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天使と悪魔の日常譚  作者: ウバ クロネ
【第6章】魔界訪問と天使長
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6−27 難攻不落の魔城(+おまけNo.2)

 ハーヴェンの予告通り、今度は特に大きな問題もなくサタンの居城にたどり着く。見れば、上空には大量の悪魔が飛び交っているが……興味本位でハーヴェンに話しかけてくる者がいる以外は、特に害はなさそうだ。


「さて、ここがサタンの城だ。無骨な佇まいだが、ベルゼブブの屋敷と違ってシックな色合いの建物だから、そこまで神経が刺激される事はないと思うぞ」

「それは色々とありがたいなぁ……」


 ベルゼブブ本人の出で立ちは、ともかく。あの屋敷の配色に目眩を覚えていたのは、私だけではないらしい。その言葉は間違いなくオーディエル様の本心だと私が考えていると、ハーヴェンが屋敷の引き手をカンカンと鳴らしている。そうして甲高い金属音が鳴り響くと、それを聞きつけてやってきたらしい。嘴が特徴的な、メイド姿の悪魔が出迎えてくれた。


「……お待ちいたしておりました、エルダーウコバクご一行様。主人のサタンからも、皆様を迎賓としてもてなす様、仰せつかっております。どうぞ、中へ」

「うん、ありがとう。……と、いう事で。サタンも俺達を歓迎してくれるそうだ」

「あ、あぁ……。しかし、サタンのところにはメイドさんがいるんだな……」


 黒を基調としたメイド服からはみ出した、色鮮やかな尻尾に見とれながら私が呟くと……そのメイドさんに関して、ハーヴェンが補足をしてくれる。どうやら彼としても、この状況は少々特殊らしい。


「サタンは魔界で唯一、城を持つ真祖でな。配下の悪魔数も圧倒的に多いから、魔界ではダントツの勢力を誇る。あとな、憤怒の悪魔は最下級のガーゴイルでも中級悪魔だったりするもんだから、実力も粒ぞろいで……もしかして、メイドさんもアドラメレクだったりする?」

「はい。私はアズナと申しまして……アドラメレク・メイドでございます」

「アズナさんね。……さて。見た目も可愛らしいアズナさんだけど。そのメイドさんを含むアドラメレクは全員、漏れなく上級悪魔だ。この城は俺レベルの悪魔がゴロゴロ居るような、難攻不落の魔城でもあるんだよ。今回は俺達もゲスト扱いだから、緊張しなくていいだろうけど……普通なら真祖の紹介状がない限りは、有無を言わさず瞬殺だろうな」

「そ、そうなんだ……」


 ハーヴェンの妙に物騒な解説に、満足そうに謝辞を述べるアズナさんだが。彼女もしっかり上級悪魔だというのだから、恐ろしい。


「しかし、難攻不落の魔城の割には、サタン様のお住いは随分と手入れが行き届いていると見える。調度も、色調も、センスがいい」

「ありがとうございます。この城の調度品はヤーティ様……私達を束ねているハウス・スチュワードの手によるものです。サタン様は基本的に権力を守ること以外には無頓着ですが、ヤーティ様は隅々にまで気を使われるお方ですので……それでなくとも、乱暴な主人を諌めてくださるので、私達としても助かっております」


 オーディエル様の言葉を受けて、明らかに主人の悪口になりそうな事を織り交ぜながら……ヤーティという悪魔のことを説明してくれるアズナさん。


「それにしても、ヤーティさんやあなた達も憤怒の悪魔なんだよね? その割には随分、穏やかというか……」

「まぁ、天使様はお上手ですね。ですが、私も今は特に不愉快な事もないので、怒る理由がないだけです。我々はサタン様を筆頭に、基本的に沸点が低いとお考えください。尚、この城で1番怒らせるとタチが悪いのは、そのヤーティ様です。2〜3時間、彼のお怒りが鎮まるまで、クドクドと説教されてご覧なさい。あまりに的確かつ理詰めのお説教に、精神的にも追い詰められて……その時間が終わりさえすれば、後は何もかもがよくなってしまうほどなのですよ?」

