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勇者召喚からハブられた俺は、女神様の脱ぎたて神装(パンツ)で異世界を生き抜く ~明日を笑顔でいるために~  作者: 藤塚 まあき
第二章 ママに私が生まれた日の空の色を聞いたら、「おじいちゃんの頭と同じだよ」と言われた
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第24話 2! ゆかいな仲間を揃えたら!

「そこを退け! 【迫雷撃】!!」

「ぐわぁぁぁぁぁぁぁッ!?」


 街の周りを巡回していた悪魔を(主にブランさんが)蹴散らし、俺たちは地下の隠し通路へと突入する。

 入口は巧妙に隠されていたので、ブランさんが場所を知っていてくれて助かった。


「さすがに長い間放置していれば荒れ放題だな。……二人とも、魔物が住み着いているかもしれない。崩落に注意しながら私の傍を離れないように」


 ブランさんの纏う雷光を頼りに、俺たちは薄暗い地下道を突き進む。

 移動距離的に街の真下を通過した筈だが、結界に阻まれる様子がない事を見るに――。


「――行けそうだね、二人とも」

「ああ」

「シルヴァのおっちゃん。落ちないようにしっかり捕まっとけよ」


 所々崩落した壁をブランさんが殴り飛ばしながら、順調に地下通路を攻略する。

 今のところは地下に入ってからの接敵は無いが――、


「……む。そこの角の向こうに何かがいる」


 ブランさんが片手で俺達を制止させ、首元の白い炎が警戒を強めるように燃え上がる。


 ……今のブランさんの武器は訓練用の剣だ。


 元が実戦を想定した造りになっていない上に、ブランさんの本気の戦闘に耐えられる強度もない。

 これまでの戦闘で酷使しないように気を使っていたみたいだが、それでも目に見えて摩耗してきている。


 街に突入したら、ファントムと戦う前に『呪剣アダマス』を取り戻さないといけないな。


「……こちらに向かって来ているな。出来れば無駄な戦闘は避けたいが――」


 そう言いつつも、いつでも攻撃に入れるよう、武器は構えたままだ。

 俺とシルヴァさんも頬に汗をにじませながら、彼女の背を見守った。


「……ここに住み着いた魔物か? それとも悪魔がここまで巡回を……」

「分からないが……。――! 来るぞ!」


 足音が俺にも聞こえてきた!

 地下通路に反響するのは、恐らく複数の足音。


「この音から察するに――人型が二体か」

「シルヴァ殿もそう感じたか」


 そのまま雷光で周囲を照らしながら、ブランさんは、短く息を吐いてコンパクトに剣を振りかざし――、


「――見てみぃG08(ゴエイ)さん! あの角の向こうが、まるで雷光のように明るいで! そろそろ出口も近いんとちゃうか!? ……って、あら?」

「……御主人さぁ。雷光のように明るいのではなく、本当に雷光を纏ったお方が陣取っていたようでごわす」


 ……角の向こうから現れたのは、ある意味魔物よりもたちの悪い連中だった。


「おまっ……! リュパンツ・ザ・サートルとごわすメイドさん!? 何やってんだこんな所で!」

「街の地下牢に捕まっていたのでは無かったのか!?」


 俺とブランさんが驚く中、俺の背に乗るシルヴァさんが、小さく息を吐きながら尋ねる。


「……こんな古い地下通路で、いったい何を?」


 なにやらロクでもない予感がするが……。


「なにって……見ての通り脱獄中やけど」


 やっぱりロクでもない事だった!!


