エピローグ 雨降って地固まる
こちらのお話で完結になります!
ここまでお付き合いいただき、ありがとうございました!
――ラペデュール王国 魔女の家
「あれは呪いよ」
北の魔女、イングリッドは紅茶を片手に足を組みながら言う。
「そうですね。ヴァランドレ公爵の目が他の男性に向かないようにするための呪いですね」
西の魔女、シビルは深く同意するように頷く。
「えー、やめなよ二人とも。ここにものすごい重い男たちに好かれてるレディが二人もいるんだからさ」
南の魔女、ティティはコソコソと言ってるつもりだろうが、声が大きいので丸聞こえだ。
「レミ様……あ、魔塔主様はちょっと不器用なだけで……」
初代魔女、エステル様が懸命に言い訳をする。
彼を不器用と表現するのはどうかと思うが、私も大概なのでここは黙っておく。
「あの狂犬王子と似たり寄ったりよ。ね、オーレリア」
予想通り、イングリッドに答えにくい話を振られる。
「まあ……そう……なんですかね……」
私は蜂蜜ジンジャークッキーをポリポリと食べる。
今日もおやつが美味しいな。
話題を変えなくては。
「……あの時、エステル様も初代国王様の声が聞こえたんですか?」
「そうですね……聞こえました。でもハッキリ言ったんです」
「へえ、なんて言ったの?」
ティティが興味深そうに尋ねる。
「私の名前も知らない人は愛せません。って」
「「「「えっ!?」」」」
四人で同時に驚いてしまう。
「初代国王はエステルさんの名前を知らなかったんですか?」
シビルが驚きを隠せない様子で聞く。
「はい。最初に私が『魔女です』って名乗ったら、ずっと『魔女』って呼んで。困った人ですよね。それに――」
「「「「それに?」」」」
「『命あっての物種』って東の言葉であるでしょう? 亡くなった人のところには行けませんって。さらに言うと――」
「「「「さらに言うと?」」」」
「初代王妃様という方がいらっしゃったのに、良くないです!って」
「な、なるほど……それはそうです」
三人の魔女様たちも「それはだめ」と頷いている。
「……でも私はもう、ダメかと思いました」
私が呟く。
するとティティが「え?」と驚く。
「やだリアちゃん。シビルが『死ぬことは無いって』占いで言ってたじゃん」
え? 言ってたような……どう、だったかな?
するとイングリッドが紙にサラサラと数字を書く。
「これは?」
「シビルの占いの一回の値段」
「え!?」
とんでもない桁の数字が書かれている。
私は毎回タダで占ってもらっていたことに震える。
「イングリッド、いやらしいですよ」
シビルが嗜めるとイングリッドが肩を竦める。
「あ! ヤバい! 二人が来た!」
突然、ティティが立ち上がる。
その数秒後、本当にドアがノックされ、返事を待たずドアが開く。
三人の魔女様を見つけると、すぅとテオ様が目を細める。
「いつの間にか煩い鳥が迷い込んだようだな」
室内の温度が一気に下がる。
あ、これ、良くない感じだ。
「ああ、なんだ。三人もいたんだ」
テオ様の後ろに立っていた魔塔主が顔を覗かせる。
テオ様と魔塔主は今後の関係についての話し合いをしていた。
これからは魔塔の技術や魔法を正当な金額で取引きするそうだ。
「……さてと、邪魔者が来たからそろそろ帰るわね」
イングリッドが挑発するようにテオ様に言う。
「なんだと?」
するとイングリッドは私を立ち上がらせ、するりと長い腕を私の肩に絡ませる。
そして妖しげに微笑み耳元で言う。
「また遊びましょうね、オーレリア」
そして流れるような動作で私の頬にキスをする。
「貴様!」
テオ様が近づいた瞬間、三人の魔女様は……消えた。
「わーすごい! 無詠唱で転移しちゃいましたね!」
私が感動しているとテオ様はハンカチを取り出し私の頬を拭く。
「おい、魔塔主。魔女の教育をちゃんとしておけ」
魔塔主はムスッとしながら、エステル様にピッタリくっついて言う。
「エステル。やっぱりアイツの血筋は偉そうで嫌いだよ。早く帰ろう」
そう言って、挨拶する間もなく二人も消えてしまった。
「みんな帰ってしまいましたね」
「二人きりになれて、私は嬉しいけどな」
そう言いながらテオ様は私の腰に手を回す。
ちょっと怒っているのかな?話題を変えなくては。
「王太子叙任式の準備は順調ですか?」
「ああ、滞りなく進んでるよ。あとは王太子妃のドレスが出来上がれば完璧だな」
「あの……やっぱり結婚式は後で行ったほうが良いのでは?」
テオ様が固まる。
「十一年も待って、さらに待てとリアは言うんだね……」
あ、まずい……。
「テオ様が大変かな……と思っただけで」
しどろもどろになりながら否定する。
「今延期を申し出たらロランが発狂するだろうな」
脳内のロランが「オーレリア様、正気ですか?」と責めてくる。
怖い、泣きそう。
「じゃあ、リアも早く結婚したい?」
不覚にも渾身の『あざとい』を至近距離で食らってしまう。
「っ! はい! 結婚したいです!」
動揺を隠せず、やたらとハキハキ答えてしまう。
ああ……私はこの可愛くて愛しい一途な王子からは逃げられそうもない。
「愛しているよ、オーレリア」
テオ様は蜂蜜のような甘い微笑みを向ける。
「私も愛しています、テオドール」
そして私は彼に甘い甘い口づけをした。
――おしまい――
雨降って地固まる【あめふってじかたまる】……もめ事や問題などの悪いことが起きたあと、かえって事態が良い方向へ向かい、基盤が安定するという意味。
無事完結することができました!拙い文章で申し訳なかったです。
連載中に追っかけてくださった読者の方には感謝しかありません!
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本当に本当にありがとうございました!