「確かに、それは恐ろしい……」


 普段、自身も頭が硬いなどと言われがちなオーディエル様さえも、さも恐ろしいという表情で頷く。……なるほど。ヤーティという悪魔は、怒らせると面倒な相手のようだ。


「さて、こちらが応接間でございます。主人もすぐに参ると思います。……茶等はアドラメレク・フットマンがご用意いたします故、しばらくお待ちいただけるでしょうか」

「うん、ありがとう。ここで待たせてもらうよ」


 ハーヴェンが気さくに応じると、どことなく嬉しそうな表情をして……一礼とともに退室するアズナさん。

 応接間と言われて案内された部屋は、黒を基調にしてはいるものの。クッションは深いグリーンや綺麗なブルーの物が置かれており、明らかに配色にもこだわりを感じる色彩でまとめられている。先ほどまで目にしていた色彩が凶暴だったせいもあるのかもしれないが、ソファの高さといい、色合いといい。照明も穏やかな暗さであることも相まって、落ち着く空間であることは間違いない。

 それにしても……悪魔の城でこんなに丁寧な案内をしてもらえるなんて、思いもしなかった。


「……ここ、悪魔の城なんだよな?」

「まぁ。でも、俺自身もこうしてもてなされるのは初めてだ」

「そうなの?」

「あぁ。前回来た時は、サタンが俺の話を全く聞かなくてな。もてなされるどころか、闘技場に引っ張り出されて、ショーファイトを演じさせられる羽目になった」

「どういう事だ、それ?」

「あの時はベルゼブブもグルでな。……あいつとサタンのどっちの配下が強いか、力比べをさせられることになってさ。で、プランシーと一戦交えた」

「……そんな話、聞いていなかったけど?」

「話す必要もなかったからな。あの時はプランシーの理性が完全に吹き飛んでいる時だったし、話をするにはまずは俺のことを思い出してもらう必要もあって。あいつの暴走を鎮めるために……ちょいと凹ませたんだけど」


 話す必要もなかった、で片付けられてしまったが。……ハーヴェンは意外と、魔界に来るたびに色々と揉め事に巻き込まれていたらしい。それが悪魔の流儀と言われれば、それまでなのかもしれないが。やはり、魔界という場所は……基本的に狂気に満ちている世界なのかもしれない。

※コンタローの呟き No.02


 あい、またまたお晩です。モコモコ担当のコンタローでヤンすよ。みなさま、お元気でしたか? 

 早速、「大きさ」についてのおまけ話をするでヤンす。えっと、今回のお題は……。


『サタンのお城について』


 ゔ……おいらサタン様のお城、行った事ないでヤンすよ。これ、無茶振りってヤツですよね……? 仕方ないでヤンす。今回はアンチョコに頼るです。……確か、この辺に(ゴソゴソ……)あったでヤンす!


 え〜と、この『魔界ガイド』によると、サタン様は唯一お城を持つ真祖様で、お住まいの大きさは魔界1でヤンす! で、肝心のお城の大きさですけど……部屋数は272、階段は37箇所。それで、ベルゼブブ様のお屋敷とアスモデウス様のお屋敷を足して、5倍にしたくらいの大きさらしいでヤンす!

 説明しているおいらも、どのくらい広いのかがピンとこないでヤンすが……まぁ、とにかく広いでヤンす。

 しかし、こんなに広いとお掃除とか大変そうでヤンすね……。それでなくても、サタン様以外の憤怒の悪魔さんはとっても綺麗好きだって聞いてますし。広すぎると、逆に疲れてしまいそうでヤンす……。

 あ、とにかくサタン様は凄い真祖様なんですよ、きっと!(そういう事にしておこう……)


 それはさておき、今回もお付き合いいただけて嬉しかったでヤンす! ありがとうございました!

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