「前にこの辺で大きな地鳴りがあったやろ。おかげで格子が緩んだり、牢の一部がここと繋がってたりってスンポーや。おひょひょ」

「で、ごわす」


 そう言って高笑いする日焼け肌の神職と、ぺこりと頭を下げる和装メイドさん。


「……はあ。やはりこの街の警備は緩んでいたのか……」

「まあ、俺でも抜けれるくらいだったもんな」


 ブランさんが、嘆くように片手で顔を覆った。






「……これでよし、と。……どや? 動けるか?」

「ありがとう。おじさんの傷を癒してもらって悪いね」


 意外にもリュパンツは回復のお札で、シルヴァのおっちゃんの傷を治してくれた。

 相変わらずボロボロで完全復活とまではいかないようだが、ある程度戦える位には持ち直せたらしい。


「……にしても、あん時はよくもワイらを闇討ちで捕まえてくれたなぁ」


 治療後、リュパンツが恨めしそうにシルヴァのおっちゃんへジト目を送る。

 そういや屋敷で上級悪魔との戦いで共闘した後、夜道で何者かに樽に詰められて捕まったって話だったっけ。


「……えっ? てことは、リュパンツ達を捕まえたのってシルヴァのおっちゃんだったのか?」

「――まあね。……ああ、腰が痛かったのは本当だよ? 一段落ついてちょっと回復したから、無理して捕まえに行ったんだ。流石にマブダチの娘を狙った犯罪者を捨て置く訳にはいかなかったし。……子を持つ父親の一人として、不埒者には灸を据えないと……って思ってねぇ」

「おひょひょひょひょ〜。ま、けっきょくワイらはこうして出てきた訳やけどなぁ!」


 ムカつくドヤ顔で高笑いした後、急にリュパンツは押し黙り……。


「……そう。こうしてワイらが出てくる事まで、見越してたんとちゃうか?」


 そう言って、シルヴァさんを見ながらニヤリと笑んだ。


「……ああ。確かにてめぇらを捕まえておく事で、狂信者のマークをいったん外せると思った。“おれ”がしくじった時の保険のつもりだったが……けっきょく、この街に潜んでいたのは、狂信者どころではない強大な敵だったがな」


 塞がった傷口をさすりながら、少しフラつきながらも、シルヴァさんは立ち上がる。


「超越級悪魔……死神執行部隊の四呪奏、か。あのファントムとか言う声の主が、そこまでの大物やったとはなぁ」


 リュパンツもお札を袖にしまうと、両の拳をゴツンと、突き合わせて。


「――ワイは下着泥棒とは言え、一応、この辺の国々で言うプリーストに近い職業や。悪魔が暴れとるんなら、止めるための協力は惜しまへん。下着泥棒云々はいったん忘れて、もういっぺん共闘と行こうや。

 ――G08(ゴエイ)さんも、それでええか?」

「おいは、いつでも御主人さぁの心に従うでごわす」


 ……どうやら愉快な仲間が増えたようだ。

 俺とブランさんとシルヴァさんも顔を見合わせ、静かにうなずいた。


「……ま、ワイも訳ありでな。おとなしく捕まっとる訳にもいかんのや。これが終わったらトンズラさせてもらうで?」

「訳あり?」


 俺が尋ねると、リュパンツは何かを思い出すように両手を組んだ。


「ワイの国で信奉されとる女神さんが姿をくらましおってな。ワイはその行方を追って、東方からはるばる、この辺りまでやって来たんや」


 へぇー、リュパンツの国の女神様。

 こっちは西洋風だったけど、向こうは和風のお淑やかな感じなのかな。


「……って事は待てよ? リュパンツ……お前、下着泥棒はその女神様とやらを探すために仕方なくやってたりするのか……? なんかこう、女神様のパンツが纏う神聖なオーラを探って……みたいな」

「いやアホちゃう?」

「こいつこの作品の根幹を否定しやがった」


 下着泥棒に女神様のパンツ云々を否定されるいわれはない気がする。


「ワイが下着泥棒をやっとんのはな、まあ簡潔に一言で纏めるならそれが生き甲斐やからや」

「こいつここで倒しておいた方がよくない?」


 キラーンと歯を見せて決めポーズをとるリュパンツにジト目を送っていると。


「……サトル」

「ん?」

「リュパンツ・ザ・サートルは、この辺の国々で活動するにあたって考えたそれっぽい偽名や。ワイの本当の名はサトル。よお覚えとき坊っつぁん」


 ああ……。

 薄々感づいてたけど、サートルって三世(サード)をもじったんじゃなくてサトル(和名)だったんだな。


「俺は黒江幸輝(くろえ ゆきてる)。いつまでも坊っつぁんじゃなく、俺の本名も覚えておいてくれよ」

「へぇ……クロエ……ユキテル……ユキテルか。えらい親近感のある名前や。その黒髪黒目といい、やっぱりあんさんも“東方列島諸国”のどっか出身なんか?」

「なにやら親近感を覚えるでごわす」

「…………」


 まずいな。この世界の日本人って、トンチキ野郎共の同郷だと思われてしまうのか。

 ただでさえ俺はアホだと思われてんのに、態度を改めなければトンチキ民族の仲間入りをしてしまうかもしれない……!


