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ゴミクズバイオレット  作者: つかさ
再会、出会い、失踪、旅立ち

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21/21

シバリアの姉妹

 それはキャンプの帰り道での事だ。


「僕、冒険者になってダストと冒険したい」


「私も!」


 ヴィオレとレドの言葉にその場の全員が驚いた。


「そうか、好きにしろよ」


「ちょっと! もっと考えなさいよ!」


 余りにアッサリと認めたダストにシーラは思わず声を荒げる。


「別に一回冒険者になったからって一生続けなきゃいけない訳でもねぇだろ、最終的に村の狩人やってるかも知れないし、トリルと一緒に石鹸作ってるかもしれねぇ」


 ダストは荷台を引きながら淡々と続ける。


「成人した後に取り敢えずお試しでコロトー領内を旅してやってもいい、お前らの人生はお前らが好きに使うべきだ」


 「ただ……」と、ダストは荷台を止めヴィオレとレドに向き直る。珍しく真剣な様子であったので皆口は挟まなかった。


「誰かの意見を参考にするのもいい、相談するのもありかも知れねぇ、でも『誰かに言われたから』や『皆そうしてるから』で自分の生き方や死に方を決めるのは許さねぇ」


 ヴィオレとレドはダストの目をじっと見つめている。ダストは二人の頭に手を近づけるが、 少し考え途中で手を戻した。


「好きに選べるようには今年中にはしてやれる、何から始めてもいいぜ」


「「うん!」」


「『今年中にはしてやれる 』……ね、頑張ったじゃねぇか」


「俺たちのも足しになればよいが」


 ダストの言葉に元気よく返事するヴィオレとレド、言葉の意味に気付きザックは自分の事の様に誇らしく笑い、ロイドはそんなダストをジッと見つめていた。




 雪解けと同時に帰省したダストはキャンプの後、夏にまたホビロ村を立った。

 例年ならもう少し早く旅立っていたが、今年は夏の終わりに大きな仕事があるらしくそれに合わせた為普段より長くホビロ村に滞在していたとの事だ。

 いつもより長くホビロ村にいたダスト、キャンプ以外にも滞在中に料理の試作や仕事道具の作成等を行い、そのほぼすべてにヴィオレとレドは行動を共にしたのだった。

 予定通り行けば収穫祭が終わった頃に帰ってくる予定だとダストは言った。収穫祭を一緒に迎える事が出来ないのは悲しいが、例年よりタキミにいる期間が短い事は双子を喜ばせた。

 そして冬の間はずっとホビロ村にいると言う、ヴィオレとレドの気持ちが変わらなければ来年の春、雪が解けたら三人でお試しの冒険に出発する。




「……わからない」


 ヴィオレは両掌を上に向け、氷の魔法を展開していた。小さな塊を何個も発現させフヨフヨと動かしている。額にはびっしりと汗をかいていた。


「ヴィオレ、一回休憩にしようよ」


 ヴィオレの消耗を見てレドが声を掛けた。ヴィオレは大人しく従い、レドの近くの切り株に座った。

 レドはヴィオレに飲み物を渡す、ヴィオレはそれを受け取り喉を潤す。


「どう、何かわかった?」


「ううん、まだよくわからない」


 季節は夏の終わり、二人は湖に来ていた。皆でキャンプをした湖は二人の魔法の練習場に使われることが多かった。

 ダストは出発前に、約束通りヴィオレに新しい魔法の概念を伝えていったのだが、ダストも無理矢理絞り出したのかレドの時より更に抽象的な説明であったため、ヴィオレはその再現が出来ないでいた。


「それだけ難しいならすごい魔法なんだよ、きっと」


「むー、レドはいいなぁ、青い炎綺麗だし」


「でもダストが言ってた通り、水と氷の魔法の方が出来ることが多いよ」


 ヴィオレとレドは時間を見つけては冒険者になるための訓練をするようになった。魔法の練習もその一環で、戦いに使えるようにするのはもちろん、旅で役立つような便利な使い方も二人で頭を悩ませ考えては実施している。

