王子
グレイシアの物語の登場人物、ヨシュアの婚約者となったモリーの物語です。
すごく綺麗な魔力が、近づいたことに気がついて、モリーは顔を上げた。
お仕事をするお父様の元へ大切な御用があると言う母に付いて、初めて王宮を訪れた日の事だ。
目の前に来たのは、びっくりするくらいに綺麗な男の子だった。6歳になったモリーと同じ位の年頃だろうか。
「こんにちは。君は誰?」
知らない人に名乗ってはいけない。
そう教えられてきたモリーではあるが、そんな事はすっかり忘れて応えてしまう。
「わたしはモリー。あなたは?」
「僕はヨシュアだよ」
ヨシュア?
どこかで聞いたような名前に、モリーは首を傾げる。
「ええと?王子様?」
尋ねると「そうだよ」と当たり前のように頷いた。
ヨシュアは綺麗な魔力を色々な魔法に乗せて見せてくれた。
手の中に小さな渦巻きの風を起こして、そこに蝶を閉じ込めて見せたり、庭園の草木に音を付けては叩いて音楽を奏でたり。
池の水をぐるぐる回すと、そこに浮いた花びらが渦を巻いて綺麗だった。
何をやってもモリーが喜ぶので、王子も上機嫌で遊んでくれる。
「お花は好き?」
王子に尋ねられて素直に頷くと、彼はアーチの上の方に咲いていたピンク色のバラを魔法で取って、モリーに渡してくれる。
「棘があるからね。取ってしまおう」
そう言って指先を動かすと、つるりとバラの棘が彼の手に落ちた。
「すごーい!どうやってるの?」
魔力はあっても魔法が使えないモリーには、どれもこれも凄いの一言に尽きるのだが、彼は披露した最後の魔法は特別だったのだろう。
「内緒だよ」
と言って、誇らしげに微笑んだ。
17回で終了予定です。
また、最後までお付き合い頂けますと幸いです。




