5.グレースの侍女
ケイシーはオルド商会の会長である。そう、あのソフィーの父であった。
オルド商会は隣国との取引によって最近力をつけてきた商会であった。しかし、彼はとても用心深い人間でもあったので、恨まれないようにと商売してきた。特に目立つことをせず、堅実な事業を広げてきた。
娘ソフィーは商会を少しだけ手伝わせていた。しかし、ソフィーが外で働きたいと言ったため、迷わずソフィーをお城に侍女として送り出した。ソフィーが働きたいという前から、古い友人から娘を侍女で働かせてくれと言われていたのだが、それはソフィーには内緒の話であった。
さて、ケイシーは2回目のソフィーからの依頼の手紙を読んでいた。1回目は料理長のマットに絡むことであって、こちらもケイシーに依頼があったのだが、今日は別なことであった。
ソフィーの手紙は1人の女性の紹介依頼であった。彼女の手紙には一介の侍女である自分がその女性をお城に紹介をするわけにはいかないと旨が記載されていた。
いやいや、一介の侍女がこのような提案はありえないじゃないかと突っ込みをケイシーはしていた。
とはいいつつ、その提案ケイシーにとってもその女性にとってもよい事であった。
娘に甘いケイシーは古い友人にお願いすべく手紙をしたため始めた。今月に入って2回目である。
そして、その手紙を出して、数日後、すでに事態は動いていた。
グレース王女には新たな侍女、シャーロットが迎えられていた。シャーロットはグレースの学友で、貴族出身であった。
シャーロットは、オルト商会でドレスのデザイン部署に働いていた。そして、いずれは自分のデザインした服のブランドを作ったりしたいと思っていた。
貴族の社交が少なくなり、ドレスも作られるのが少なくなってきていた。このままオルト商会ではドレスには関わるのが難しくなるかもと悩んでいたところに、オルト商会の会長ケイシーによりこの話をもらい、二つ返事で引き受けたのであった。
シャーロットは貴族出身、さらにオルト商会でも当然行儀をしつけられていたので人選的にも問題なかった。唯一欠点は服飾にこだわる気質というところであった。
シャーロットはグレースをみて、同じ年齢とは思えない美しさ。これは素敵な逸材だわ、と心の中でつぶやいていた。ただ、オルト商会ケイシー会長より別な依頼もされていたので着飾ることにワクワクする気持ちを抑えることができた。
そしてグレースに言われたことは・・・
「ねえ、シャーロット。私もう、本当はドレス着たくないの。私が自分でできないことの一つがドレスを自分で自由に脱ぎ着することだわ。」
シャーロットは事前に得ていた話通りだと思った。