 レドは魔力消費が大きいが威力も大きい青い炎以外では、炎を自分の思い通りに動かす練習をしている。

 ヴィオレは水と氷の魔法の他にも、色々試す内に風の魔法が少し使えるようになった。肝心の新しい魔法の糸口は掴めていないが二人は独学ながら順調に魔法の活用法を増やしている。


 休憩を挟んだ後は戦闘訓練だ、二人は武器を手に取り向き合う。手に持つのは木を削って作った訓練用の木剣だ。ただ剣というには短くナイフというには長く肉厚である。

 それぞれ好きに木を削って作った結果、示し合わせたわけでもなくその長さ、その大きさになった。ダストが良く使う鉈と同じくらいの大きさである。


 湖に木剣がぶつかる音が響く、二人の戦いはあのキャンプの日と同じように中々決着がつかない。

 ただ、あの日の様にお互いの攻撃をその類稀な反射神経で躱し合うという状況からは変化してきている。

 攻撃にフェイントが加わり、蹴りが加わり、搦手が加わった。お互いその可能性を考慮しているからか心理戦が加わる。

 拮抗し続けていると発想の勝負になる。今回は武器を相手の眼前に投げおいて接近戦に持ち込んだヴィオレがレドの腕を捕まえ足を掛け投げ飛ばして組み伏せた。


「降参、ダストの真似?」


「うん、実戦だったらあそこから別のナイフ抜けばいいかなって」


 レドを起こしながら自然に二人は戦闘の振り返りをする。

 子供達同士のチャンバラごっこでは元々負けない二人だったがフェイント等を使い始めてからは更に他の子供が相手にならなくなった。

 ちなみにごっこ遊びで搦手を使った際に大ブーイングを食らった為、他の子供と遊ぶ際は封印している。


「それならダストが使ってるベルト便利そうだよね、ナイフも数本しまえて他にも色々ひっかけれて」


「たしかに、あれ自分で作ったっていってたよ、私たちにも作れるかな」


「革は何か用意できるけど、金具の部分どうしようか? 今度お爺ちゃんに相談してみる?」


「うん」


 二人は話しながらいそいそと準備を始める、今日は少し森の奥まで行って野営の練習をするのだ。

 来年から始まる冒険に向け、二人の準備の日々は続いていく。




「姉上、この集落も駄目でした」


 馬上の騎士が馬車と並走し窓から中の人物に向かって声をかける。馬上の姿勢が凛として美しい為迫力があるが、その声は低めの女の声だ。

 シバリア領の冬の空色を一雫混ぜたような、青みがかったシルバーブロンドを後ろで一纏めにしている。


「……そう、わかったわ」


 女騎士の報告を受ける姉上と呼ばれた女は表情を変えず返した。女騎士と同じ色の髪は綺麗に編み込まれており、サイドをウェーブで下ろしている。

 表情には見せなかったが、その手はギュッと握り込まれており小さく震えていた。


「お姉様……」


 これまた二人と同じ色の髪を綺麗に伸ばしている少女が女の握った手に自らの手を添え、気遣うように声をかけた。馬車内の女と少女は簡素だが仕立ての良いドレス姿であった。


「……ごめんなさい、大丈夫よ」


 女は少女の気遣いに笑みを浮かべその頭を撫でる。


「でもやっぱり、人の営みの形跡だけあるっていうのは、何度も見ると寂しくて悔しいわね」


 女の言葉に少女と、彼女達の向かい側に座った執事服の青年がまた心配そうに見つめてくる。


「明日には目的のホビロ村に着くわ、それまでには元気な顔にならないと、領民に心配されてしまうわね」


 女は馬車内の雰囲気を明るくするように言い聞かせる、少女と青年は女に同意するように小さく頷いた。

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