは、ちゃんとした武器を手に入れたいからだった。


 《黄泉》は簡単に使えない。

 かといって、今の《鍛冶》スキルだけに頼るのも危うい。この前みたいにオーガ級の相手が出てきたら、即席武器じゃ押し切れない可能性が高い。


 ここらで一つ、メインに使える武器が欲しい。

 できれば刀があれば最高なんだが……まあ、そこまで都合よくはいかないか。


「ん? 今、中立(・・)国家って言ったか? 魔族側にも武器を流してるってことか?」

「あー、そういう意味ではない。そもそも魔族側にも、武器作りを生業(なりわい)にしておる者はおるしの」

「へぇ、魔族にも鍛冶師みたいなやつがいるのか」


 それは少し意外だった。

 いや、考えてみれば当たり前か。武器も防具も必要なんだから、作るやつがいて当然だよな。


 機会があれば会ってみたいものだ。

 人間の鍛冶師と、魔族の鍛冶師。どんな違いがあるのか、普通に気になる。


「じゃあ、なんで中立なんだ?」

(わらわ)も詳しいわけではないがの。人族……正しくは、魔族以外の種族は、魔族との戦争が起こる前は各々で戦争しておったのじゃ」

「なんだその物騒な話」


 思わず顔をしかめると、ティアは肩をすくめた。


「それぞれ理由があったのじゃろう。じゃが、魔族という脅威が現れたことで、一時的に休戦して協力関係を結んだ。そういうことじゃ」

「なるほどな……」


 敵の敵は味方、ってやつか。

 いや、それで大陸規模の協力関係を作るんだから、相当な脅威だったんだろうけど。


「もっとも、その戦争も今となっては妾が止めてしまったがの。っかか!」


 ティアは胸を張って笑っている。

 だが、そこで俺は一つの嫌な可能性に気づいた。


 魔族との戦争で協力していたのなら、その脅威がなくなった今、また元の関係に戻るんじゃないのか?

 つまり、再び種族同士の争いが始まる可能性があるってことだ。


 考えるだけでぞっとする。


「……なあ、それってさ」

「うむ?」

「魔族との戦争が終わった今、また別の戦争が始まる可能性ってあるのか?」

「なくはないじゃろうな」


 あっさり言われて、俺はげんなりした。


「おいおい、勘弁してくれよ」

「安心せい。そう簡単には燃え上がらぬ。じゃが、火種が消えたわけでもあるまい」


 さらっと言うが、全然安心できる内容じゃない。


「あ、それで思い出したが」


 ティアがぽんと手を叩く。


「千年以上前の話じゃが、魔族の始祖と人族側で起こった史上最大の戦争が、大陸を割って今の世界の形になったそうじゃぞ」

「え、なにその天変地異。怖すぎだろ」

「そうじゃの。妾もそう思う」


 そう言って、ティアはけろっと笑った。

 いやいや、そんな雑談みたいに話すスケールじゃないだろ。


「しかしの、その戦争で人間、ドワーフ、獣人、エルフの四種族を束ね、導いておった者たちがおってな」

「へえ」

「そやつらは神楽の一族(・・・・・)と呼ばれておったそうじゃ。おぬしと同じ、渡り人の集まりだったらしいぞ。もしかしたら、おぬしもその神楽の一族と血縁があるやもしれぬな」

「神楽の一族、か……」


 確かに、その人たちが元日本人だと考えれば、どこかで血が繋がっていても不思議ではない。

 千年前っていったら、向こうの世界で言えば平安時代くらいか? ちょうど武士が認知され始めた頃だったはずだ。

 有名どころで言えば藤原道長とか、紫式部とか、清少納言とか。


 まあ、そこまでいくと俺からしてももう完全に歴史の一部でしかないし、実感なんて湧かないけど。


「……ん?」


 そこまで考えて、俺はふと顔を上げた。


「え、ティアってもしかして、その時代に生きてたのか?」

「あほか!」


 ティアが即座に眉を吊り上げ、ぷくっと頬を膨らませる。


(わらわ)がそんな歳をとっておるわけなかろう!」

「……確かに」


 どこからどう見ても年下にしか見えない。

 仮に数百歳だと言われても、中身が(ともな)ってないから実質見た目通りだろう。


「おぬし、今ものすごく失礼なことを考えておったじゃろ」

「お、この道を左だそうだ。ほら、早く来ないと置いてくぞ~」

「あ、こら! 待たぬか! 誤魔化すでないぞ!」


 後ろから飛んでくる抗議を聞き流しながら、俺は左の街道へ足を向けた。


 旅の始まりなんて、これぐらいはしゃいでいる方が良い。

 少なくとも、こいつが旅の連れなら退屈だけはしなさそうだ。

見て下さりありがとうございます!

手探りながら、自分の好きと読者様の好きが重なるそんな境界線上の物語を目指してます!


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評価、ブックマーク、リアクション等

よろしくお願いします!


――誰かの心に刺さる、そんな物語を貴方に――

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