「どうしたクロエくん。傍から見ればどう考えてもクロエくんはこれまでの言動から純度100%の疑いようもない“東方列島諸国”人になってしまうが、何か思うところでもあるのか?」

「いや。当たり前のように手遅れだったなって」


 ……とにかく、これで戦力が揃ってきた


 ブランさん一人だと消耗を避ける為にテイム状態のオンオフを切り替える必要があったが、頭数が増えれば、ファントム戦用にテイム状態を温存したまま、他の悪魔の相手は任せられる。


「……でもまあ、これで俺の見せ場は終わりかな。シルヴァのおっちゃんも回復したし、後は足手まといにならない範囲でパンツを振り回しとくよ」

「――そうでもないさ、クロエくん。“力”だけでは人の心は救えない。……だから」


 ブランさんは俺の胸に、拳をトンと押し当てる。


「私に出来ない事を、君に託す。君が、シルヴァ殿と共に、ユノリアの心を救うんだ。……あと変態行為はほどほどにな」

「……ああ」


 変態行為はほどほどに。ブランさんとの約束だ。






「くらえ! おパンツ・ナックル!!」

「ぎゃあああああああ!?」

「……うーむ。そんな気はしてた」


 地上に出た俺達は、早速街中で暴れていた悪魔の一団と相対する。


 街はパニックとなっており、逃げ惑う人々を、大量の悪魔たちが魔法で拘束し、広場へ連れ去ろうとしていた。


 ファントムの言う“ゲーム”とやらの為か。

 悪魔憑きを利用して、後で親しい者同士殺し合わせるって話だったが……。


「……もちろん、そんな事は“おれ”たちがさせねぇ――」


 シルヴァさんが魔銃とナイフを構え――、


「パンツと女の子とついでにその他もワイが守ったるでぇ!」


 リュパンツがお札を宙に放り――、


「――チェストにごわす」


 G08(ゴエイ)さんが拳を唸らせて――!


「行くでパンツ」


 俺がブランさんに怒られる。


「……はあ。――壁役は私が務めよう。行くぞ!」


 温存の為にテイム状態を解いてあるブランさんは、大地を大きく蹴り上げ、それが開戦の狼煙となった!



「【投擲】――そして『反射行(リフレクトショット)』――!!」

「式神召喚――【異次元の射手】!!」

「【宵・発勁】にごわす」


 三者三様の攻撃で悪魔たちを蹴散らし、俺達は次々と街の人達を解放してゆく。

 俺も微力ながら、おパンツ・ナックルで戦うぜ!


 中には多勢に無勢で苦戦を強いられていた冒険者や衛兵もおり、順調に頭数を増やしながら、粉塵巻き起こる城郭都市を攻略する!


「広場まで来たぞ! ここを解放すればあと一息だ!」


 気づけば大軍となっていた俺達は、広場で陣取っている悪魔たちとかち合った。


「「「うおおおおおおおお!!」」」


 広場に捕まっている街の人々を救うため、激しい乱戦が繰り広げられる。

 先陣を切るのは勿論。俺、ブランさん、シルヴァさん、リュパンツ、G08(ゴエイ)さんといった、ゆかいな仲間達。


 ブランさんはここにはいないファントムとの戦いに備え、テイム状態はまだ温存したままだ。

 今は壁役として悪魔たちの攻撃を捌いてくれている。


「おパンツ・エール!」


 そして俺はやる事がないので、後ろでパンツを振り回して応援していた。


「ぐ……! 先頭のこいつら、パンツを振り回してる小僧以外強いぞ!」

「ああ……パンツを振り回してる空気読めないガキ以外は危険だな……」

「パンツを振り回してるアホそうな小童以外をはやくなんとかしなければ……!」


 おいおい、俺からマークを外して良いのかよ?

 俺は何をやらかすか分からない男だぜ!


「……今だっ! スマホに録音しておいた『聖唄』を喰らえぇぇぇぇっ!!」

「「「ぐわぁぁぁぁぁ!?」」」


 大音量でクリスティアお嬢様の聖なる歌声を広場に流し、怯んだ悪魔たちを味方の一斉攻撃で蹴散らした。

 俺のおふざけには大抵理由があるんだよ!


