6.新しい職へ
さて、その頃ソフィーは侍従長のヘクターに呼ばれていた。
侍従長のヘクターは50代後半の男性である。彼は一般の貴族の家庭でいう、家令や執事長の立場であり、こちらのお城の内政を取り仕切っている人物である。
侍従長のヘクターはイーサン王の侍従としてずっと側にいた。そして数ヶ月前イーサン王によって正式に侍従長になった。彼はイーサン王の長年の側近であったが、目立たず静かに城内を掌握して行った人物であった。彼は一見温和な顔つきはしていたが、周囲に何を言われても屈しない人物であった。
さて、ヘクターはソフィーと侍女長のサーシャの2人を呼び出していた。
「ソフィー、料理場の件、グレース王女の侍女シャーロットの件ソフィーの発案だったと聞いています。その話はバージル王子のお耳にも届いております。ソフィー、このお城に人が少ない理由は知っていますか?」
ソフィーは返事に戸惑い、曖昧な微笑みをした。噂ではイーサン王がこのお城から暇を出したと聞いていたが、断言できる情報は持っていなかったからである。しかし、侍従長のヘクターはソフィーの顔を一瞥しただけで話を続けた。
「このお城は数ヶ月前に人員の整理をしたばかりです。一部の中級使用人、下級使用人はそのままですが、上級使用人は私と、侍女長のサーシャの数名を残してこのお城を去っていただきました。理由は政治的なことになるのでそれ以上は伝えませんが、人員が不足しているのはわかったでしょう。」
侍女長のサーシャが次に続けた。
「下級使用人はそのままなのでお城の掃除を含め整備等は全く困っていないのですが、身の回りを世話する者が少なかったのです。そのためまずは料理場に入れ、毒味という職をさせていたのです。料理長のお立場は私たちと同じです。しかし、料理場を馬鹿にする者が多いのです。ソフィーは最初から顔色変えず働いていていましたね。」
ソフィーはもう一度曖昧な微笑みをした。
侍従長のヘクターが再び一瞥し口を開いた。
「さて、グレース王女はソフィーのことをとても気に入ったそうです。そのためバージル王子とグレース王女はソフィーの職に関して発案してきました。ソフィーは私の下で働きます。身分は表向きは侍女のままですが、職務的には私の仕事を補佐していただきます。」
プロットも作らず書き始めたので、前にもどって表記の揺れなど修正しています。大幅に修正はしておりません。
料理長は西洋の文化では上級使用人でした。食事は重要な役割だったのですね。