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幼馴染2。幼馴染ざまぁと思っていたら……  作者: 山口遊子


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第4話 デート?


 京子の住むマンションは俺の住む家の隣に立っている低層マンションで、京子のうちは、その最上階。いわゆるペントハウスというやつで、普通のマンションだと、南から北に向かって長四角の家になるようだが、京子の家は、東から西に長四角になっていて、南に向いた面が下の階の3軒分に相当している。


 京子のお父さんは外資系の金融関係の会社に勤めていると京子が言っていたが、毎朝お迎えの車が京子のマンションのエントランス前の車寄せにやってくるところをみると相当なお偉いさんなのだろう。

 



 生徒会から解放された俺は帰宅部に再入部し、早々と家に帰って、居間の長椅子で寝転がっていたら、電話がかかってきた。


「はい。松田です」


『そういえば、祐介、次の日曜空いてるわよね』


 いきなり京子が訳の分からないことをいきなり言い始めた。


「空いてることは空いてるけど、なんでそう決めつけるんだよ?」


『空いてるんならいいじゃない。水族館のチケットもらったんだけど一緒に行こうよ。あんた、動物園はいやだっていってたでしょ? 水族館なら問題ないじゃない』


「この歳で水族館もなー」


『何言ってんの! 明日の9時にバス停に集合よ!』


 それで電話が切れた。


 結局、京子と水族館に行くことになってしまった。




 そして約束の日曜日。


 京子より遅く集合場所に到着すると京子はすごく機嫌が悪くなるので、俺は約束の時間の15分前には到着していた。京子は遅刻せず、約束の時間の3分前に到着した。


 時間通りにやって来たバスに乗り込んで、一番後ろの席に二人並んで座った。何も言わずとも京子は窓側だ。乗っている乗客は俺たちのほかには三名ほどだった。


 京子はバスに乗るとたいてい窓の外を見ながら鼻歌を歌っている。どうも歌っているのは英語の歌のようで俺には何をどう歌っているのかはさっぱりわからない。





 乗客が入れ替わりながら30分ほどで、バスはちょうど水族館の入り口に停まった。バスを降りてそのまま出入り口に。


 そこで、京子がチケットを二人分差し出して、俺と二人で中に入った。


 水族館の中に入ったところで、


「祐介、ここへ来たのは、幼稚園の遠足以来よね?」


「そうだったな。あんときは、京子が何かで泣き出したんだったよな。何だっけなー?」


「思い出さなくていいから」


「思い出した! おシッ……」


「バカ!」


 思いっきり頬を平手でたたかれた。これは赤いもみじ後になっている可能性が高い。


「忘れた」


「それでいの」


 ……


 俺は展示されている水槽の中の魚を見ながらゆっくり見て回りたかったのだが、京子はどんどん先に行ってしまう。1時間もかからず水族館の中を一周してしまった。


「幼稚園で来た時はこの水族館はずいぶん広く感じたんだけど、そんなに広くはなかったのね。あっという間に見終わってしまったわ」


「だって京子は説明なんて全然見てなくて、ちょっと見ただけで素通すどおりだもの」


「いいじゃないの。少し疲れたから、あそこの椅子に座って休憩しよ」


「ああ。それじゃあ、俺がジュース買って来てやるよ。何飲む?」


「うーん。それなら、いつもの甘いコーヒーかな」


「わかった。いつものな」




「ほい」


「ありがと」


「まだ、昼には早いけどどうする?」


「そうね、ここのフードコートでもいいかもしれないけれど、もう少しおしゃれなところがいいわ」


「おしゃれねー」


「前の通りを歩いてみて、良さそうなところに入りましょうよ」


「そうしようか」


「祐介は何が食べたい?」


「何でも。好き嫌いは特にないのは知ってるだろ? 京子の好きなものでいいぞ」


「わたしもお店を見てから決めるわ。これを飲んだら出よ」


「ああ」





「建物の外に出ると、少し汗ばむ陽気ね」


「今日は天気がいいからな。あっちの方に食べ物屋さんがいくらか並んでるようだから行ってみるか?」


「まだ、お昼には少しあるから、こっちの方に歩いて行ってみない?」


「わかった。でも、こっちの道は普通の店が並んでるだけだぞ」


「だからいいんじゃないの」




 商店街というほどではないが、小物を売る店、布を売る店、雑貨店などが並んだ通りを二人並んで歩いていく。


「ちょっといいかしら」


 そういって、京子が小さな店の中に入って行った。どうやらアクセサリーなどを扱っている店のようだ。そんな店には入りたくはなかったが、そういう訳にもいかないので、後からくっついて店の中に入る。


 京子はさっそくイヤリングを見つけて、耳にくっつけて俺の方に見せる。こういった時は、ただ『似合うと思う』と返事をするのではダメだとどこかで聞いたことがある。それなりに気の利いたことを言わないと怒りだす可能性もあるのだ。ここは慎重に言葉を選ぶ必要がある。


 京子の選んだイヤリングは大きさの違う銀色のわっかが三個、耳につける部分の付け根で重なったちょっと大人っぽいイヤリングだった。


「よく似合ってるんじゃないか」


 慎重に言葉を選んだつもりだったが出てきた言葉は、『似合うと思う』とほとんど変わらなかった。


「あのねえ、祐介、わたしが何をつけても似合うのは当たり前なんだから、何か他にないの?」


 返答を失敗したと思ったが、案の定京子に文句を言われた。


「耳元で輪っかがぶつかってチャラチャラうるさくないか?」


 マズい! 思ったことを口にしてしまった。これを墓穴と呼ぶのか?