「……クロエくん。それ、私もダメージを受けるんだが」


 落ち着いた後、ブランさんがジト目でこっちを見てくる。

 それに関してはすんません。


「……だが、その不思議な板は随分と役に立っているようだな。もう女神メィチス様の『神装』より、そちらを主に戦った方が良くないか?」

「まあそうしたいのは山々なんだけど……」


 そろそろスマホの充電ヤバいから、こいつで無双できるのはこの第二章が最後かもしれないんだよな。


 しかし今回はスマホを使って無双する事で、強烈な印象を植え付け、俺の蔑称をイキリパンツからイキリスマホへと格上げしてやるぜ!


 その証拠に、俺の活躍に対して周囲の冒険者たちが賛辞を――、


「よくやったぞイキリパンツ太郎!」

「さすがだぜイキリパンツ太郎!」

「あんたはやるやつだと思ってたわよイキリパンツ太郎!」


 ……既に手遅れかもしれない。


 まあいい。

 次はブランさんの活躍でイキリ魔物使い太郎の座を狙ってやるからな!!


「おお! シルヴァ! 無事であったか!」

「シルヴァさま! それに皆様も! 助けてくださり、誠にありがとうございます……!」


 魔法で囚われていた人達を解放すると、領主様とクリスティアお嬢様がこちらに駆け寄ってきた。

 ……やべ。

 本人の前で録音した歌声流しちゃった。なんかすんません。


「領主様。この広場にスカーレット……シスター・ユノリアは囚われていませんでしたかね?」


 シルヴァさんが尋ねると、領主様は静かに首を振る。


「……すまんな。ワシらも突然の事で、事態を掴めておらんのだ。だが確実に言えることは一つある」


 そのまま教会の方へ眼を向けると、


「……教祭父のエリク――“灰塵(かいじん)”のファントムは、呪いの血族であるお主の娘を、魔王軍の為に利用しようとしておる。ワシらがこうして広場へ集められておる間も、教会でその為の準備をしておるらしい」

「――要するに、“おれ”の娘も、ファントムのクソ野郎も。あの教会に居るって事だな?」


 シルヴァさんは静かに息を吐くと、俺とブランさんに改めて向き直る。


「――父親としても、冒険者としても、おれはあの教会に巣食う巨悪と戦わなきゃならねぇらしい。……悪いが、協力してくれるか?」

「いまさら断る訳ねぇだろ! 俺たちはおんぶした仲だぜ」

「ファントムの相手は私に任せろ。私もクロエくんに頭だけ抱えてもらったことがあってな。……ある意味仲間だ」

「……ふ。……ありがとう」


 俺とブランさんとシルヴァさんは、教会に乗り込んでファントムと戦う事が決まった。

 後は――。


「広場を解放したとは言え、この街はごっつ広いんや。助けた人らを匿わんといかんし、他に悪魔に憑かれたもんも解放せなあかん。悪いけど、ワイとG08(ゴエイ)さんはボス戦には参加できへんで。堪忍な」

「その代わり、街の人々はおいたちに任せるでごわす」

「ああ。そっちは頼んだぜ」


 リュパンツとG08(ゴエイ)さんは別行動か。確かに強い奴は分散させとかないと、どっちも危険な事には変わりない。


「教会には孤児院の子供たちがおります。あの子たちを保護するため、我々も同行させてください!」

「――よし。ではついて来てくれ」


 頼もしくどすこいポーズをとる可憐な和装メイドさん達と別れ、俺とブランさんとシルヴァさんは、数人の衛兵とプリーストを引き連れて教会へと向かう。


「幸いまだ犠牲者は出ていない。こいつら、悪魔憑きを利用して、近しい者同士で殺し合いをさせようとしているらしいからな。恐らく子供たちもまだ――」


 ……無事だと思いたいが、シルヴァさんの話ではファントムは気になる事を言っていた。


 ――教会の子供たちをユノリアに殺させて、何人目で心が壊れるか予想して楽しむ……。


 もしそれが広場のゲームとは別に、もう始まっていたとしたら――。


「……くそっ。手遅れになる前に急ぐしかねぇ!」


 そうして教会へ続く道を猛ダッシュで突き進んでいると――。


「みて! みんな! たすけがきたんだよ!」


 建物の影に子供たちを発見!

 教会から逃げ出せていたのか。

 でも悪魔に囲まれてピンチみたいだな!


 泣きじゃくる小さな子らを年長の子供が励まし、悪魔に囲まれても尚、気丈に振舞う小さくとも大きな勇気の持ち主たち!