「もういいわよ!」


 とうとう怒らせてしまった。これはいろんな意味で高くつきそうだ。


 それから、京子はイヤリングをとっかえひっかえしてようやく買うことにしたようだ。


「どう?」


「ナイス!」


「そう? それじゃあ、これを買おうかしら」


 横文字だと若干イミフでなところがいいんじゃないかと『ナイス』選んだだのだが、大正解だったようだ。


「家の中なら、イヤリングしててもいいかもしれないけれど、中学生じゃまだ早くないか?」


「いいの、祐介はそんなこと気にしなくて」


 そういって、京子は、店員にお金を払ってそのイアリングを買ってその場で両耳につけてしまった。



 イヤリングをつけた京子は背伸びしているところは可愛いが所詮は中学生。ここで笑おうものなら大目玉なので、アゴに力を入れて奥歯をかみしめ笑わないように、笑わないように。


「祐介、何? 変な顔しないでよ。もともと変な顔が、もっと変になるわよ」


 こいつは俺の努力を何だと思っているんだ!



 アクセサリー屋を出た俺たちは、運のいいことにパスタ屋さんの看板が目に入ったので、もう少しその道を進んで行った。


「このお店、雰囲気良さそうだし、ここにしない?」


「高くないかな?」


「大丈夫。今度は祐介に払ってもらうから」


 やっぱりか。


 その小さなお店に入ると、まだ午前中だったせいか、数人しかお客さんはいなかった。


 二人席についてメニューを見ると、そこそこの値段がする。母さんにもらった軍資金はあるがもし足らなかったらマズい。


 お店の人がやって来たので、俺は無難かつメニューの中で一番安いにスパゲティーのミートソースを、京子の方は、ラザニアとかいう料理を頼んだ。


「祐介、スパゲティーだけで足りるの?」


「足りると思う」


「大盛にしておけば? 値段は変わらないようよ」


「だったら。

 すみませーん、さっきの注文、スパゲティーは大盛でお願いします」




 料理が出てくるのを待っている間、


「ねえ、祐介、わたしたち、今デートしてるのよね」


「第三者的に言えばそう見えるかもな」


「なに訳の分からないこと言ってんのよ」


「いや、だって、いつだって一緒に出歩いてたじゃないか?」


「今日は特別なの」


「そう思うのなら、思えばいいんじゃないか」


「何よ。祐介は、わたしのこと意識しないの?」


「うん? 何が言いたいのか分からないけれど、いつも意識してるぞ」


「そういうんじゃなくて、ほら、女の子として」


「いや、ちゃんと意識してる。京子は女だ、間違いない」


「もう。祐介がそんなんだったらもういいわよ」


 京子が何を言いたいのか分からないまま、二人で話をしていたら、料理がやって来た。


 俺のは大盛だけあって、それなりの量のスパゲティーが皿に盛ってあったが、京子のラザニアなる料理はかなり小さな器に入ったものだった。


「京子、そんなので足りるのか?」


「乙女は、これで十分なの」


「そうかー? 前はもっと食べてたよな」


「レディーは小食なの!」


「それならそれでいいけどな」



 俺の頼んだスパゲティーのミートソースの大盛りは無難な料理だけあって、それなりの量、それなりの味で満足できるものだったが、京子は自分のラザニアをあっという間に食べてしまった。小食のレディーにしては食べるのが速い。


 食後に二人とも飲み物が付いていたので、俺はコーヒーを、京子もコーヒーを頼んで追加にデザートだと言ってイチゴのショートケーキを頼んだ。そらみろ、足りなかったんじゃないか!


「あー、美味しかった。タダの食事はやっぱりいいわね」


 そうかい。それは良かったな。俺の方はお前と違って悲しくなったよ。今の手持ちだと帰りのバス代にギリギリだ。



 パスタ屋さんを出て、


「祐介に食事もおごってもらったから、祐介もうそんなにお金がないでしょ? もうおごってもらえそうもないから、そろそろ帰ろうか?」


 確かに今の状態だとバス代のことを考えると缶ジュースも買えない。


「分かった」




 店を出て、そのまま近くの横断歩道で通りを横切り、帰りのバス停まで歩いていくと、いくらも待たずバスに乗ることができた。


 乗ったバスの中には、空席が一つだけあったのだが、京子はさっさとその席に座ってしまい、バスが発車したら鼻歌を歌い始めた。いい気なものだ。


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