「いま助けてやる! ――おパンツ・ナックル!!」


 ブランさんが強引にこじ開けた道を突っ走り、俺は女神様の『神装』を纏った拳で、子供を襲おうとする悪魔の一体へ殴りかかった!


 ――直後にクロスカウンターを食らって情けなく吹っ飛ばされたけど、足にしがみついて顔面スライディングされながらも足止めくらいはぶべべべべ。


「――『銀光魔弾(シルヴァ・ヴァレット)』!!」


 ……シルヴァさんが最後の悪魔を仕留めて、子供たちは全員保護された。

 同行してきたシスターが子供たちを抱きしめ、人数を確認した後、安堵する。


「あ! しすたーゆのりあといっしょにいた、おにいちゃん!」

「そういうお前は俺をあほ呼ばわりしたあの時のクソガキか。……偉かったな。小さい子たちを守って、俺なんかより立派な勇者だ」


 ……いやほんと、颯爽と助けに入ったはずなのに、気づけば顔面ボロボロで情けねぇ。


 我ながらクサイ台詞とのダブルパンチで、照れ隠しにその頭をぐりぐりと撫でてやると、その子は恥ずかしそうに頬を赤らめて俺から視線を逸らした。

 ……そう言えばこの子、性別どっちだ?

 女の子だとしたら、男に頭を撫でられるのは嫌だったかもしれない。


「にしても広場は既に占拠されてたってのに、よく無事だったな」

「えっとね、教会に保管されてたこの剣がばーって光って、ぎゅーんってわたしたちを守るようにとんできたんだ」


 そういって見せてくれたのは――。


「呪剣アダマス!? どうしてここに!」


 ブランさんがそれを見て駆け寄ってきた。

 刀身を包んでいた神聖そうな衣が緩み、錆びついた大剣が鈍い光をたたえながらそこにあった。


「悪魔たちがね。この剣におびえて、わたしたち、ここまでにげてこれたの」

「――そうか。呪いを帯びても尚、人々を守りたいという思いに反応してくれるのだな……」


 ブランさんは感慨深そうに呟くと、子供たちから錆びついた大剣を受け取った。

 ……これで、ブランさんもフルパワーを発揮できそうだ。


「……それでは我々は子供たちを連れて避難します。我々もお供出来ればよかったのですが……」

「これから先は、元S級でさえ命の保証がねぇ場所だ。こっちはおれたちに任せて、お前らはお前らにしかできねぇ事を頼む」

「……はい。お三方、どうかご無事で――」


「あ! まっておにいちゃん。これ――」


 そういってさっきの子供から手渡されたのは……。


「……これ。誰かのペンダントか?」

「しすたーゆのりあがね。きおくがなくても、だいじにしてたものなの。おねがい。とどけてあげて……」

「ああ。それくらいなら俺にもできそうだ」


 ……俺も、俺にしかできない事をやろう。

 たとえ今はまだ、ブランさんのような“力”がなくたって――。


「――必ず届ける。俺のちっぽけな“勇気”にかけて」


 ――彼等と別れ、大所帯だった俺たちは、気づけば元の三人だけになってしまった。


「……けど。不思議と心細さはないんだよな」


 俺はペンダントをポケットにしまった後。

 女神様のパンツを巻き付けた拳を手のひらへ打ちつけ、気合を入れる。


「――そうだね。たとえ行動を別にしても、掲げた決意は確かに心で繋がっている」


 シルヴァさんも魔銃に魔力を込め直し、最後の戦いに備える。


「クロエくん。決戦の前に、ひとついいだろうか」


 ブランさんは呪剣アダマスを手に馴染ませながら、いつになく真剣な眼差しで俺を見つめてきた。


「……恐らく、これからの戦いは激しいものになる。私も全力を尽くすが、必ず君を守り通せる保証はない。だが、短期間ながらも、君は既に鍛錬をつんでいる」

「鍛錬つったって、ほとんどブランさんから逃げてばっかだった気が……」

「ああ。それで良かったんだ」

「……?」


 ブランさんは俺の隣へ並び立つと、


「いいか、クロエくん。たとえどんな事があろうと、私は必ず君のそばへ駆けつける。だから君も、最後まで勇気を失うな。……努力は、決して肉体を裏切らない」


 そのまま柔らかく笑むと、俺に頼もしい背中を見せて、前に立った。


「……この戦い。共に勝つぞ!」

「おう!」


 教会へ乗り込む。


 ――ファントムとの決戦が始まる……!

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